KENCHIKU世界/地域に根ざした建築家

神本豊秋/再生建築研究所|東京都渋谷区|建築を再生し、変わり続ける場所をつくる。(2/2)

文・写真(明記以外):柴田直美

プロフィール バックナンバー

ミナガワビレッジ

[ 東京都渋谷区、2018年 ] http://www.saiseikenchiku.co.jp/works/405/

約60年前に建て始められ、検査済証(建築基準法で定められた「建築確認、中間検査、完了検査」の3つがすべて完了し、その建物が法律の基準に適合していることが認められたときに交付される書類)がないまま、増改築が繰り返された4棟の建物群を再生させた。
事業コンペでは、新築ではつくり出せない、新しいコミュニティ生み出す建築とその仕組みを実現するために、法適合させ、検査済証の取得を提案し、採択された。
図面が存在しなかったため、実測調査などをしながら、違法、既存不適格を是正しつつ、オーナーの思い出やこの場所で生まれていたコミュニティの歴史を引き継ぐような運営も同時に提案。竣工後もこの先の生まれうる多様な関係を受け止めるためのプラットフォームとして完成。各戸の内装も入居者に任せ、更新されていく。

木造地上2階建/敷地面積:454.06㎡/延床面積:421.79㎡

 

神南一丁目ビル(仮称)

[ 東京渋谷区、2019年 ]

本計画は、都内にある地下1階地上4階建ての飲食店ビルを事務所・店舗として再生するプロジェクトである。既存建物は、以前は飲食テナントビルであったこともあり、開口部は法規上の代替進入口などの最小限の開口部しかない非常に閉鎖的なビルであった。
このビルを事務所にコンバージョンするに当たり、事務所環境としての最低限である採光環境の向上を目的として事務所ビルで普遍的な部位である「水平連窓」の窓を設けた。新設サッシをインセットさせることで斫った開口端部を意匠としてそのまま残し、コストを抑えながら特徴的なファサードを実現している。また、通常の新築の事務所ビルでは、合理的な一定のプロポーションによって水平連窓が積層されることが一般的であるが、本計画では既存の開口部のコンポジションやプロポーションを頼りに開口部の位置、高さが設定されている。そうすることで、冗長性のある不思議な外観を獲得することができる。
また、本建物は耐震補強を行っているが、大きく外壁を解体することで建物重量を減らし、耐震性能にも寄与している。既存建物の特徴を活かした再生ならではの「減算的な手法」により意匠性と機能要求を満たした計画となっている。

鉄筋コンクリート造 地上4階地下1階/延床面積:1,648.41㎡

 

100BANCH

[ 東京都渋谷区、2017年 ] http://www.saiseikenchiku.co.jp/works/203/

事務所・倉庫として使われていた鉄骨造3階建てのビルを事務所+飲食店として再生したプロジェクトである。
過去に耐震診断、補強計画がされていたが、居室内に大きなブレースが入り、空間が使いづらかった。そこで、再生建築研究所にて耐震診断から見直し、構造・法規・意匠を跨いだ設計を行った。当初は3ヶ所だった補強を11ヶ所に分散させ、1ヶ所あたりの補強を通り抜けできる軽微なものとすることで、補強箇所は増えるものの空間全体の価値が高まる計画とした。梁の補強は防煙壁としての機能も兼ねており、天井を張ったり、ガラス製のいわゆる「防煙垂壁」を設けることなく、倉庫らしさを保ったまま排煙の規定を満たしている。
本計画ではA工事の設計監理を行ったが、テナントであるロフトワーク、カフェカンパニー、テナントの設計者であるスキーマ建築計画との橋渡しも行い、より良い空間として使っていただけるよう部分的にA工事の内容も調整した。現在、この場所は、パナソニックの創業100年プロジェクトである100BANCHとして、若手を中心に日々さまざまな実験やイベントが開催されている。

鉄骨造 地上3階建/敷地面積:446㎡/建築面積:352㎡/延床面積:1,058㎡