KENCHIKU世界/地域に根ざした建築家

山雄和真+ワイル・アル・アワー+寺本健一/waiwai 世界で建築を建てる(2/2)

文:柴田直美 写真・図版(明記以外):waiwai

プロフィール バックナンバー

 

ジャミール・アート・センターとジャダフ・ウォーターフロント・スカルプチャー・パーク

[ UAE、ドバイ、2018年 ]

10のギャラリー・スペース、オープン・ライブラリー、アーティスト・スタジオ、レストラン、ショップ、イベント・スペースなどを含む10,000㎡のアート・センター。設計競技で勝ったロンドンの設計事務所が提案していた案では、外壁の素材もトラバーチンで権威的であったし、アーチ状のモチーフを多用する装飾的なデザインだった。クライアントが設計途中で「このまま進めていいものか」と疑問を持ち、ibda design(ワイルさんと寺本さんがドバイで開いていた設計事務所)に相談。美術館然としている建物ではなく、「中東にアート・センターをつくりたい。さまざまな企画展やワークショップを催すと同時に教育や研究活動のハブとしての機能も持たせたい。」というクライアントの意思を、開放的な建築として示すべきと話したところ、それに同意したクライアントが設計変更を加えていった。結果として、コンサルタント・アーキテクトとして参画することとなり、工事監理を引き受け、ディテールのコントロールも行った。

隣接するジャダフ・ウォーターフロント・スカルプチャー・パークでは、屋外アート作品の展示と共に、200席の野外劇場、イベント・スペースなどを含むアート・パークをアート・センターの竣工にあわせて4ヶ月で完成させた。アート・センターの建物が四角いので、スカルプチャー・パークでは水面の波紋をモチーフにしたデザインとして、1.6mの高低差をスムースにつないだ。そこで行われるアクティビティを中心に設計している。

アート・センターとスカルプチャー・パークを運営しているアート・ジャミールというサウジアラビアのアート・ファウンデーションは、中東にコンテンポラリーなアート・シーンをつくろうとしている財団で、サウジアラビアのジェッタでも延床面積16,000㎡のアート・センターを建設中(2019年秋竣工予定/2020年春オープン予定)で、こちらのアート・センターの設計もwaiwaiが担当。 https://www.waiwaiarchitects.com/#/hayy-creative-hub/ Hayy: Creative Hubという名前で、アート・ギャラリーやシネマやテレビ会社の制作部門、アーティストのスタジオが入るサウジアラビアでは初となる複合用途をもつアート・センターになり、さまざまな芸術・研究活動のためのコミュニティ・ハブとしての機能が期待されている。

ジャミール・アート・センター | RC造地上4階地下1階建/敷地面積:3,700㎡/延床面積:10,000㎡
ジャダフ・ウオーターフロント・スカルプチャー・パーク | 敷地面積:5,200㎡

 

ジュメイラのビーチ・ヴィラ

[ UAE、ドバイ、2019年 ] https://www.waiwaiarchitects.com/#/bvj/

ドバイのスカイラインを背負った6,600㎡のビーチの敷地に、そこに建つ延床面積2,000㎡のヴィラ。壮大な敷地は3つの敷地を入手し、ひとつにまとめた敷地で100m幅のプライベート・ビーチをもつ。建築をwaiwaiが担当し、インテリアは東京のスーパーポテト、ランドスケープはシンガポールのサラダドレッシングが担当した。

主寝室に加えて3つの寝室があり、基本的にはゲストをもてなす空間として考えられている。ハウスではなくヴィラとしての非日常さを担保し、ゲストを迎えるためのプログラムが組み込まれ、機能としては大使館に近い。地上階は季節の良い時期に窓を開け放った状態で内部と外部をつなぐように設計され、家の中からビーチまでつながる水流もある。クライアントが日本のエッセンスが入ったデザインを希望していたことから、イサム・ノグチが好んで作品に使った庵治石を唯一扱える和泉屋石材店から納めてもらった巨石をヴィラの中心に配置している。屋上庭園は、京都の庭師が作庭した。

RC造地下1階地上3階建/敷地面積:6,600㎡/延床面積:2,000㎡

 

特別養護老人ホーム桜木園

[ 青森県むつ市、2019年11月末竣工予定 ] https://www.waiwaiarchitects.com/#/sakura-special-elderly-nursing-home/

下北半島のむつ市に40年ほど前に建てられた桜木園という名の多床型老人ホームの建替計画。社会福祉法人がクライアントで、その理事長と旧知の仲の写真家の方からの紹介でGINGRICH(山雄さんが東京で開いていた設計事務所)が設計を担当することになった。九州で福祉施設をたくさん手がけている白川直行さんとの共同設計で進められている。延床面積6000㎡弱にベッドが80床。設計を始めるにあたり、ユニット型特別養護老人ホームならではの課題として、入居者のより良い暮らしのために、まず職員にとってより良い環境をつくることを考えた。一般的に1ユニットにいる入居者10人をひとりの職員が見ているが、夜間は2ユニットにいる入居者20人をひとりの職員が見ている。とても大変なその仕事の効率をいかに良くするか、と考え、2つのユニットの付け根に職員の拠点を置いた。さらに別のユニットを手助けすることも考えると、その拠点はもうひとつの拠点の近くにあったほうがいい。

また特別養護老人ホームでは肢体不自由な人の特別浴室までの移動が最も労力がかかる介護のひとつであり、そのための最短動線を確保するために特別浴室もひとつのユニットとして同フロアでつなぐことで、5角形が導き出された。もともとの施設名が桜木園なので、桜の形を提案したが、美的な観点から桜の形を提案したのではなく、アクティビティから検討した結果、シンボリックな形になった。設計は2年かかったが、職員の方々との人間関係が築くことができているので、必要な期間だったと振り返る。高齢化していくエリアで市役所の前につくっているこの施設が、この町のシンボルになってくれるのではないか、と期待している。

S造地上2階建/敷地面積:15,000㎡/建築面積:3,820㎡/延床面積:5,770㎡

 

チコル

[ 千葉県柏市、2018年 ] https://www.waiwaiarchitects.com/#/cicol/

東京大学や千葉大学のキャンパスなどの研究・教育施設が多くあり、公・民・学が連携した柏の葉国際キャンパスタウン構想が進められ、子育て世代が多い柏の葉エリア。そこに建つタワーマンションの低層部に入る子育て支援施設。3階のフロア構成としては、入居者優先の保育園と民間学童保育、屋内プレイ・パークおよびワーク・スペース(屋内でボール・プールなどがある遊べる場所およびその上層階にあり、子どもが遊んでいる様子を見守りながら仕事ができる場所)、キッチン付きスタジオ、貸スタジオ、子どもたちの食事提供や一般販売も行うお総菜屋などが入る。山雄さんの同級生である成瀬・猪熊建築設計事務所との共同設計で、こどもたちがフロア全体を使って遊べる、公園のようなスペースが実現した。

「柱巻き」と呼んでいる、柱の周りに家具のようなものをつくることで、全体を統一。公園にある木に人が集まるようなイメージで、木陰の役割はソファや絵本の棚や収納スペースが担う。エレベータ・コアを取り巻く、キャンパスとして絵を描いて遊べる壁など、全体のグラフィックデザインはTAKAIYAMAの山野英之さんが手がけた。

SRC造地上37階建のうち3、4階部分/延床面積:900㎡

 

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