2025年大阪・関西万博の休憩施設の一つである。土を出力することが可能なWASP社の建設用3Dプリンターを用いて、峡谷のような建築とランドスケープを計画した。身の回りの素材であり、プリミティブな素材である土を用いている。重く、弱く、現代の素材とはかけ離れて扱いづらい素材であるが、大地に還すことができる素材を用いて、新たな建築材料として利用する。それを通して、各地域の土地からとれる土を使った、現代の人間の巣のような未来の建築像と社会を提示したいと考えた。
ここで3Dプリントされた形状は、自然界に存在する有機的な曲線をベースとしており、日本全国で採取した石を3Dスキャンしてサンプリングした形状データを複数融合して作られている。さらに土が自立するための構造的な合理性を実験により算出し、オーバーハングの制約条件に基づき形態最適化を行い、最終的な形状を決定した。2025年の日本国際博覧会は、世界の最先端の技術や未来社会を提起する場であると同時に、大規模な実験のプラットフォームとしての意味合いも持つ。本プロジェクトを通して、土などの身のまわりの自然素材とロボティクスの技術によって実現する建築によって、人と自然と機械が共生する未来社会の一端を提示できればと考えている。(文:浜田晶則建築設計事務所)
木造 地上1階/敷地面積:775.24㎡/建築面積:139㎡/延床面積:139㎡
桜の名所である山梨県富士川町の大法師山。敷地はひな壇状の土地であったため、造成を最低限に抑えるために日本建築の懸造を参照した。自然を征服するのではなく、自然と一体となる思想をもった構法としての、建築を支える木組みの土台である。今回はその土台そのものを拡張させて、全体の建築になりえないかと考えた。伝統的な貫構法ではなく現代の金物構法とすることで、より抽象的な立体格子をめざした。
社屋は企業精神を体現するものであるべきである。リサイクル事業を主な事業とする建築主にとって、建築を長く残していくことが重要であると考えた。そのための汎用材の利用、部材の交換性などのシステムを検討していった。自然素材に対する維持管理は必要となるが、手をかけ続けることによって愛着を育てていくことにも繋がるだろう。社寺建築が数百年残されてきたように、この建築も永く生きられることを願う。(文:浜田晶則建築設計事務所)
木造 地上2階/敷地面積:1781.52㎡/建築面積:193.53㎡/延床面積:202.59㎡
写真:長谷川健太
富山との2拠点で活動している浜田さんだが、富山でも常に何かしらプロジェクトがあるという。今進行中なのは、高岡市の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている山町筋にある、清水組(現·清水建設)の田辺淳吉が辰野金吾の作風を受け継いで設計した、県内で唯一現存している鉄骨煉瓦造の元銀行のリノベーションと増築プロジェクトだ。三社でコンソーシアムを作り、その事業計画がコンペで選ばれた。元銀行部分をレストランと宿泊施設に改修し、その裏に6階建てのRC造のホテルを建てる計画で、耐震補強や保存を丁寧に行なっていく。銀行のカウンターがあった吹抜けのスペースをレストランに変えたり、客室は当時の意匠を残しながら、現代性を付与していく。
古い建物を壊さず、どう現代にうまく残しながら活用し、高岡の工芸という文化と融合させられるかをテーマとしている。3DCADで既存の図面や現況から細かくデジタルデータに復元し、丁寧に古いものと新しいものを融合させて、さらに何百年も使われ残されて行くようなものをめざし、2028年の開業に向けて進んでいる。
レンガ造、RC造 地上3階(改修)、地上6階(新築)/敷地面積:1,947㎡/建築面積:622㎡(既存部)+546㎡(増築部)/延床面積:約1,338㎡(既存部)+2,604㎡(増築部)

「新しいヴァナキュラー」へ
かつて建築は、自然の脅威から身を守るためのシェルターでした。しかし近代以降、鉄とコンクリートによるグリッドは環境を管理し、いつしか私たちと自然の間を分断する装置になってしまったように感じます。
しかし今、テクノロジーは私たちを、かつてないほど「自然の解像度」に近づけてくれます。 例えば、足元の不揃いな土をロボットアームで積層したり、森の樹木をスキャンして、その曲がりくねった個性をそのまま活かしたりする。デジタル技術とは、世界を単純化するためではなく、自然が持つ複雑な豊かさやノイズを、「あるがまま」に扱うためにこそあるのだと考えています。
私はこのアプローチを「新しいヴァナキュラー」、あるいは「現代における民藝」と捉えています。 かつて人々がその土地の素材と手仕事で自らの居場所を築いたように、最先端の技術は、建築を再び「個人の手」に取り戻すためのツールになるはずです。
デジタルと自然、身体と環境がもう一度溶け合う場所。 そのような、古くて新しい「人間のための巣」を描いていきたいと考えています。
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