KENCHIKU世界/地域に根ざした建築家

菅原大輔/SUGAWARADAISUKE建築事務所/東京都調布市
地域拠点、そしてマイクロ・パブリック・ネットワークへ(2/2)

文・写真(明記以外):北澤 愛

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山中湖村平野交差点バス待合所・観光案内所

[ 山梨県山中湖村、2018年 ] http://sugawaradaisuke.com/works/3442/

山中湖湖畔に地域拠点を点在させ、その拠点間をつないで湖畔を盛り上げる産官学連携プロジェクト。
基礎の立ち上がりと柱と横架材による木造三角グリッドは、南北通路の導線、バスを降りると見える富士山、湖畔からのケヤキの眺望という風景に導き出されている。バス待合所・観光案内所が主な機能だが、地域の方々が使う会議室やお弁当が食べられる場所、団体の荷物置場等の機能を持つ。また、平野地区が春夏秋のスポーツ合宿のメッカであることから、合宿が多い時期と雪が積もる雪の間に利用者数の大きな差が生まれる。そんな季節ごとに代わる利用人数に対して、伸び縮みする施設運営のあり方を空間的に提案している。
この三角グリッドは、リノベーションの拠り所でもあり、交通拠点の役目を終えた場合、グリッドに取り付いたカウンターや壁を改編することで、公民館や博物館等として再使用できるようにしている。この建物が建ってから、周囲に同じ外壁色を使ってくれる建物が現れた。そんな積み重ねでできた平野の風景は、小さな建築が風景全体に影響を与えた例でもある。

木造 地上1階/敷地面積:1,090.15㎡/建築面積:126.27㎡/延床面積:105.83㎡
写真:エビハラカズミ/GlassEye Inc.

 

下タ町醸し室 HIKOBE

[ 秋田県五城目町、2018年 ] http://sugawaradaisuke.com/works/architecture/3075/

秋田県の蔵元の有志会「ネクスト5」の一つで、300年以上の歴史を持つ福禄寿酒造が運営する地域拠点。福禄寿で醸造された酒の試飲が主な目的だが、地域に人々にとってはカルチャーセンター、地域外の人にとっては観光拠点のような、場所を作った。山中湖と同じくマイクロ・パブリック・ネットワークの考え方で、ここを中心に、観光地を含むいくつかの拠点を5km間隔でつなぐと、自転車、バス、徒歩を選択して回遊できるネットワークができる。
裏庭に面する北側の出入口には、開閉するビッグドアが付いていて、ドアを開くと庇下空間がイベントスペースとなり、閉じると冬に断熱効果を発揮する風除室になる。周囲に秋田で一番古い朝市通りがあり、開放されたビックドアによってこの建物が通り土間化すると、駐車場だった場所がイベントの中心となる広場となり、表通り-イベント広場-酒造-朝市とひとつらなりの場所に変換されていく。多様に反応しすぎたデザインは時間の変化に対して長生きできないので、その変化の土台になるような骨格を作った。この街の人が慣れ親しんでいた景色を残しつつ、何か新しくインストールされた雰囲気を出している。

木造 地上2階/建築面積:59.62㎡/延床面積:95.40㎡
写真:Photo Office-K(コンドウ ダイスケ)

 

錦町ブンカイサン

[ 東京都千代田区、2018年 ] http://sugawaradaisuke.com/works/architecture/3124/

元酒屋を改修して、職住近接型の新しいライフスタイルを考える農業型インキュベーションの発信地をつくるプロジェクト。
4、5階が住まい、3階が農業系ビジネスのインキュベーションオフィス、2階はその活動などを展示するギャラリー、そして1階が実際に食べることができるレストランで構成される。都市の再開発が起こる場所で、次世代の新しい都市の生活の仕方を提案できないかというのがこの建物の目的でもある。
以前ここにあった酒屋と、新しく入る飲食店のイメージをつなぎ合わせるインテリアの要素として、食=冷蔵庫=業務用冷蔵庫の銀色の世界に入っていくイメージで銀色塗装を使用した。また、酒屋の記憶であるダムウェーターを残したり、住居の記憶であるバスルームを半分解体してミーティングルームに変換したりしている。古いものを新しいものに完全に置き換えていくのではなく、解体作業を途中で止め、新しいものを追加し、あるいはそれを混ぜ合わせる操作で、リノベーションをした。それは、新しいライフスタイルやビジネスを考えるにふさわしい。空間だと考える。

鉄筋コンクリート造 地上5階/建築面積:57.96㎡/延床面積:258.06㎡
写真:太田拓実