[千葉県我孫子市、2026年]
我孫子市の住宅街にある敷地は、周囲に小学校を囲むように住宅が建ち田畑が点在する。診療所だった平屋を医師である建主が引き継ぎ、外装はそのままにエントランスと内部をフルスケルトン化して改修する、小児科診療所と院長の別宅を兼ねる計画。感染症対策として、感染者と非感染者とで入口・受付・診察室を分離し、スタッフはバックヤードから双方のエリアへアクセス可能であることが求められた。ふたつの患者エリア、バックヤード、その一角の院長室の4つのエリアで構成される。
同じ要素や場所を平面方向にふたつ配置すること、異なる質の場所を混在させることによって、場所や要素が単独で存在するだけでは得られない空間の質が浮かび上がる可能性を感じている。ばらばらなものが同時に存在し、時に関係付けられて知覚されることを、空間はそれ自体が媒介となって表している。選ばれる扉と選ばれない扉、上下移動によって変わるキャラクター、向こう側から聞こえる泣き声や静けさ。これらを結び、また隔てるものとして屋根を支える鉄骨架構を顕にし、いくつも現れる同じ扉やひとつしかない象徴的な階段をきっかけとして、異なる事物や同質な要素がただ同時にあるという空間の特性と豊かさを現したいと考えている。(文:Office Yuasa+湯浅良介)
鉄骨造 地上1階+ロフト/敷地面積:464㎡/建築面積:214㎡/延床面積:185㎡
[東京都港区、2026年]
11組の風船と椅子を、お台場のプロムナードに点在させます。空や海が飛行機や船によってその大きさを感じられるように、小さな風船と椅子は、都市のスケールを感じるための目印となります。点在する椅子は、誰かと過ごしたり、景色を眺めたりする場所となり、風船は空を見上げるきっかけとなります。風船と浮き上がる椅子が、大きな都市の景色と、小さな振る舞いの景色を重ね合わせ、この場所の風景をつくっていきます。(ARTE TOKYO HPより転記)
建築コレクティブのGROUPと共に個人名で参加。11組の風船とオリジナルデザインの椅子が、お台場の大きな景色を滞在と遊びの舞台へと変えていく展示作品。「歩道に椅子を置いたらどんなことが起きるのか。例えば演劇なら箱は椅子にも、テーブルにも、丘にもなったりします。演劇の中で椅子はいろいろな見立てに使われますが、椅子と風船を歩道の上に並べることによって、都市がある演劇的なセットに見えることを考えています。実際に椅子をお台場に持っていって実験をしてみたら、子どもが急に座ったり、遊び出したりと楽しい光景が生まれました。会期中には演劇を学ぶ高校生や大学生たちと都市サーベイを通じたパフォーマンス表現を行うことも計画しています。」
【期間】2026年11月7日(土)~12月31日(木)
【場所】ウエストプロムナード(シンボルプロムナード公園内)
https://artetokyo.jp/ja/programs/balloons_and_chairs/
[東京都中央区、2027年春予定]
かつて大名たちの屋敷が軒を連ね、のちに花柳の灯がともったこの街、東京・日本橋浜町で進行中のホテルプロジェクト。日本橋浜町が長年育んできた歴史と暮らしの文脈を受け継ぎながら、新しい滞在のかたちを提案する。宿泊にとどまらず、飲食・物販・地域との連携を通じて、まちにひらかれた拠点づくりを目指している。2027年春開業予定。(株式会社水星プレスリリースより抜粋)
隣接する既存ビル2棟を用途変更の上一体的に改修し、1つのスモールラグジュアリーホテルとして再生する。湯浅さんはインテリアおよびファサードデザインを手掛けている。
「明確なコンセプトを打ち出さず、プロジェクトにかかわる人たちみんなで話し合いながらイメージを共有し作り出す進め方をしています。その分時間もかかるし言語化できないわかりづらさもありますが、一言では言い表せない空間の現れ方を目指すことで、既存の街との折り合いの付け方や、すぐには消費されない場の質のようなものが獲得できるとよいなと思っています。関係者それぞれの視点で意見を出し合いながら少しずつ形になっています。」(文:湯浅良介)
(仮称)日本橋浜町311ホテル改修計画:鉄骨鉄筋コンクリート造 地上7階建 /敷地面積:157.49㎡(予定)/延床面積:815.14㎡ (予定)
(仮称)日本橋浜町312ホテル改修計画:鉄骨鉄筋コンクリート造 地上7階建、地下一階建 /敷地面積:213.36㎡(予定)/延床面積:1,118.78㎡ (予定)
https://hanatokage.com/
「時間をかけて」
日々さまざまな人とやりとりをしながら、建築や家具、作品や展示空間、テキストやワークショップなどが少しずつ形になっては手を離れ、また違う場所、違う人とのやりとりが始まる。そんな淡々とした毎日の中で創作を行っています。
最近、あるプロジェクトで家具制作について学ぶ機会があり、ポール・ケアホルムをはじめとする大好きなデンマークのデザイナーたちが王立アカデミーで受け継いできたリ・デザインの精神に惹かれ、旭川の家具デザイナーと、過去の椅子を参照しながら新しい椅子をつくっています。また、考古学者たちと古代ローマの発掘記録や仮想空間での復元に生成AIをどう活かせるかを検討する議論に参加する機会もありました。
何百年、何千年前の出来事を読み直すことと、今僕たちが何かをつくり、記録することは、それほど遠く離れた営みではないのかもしれません。目の前にあるものを見て、考え、表し、誰かに手渡すことは、人や文化が育ち、成熟していくことに関わる営みとして、長い時間をかけて繰り返されてきました。
そこには、一人では到底たどり着けないヴィジョンや叡智、思想や技術があります。そして今つくられるものもまた、いつか誰かに読み直され、つくり直されていく。その長い時間の中に自分の位置や役割を置いてみること、過去を受け継ぎながら今つくることに、心が躍る自分がいます。
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