最終更新 2014/03/04 12:00
鉄を主成分とする錆びにくい合金鋼、ステンレス。実は1912年に世界で初めて開発された頃から、主流製品の配合や製法がほぼ変わっていないという。ところがその普遍的な製品に取って代わる新しいステンレス鋼を開発し、売りだしている会社があるという。100年もののレシピが変わったと聞いて、我々ぽむ企画は千葉県千葉市にあるJFEスチール株式会社東日本製鉄所にやってきた。
文・絵 ぽむ企画
JFEスチール東日本製鉄所は、首都圏から電車で40分。駅前から製鉄所が目に入るという、都市と密着したロケーションにある製鉄所だ。
総面積は東京ドームのおよそ164倍。約765万平方メートルという規模だ。その内部では所内専用のナンバープレートをつけた、独自仕様の車が闊歩している。製鉄の過程で排出される土ぼこりによるのだろうか。風景全体がうっすらと赤茶色に彩られている。非日常的な光景に、なにやら異国に迷い込んだような気持ちになる。
新しいレシピのステンレス「JFE443CT」はこの製鉄所で誕生し、生産されている。何が画期的なのだろう。最も一般的なステンレス鋼といえば、SUS304と呼ばれる素材だ。JFEスチールが開発し製品化したステンレスJFE443CTはSUS304と同等以上の性能をもちながら、成分の割合や製法が異なる点が特色だという。特に大きく違うのは、クロムの含有量が多く、ニッケルの含有量がゼロなことだ。
ステンレスにとってのクロムとは、鉄を錆びにくくする役目を一身に背負う、必要不可欠な存在だ。なぜクロムが錆を防ぐかというと、クロムが空気中の酸素と結びついてつくる不動態皮膜が、強固なコーティング効果をもつからだ。
クロムの含有率が高いほど耐食性が高くなるので錆びにくい。しかし、クロムが炭素と結びつくとクロム本来の働きが出来なくなるので錆びやすくなってしまう。そこで、「JFE443CT」では、炭素を下げ、炭素がクロムより結び付きやすいチタンが入っている。これで、外部から炭素が入ってきてもクロムが効果的に働けるようにしている。
次にニッケルに目を向けてみよう。ステンレスには大きく分けてニッケルを使用するオーステナイト系と、使用しないフェライト系がある。オーステナイト系の代表が「SUS304」。ニッケルを使用すると安定性の高い結晶構造になるので、一般的にはオーステナイト系のほうが耐食性が高いとされてきた。フェライト系は「SUS430」という製品が代表的だが、耐食性に劣るため室内専用の材料となっている。「JFE443CT」は技術革新で、フェライト系ステンレスの耐食性を高めた材料だ。
「JFE443CT」を開発した背景には、ニッケルの価格が不安定なことがある。ニッケルは将来的に枯渇するおそれがあるため、高値で取引されている。しかも価格は景気に左右されやすい。そのためSUS304の価格は、ニッケルの原料価格に左右されてきた。特に2008年のリーマン・ショックの際の激しい値上がり以降、ステンレスを使用する人々は不安定な価格に不安をもつようになった。
一方でニッケルを使用しないJFE443CTは価格も安定、期待が高まっている。
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