KENCHIKU世界/地域に根ざした建築家

あわデザインスタジオ|千葉県館山市・南房総市|諦めさせないデザイン(2/2)

文・写真(明記以外):柴田直美

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あわデザインスタジオのしごと

 

シラハマ校舎

南房総市立旧長尾小学校・幼稚園再利用計画 [設計監理]

[ 千葉県南房総市, 2015–2016 ]

あわデザインスタジオ ウェブサイト

館山駅からさらにバスで30分のところにあるシラハマ校舎は、房総半島の最南端に位置し、年間を通して温暖な気候と太平洋が広がる眺望をもつエリアにある。都心から白浜町へ移住し、シラハマアパートメントというホテルとカフェを併設したシェアハウスを運営していた多田朋和さんが、南房総市による有休公共施設(2011年に廃校になった旧長尾幼稚園・長尾小学校)の利用案募集に応募したことが、シラハマ校舎の発端である。多田さんが事業者となり、1952年に設立された木造1階建て校舎(延床面積:1180.7㎡)をシェアオフィスやカフェ、レストラン、簡易宿泊所などに加え、校庭を「無印良品の小屋」を活用したクラインガルテンへと再生する案が採択され、2016年にプロジェクトは始まった。農文化を中心に人、資本、風景・空間を再編することを目指しているシラハマ校舎のプロジェクトに建築家として参加したあわデザインスタジオは、校庭にはクラインガルデンを持つ小屋を配置し、校舎は元からあったインフラを転用しながら、コストを抑えた改修を実現した。各所に残る学校の名残は、もともとコミュニティの中心であった学校が持つ場の力を増幅させているようである。

「廃校を利用しまちに対するインパクトを持つプロジェクトは多々ある。その多くの場合、多額の改修費を投じているが、南房総の南端にあるこの建物のプロジェクトはそれほどの投資額を調達することはできなかった。しかしここで諦めると、廃校利用のプロジェクトは交付金や補助金の審査を通ったプロジェクトしか成立せず、コミュニティの拠点であった学校の死にゆく姿を住民みんなで見ることしかできない状況が続く。」と岸田さんは危惧したという。

工事費は少額であっても、諦めないデザインをキーワードに、事業者にヒアリングし、可能な箇所は施主施工としたり、既製品よりも安く製作できるディティールを工務店と開発したりしながら、工事予算に収める努力を尽くしたという。その結果、工事予算に収まる設計が完成した。その後、事業者自身の努力はもちろんさまざまな人たちのサポートを得ながら、改修工事を無事に終えることができた。

大学やまちづくり系出版社、地域の住民や企業、塾などのテナント、さらにはカフェやレストラン、コワーキングスペース、簡易宿泊所などが完成し、この建築がさまざまな人的ネットワークを生み出し、南房総のあらたな動きの拠点となっている。

シラハマ校舎 ウェブサイト

  • 黒板や腰板などがそのまま
  • 廊下も学校当時そのままに近い状態
  • 給食が運びこまれていた部屋
  • 家庭科室で使っていた調理テーブル

 

カッチュウビル

[ 千葉県館山市, 2011 ]

代表 岸田の千葉大学大学院 工学研究科 修士課程在籍時の担当作品

駅前商店街の主要交差点に建つカッチュウビルは、元々は酒屋などが複数の商店が入る施設であったが、現在は商店街組合の会議室や催事場として利用されている300㎡ほどの鉄骨造の建物。

館山市がこの建物の改修のために獲得した少額の補助金でできる限りの耐震改修と意匠の改修が行われた。

  • カッチュウビル
  • カッチュウビル
  • 素カッチュウビル

[ 写真提供:あわデザインスタジオ ]

 

TRAYCLE Market & Coffee

[ 千葉県館山市, 2016 ]

TRAYCLE Market & Coffee ウェブサイト|カフェ/雑貨/ギャラリー

国登録文化財になっている館山築港のすぐそばに立つ木造の擬洋風建築。フェアトレードのコーヒーや雑貨などとオーガニック・マフィンを販売する文化財カフェ。意匠的な変更は最低限とし、長年付け足されて来た様々な要素が整理されている。

TRAYCLE Market & Coffee ウェブサイト

  • 文化財カフェ
  • 文化財カフェ
  • 文化財カフェ

[ 写真提供:あわデザインスタジオ ]

 

ミナトバラックス

古い官舎を競売で入手した東京に住む事業者が団地のような濃密なコミュニティをもつ集合住宅にしたいということで、あわデザインスタジオは「未来のリノベーションのためのリノベーション」というコンセプトのもと、入居者のリノベーションを促進するようなデザイン、または入居者のリノベーション行為を阻害しないデザインを施すことにし、最小限の建築的な介入を行った。

ミナトバラックス ウェブサイト

 

あわ焼

[ 千葉県館山市, 2016 ]

館山に移住した陶芸家の西山光太さんと組んで、南房総の土を使った焼き物である「あわ焼」を開発している。南房総の土の特徴や適した焼き方の研究は西山さんがメインで行い、全体のプロデュースを西山さんと岸田さんが共同で行なっている。あわ焼に使用する材料の土は、可能なかぎり建物をたてたり、道をつくったりする際に発生する土を使用することを基本として、あわ焼をつくることが里山を維持する人間の行為の中に含まれるようにし、自然環境に対する負担をなるべく少なくしているそうだ。南房総の風景や地形をつくる土が、職人さんにより新たな価値を与えられ、食と人を繋ぐ道具になり、ひいては地域と人を結び直す存在になることを目指している。

  • あわ焼

[ 写真提供:あわデザインスタジオ ]