KENCHIKU世界/地域に根ざした建築家

加藤優一(銭湯ぐらし/東北芸術工科大学/最上のくらし舎)|東京都杉並区高円寺・山形県山形市・山形県新庄市|街を「家」と捉える暮らし方(2/2)

文(明記以外):柴田直美 写真・図版(明記以外):©銭湯ぐらし

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小杉湯となり(株式会社 銭湯ぐらし)


東京都高円寺の老舗銭湯「小杉湯」に隣接する銭湯つきシェアスペース。1Fに共有の食堂、2Fに書斎、3Fに個室を備える。湯上がりにくつろいだり、仕事や食事をしたり、もう一つの家のように使うことができる。現在は平日を会員制シェアスペース、休日を誰でも利用できる飲食店として営業中。
また、小杉湯となりを起点に、空き家を再生した拠点を増やしており、「小杉湯」がまちの浴室、「小杉湯となりが「食堂・書斎」、小杉湯となり-はなれが「自習室」、銭湯つきアパートが「寝室」というように、まち全体を家と見立てたまちづくりに展開している。運営メンバー・会員を合わせると、約100人がこのエリアに暮らしており、新しいご近所づきあいが生まれている。(文:加藤優一)

 

 

 

万場町のくらし(一般社団法人 最上のくらし舎)


山形県新庄市にある築100年の古民家を喫茶&間貸し「万場町のくらし」として再生。仕立屋として使われ記憶を継承し、通り土間に沿って飲食・イベントスペース・貸事務所が並ぶ。これまで、利用者主導で「◯◯のくらし」と題したイベントが数多く行われてきた(カレーのくらし・手仕事のくらし・福祉のくらし)。現在、飲食スペースにはクレープ屋、貸事務所にはケアマネジャーが拠点を構えている。
また「万場町のくらし」を起点に商店街と連携したイベントや教育事業を実施しており、隔月開催の「よろず市」では、各店舗による軒先販売や、お店を持っていない方が出店できる軒先間貸しを行っている。(文:加藤優一)

 

 

やまがた空き家プロジェクト(東北芸術工科大学)


2023年より活動をはじめ、1年間で5件の空き家を再生。「空き家勉強会」による所有者と活用希望者のマッチングから、学生の力を活かした企画・設計・DIY、新しいニーズを踏まえた入居者募集・運営支援などを実施。1軒家をシェアハウスとして活用するプロジェクトでは、1年目の家賃をDIY費に充て、2年目の家賃を所有者に支払うことで、物件のバリューアップと運用資金の確保を実現した。その他にも、空きスペースを活用した放課後スクールや古本屋など、所有者のやりたいことを実現するための取り組みを続けている。(文:加藤優一)

 

 

佐賀の廃校再生(Open A)


佐賀の古湯温泉にある廃校を、宿泊施設&オフィスにリノベーション。公共事業では別々に委託されることが多い企画・設計・運営が一括発注されたことで、デザインとマネジメントを包括的に検討することが可能になった。設計に際しては学校の記憶とスケールを残しつつ、既存建築に地域の木材を重ねることで新旧のコントラスを生んでいる。(文:加藤優一)

基本構想・設計・運営:EWM・R project・Open A共同事業体
設計担当:馬場正尊+加藤優一 / Open A + OSTR
VI・サイン担当:UMA / design farm 原田祐馬、津田祐果

 

 

加藤優一(銭湯ぐらし/東北芸術工科大学/最上のくらし舎)

加藤優一(銭湯ぐらし/東北芸術工科大学/最上のくらし舎)

ⒸTakashi Mochizuki

加藤優一さんからのメッセージ

「まちづくり」には様々なアプローチがありますが、私は小さな場づくりを街に広げていく手法で取り組んでいます。そのため、建築と都市をひとつながりのものとして捉え、その実現に向けて、建築の企画・設計・運営というプロセス全体に関わっています。これからの時代においては、空間的・時間的な隔たりをつなぎ合わせていくことが求められるのではないでしょうか。

また、「まちづくり」というと、専門家や行政の領域だと考える人もいますが、街は一人ひとりの「暮らしづくり」の積み重ねによって創られています。例えば、銭湯に通うことも「まちづくり」の一歩かもしれません。お店を選び、お金を支払い、その場所を守ることに貢献する。計画者だけではなく、実践者・生活者として街に関わる人が増えていくことが、これからの街において大切だと考えています。

小杉湯となり https://kosugiyu-tonari.com/
万場町のくらし http://nokurasi.site/
東北芸術工科大学 加藤研究室 https://www.tuad.ac.jp/about/search/teacher/15743/

 

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