大分県別府市にある築46年の酒類卸業倉庫を用途転換し再生した複合型の宿泊施設である。ハジマリアーキテクツが自社ビルとして購入し、耐震補強を経て、企画・設計・運営まで一貫して手がけている。「別府の文化に出会う はじまりの場所」をコンセプトに、かつての建物の記憶や素材を活かしつつ、宿泊機能に加えて設計事務所、カフェ、陶芸工房、焼き菓子工房、地域交流の場も一体となる多層的な“まちの拠点”となるよう空間を構成している。
1階には、二層吹き抜けの「HAJIMARI LOUNGE」と「喫茶ゆあみ」、そしてガラス越しにまちとがつながる陶芸工房+ショップ「うみとじかん」、さらにハジマリアーキテクツのオフィスを配置されている。3・4階の客室は、もともとオーナーの住宅だった空間を活用し、長期滞在に対応するためキッチンや洗濯機、ワークデスクを備え、コンクリートの壁や天井はそのままに、針葉樹合板の風合いを活かした壁を新たな要素として加えて、住みながら作り上げていくアーティストのアトリエのような雰囲気である。さらに、各部屋には別府や大分を拠点とするアーティストが特別に制作したアート作品を設え、滞在しながら土地の文化にも自然とふれることができる。
設備面では、エレベーターの新設や、給排水設備や空調などを一新し、これから数十年安心して使用することができるようになった。(文:ハジマリアーキテクツ)
主要用途:宿泊施設、自社設計事務所、陶芸工房、ラウンジ、喫茶、ショップ
所在地:大分県別府市千代町
構造・規模:鉄筋コンクリート造4階建て
建物竣工:1977年7月
今回の耐震再生・用途転換竣工:2023年9月
企画・設計・運営:ハジマリアーキテクツ 株式会社
延床面積:約830m²
https://hjmr-arch.jp/works/7399
別府市・堀田温泉エリアの断層崖地形に着目し、地域固有の自然や歴史と深く結びついた“サイトスペシフィック”なホテル建築。別府の温泉文化の起源である地形を建築の出発点とし、断層崖に連続する「削り出された大地」のような壁群を形成することで、地域の新たな風景となる建築が構想されている。
館内は、厚い壁に穿たれた孔や光、水の音によって日常から切り離されている。宿泊機能に加え、カフェ・バー、レストラン、テラス、スタジオなどを備え、観光客や地域住民、美術鑑賞者が交流できる開かれた文化拠点となっている。
新築RC造の本棟とは、大分県産スギ材を用いた独自の「まく板型枠」を開発し、粗さや偶発性を活かしたコンクリート表現によって、大地と連続するような質感になっている。既存別荘を再生したレストラン棟は減築・耐震補強され、新旧が混ざり合う空間を構成している。スクリーンは、別府の町から採取したテクスチャー(タイルやガラスの模様)から図案化されているなど、町との関係性が混ぜ込まれており、大規模な計画の中にも町と接続する繊細な接点が編み込まれている。
均質化された現代建築を超え、土地の風景・素材・文化と結びついた新たな地域固有性を生み出そうとする試みである。(文:ハジマリアーキテクツ)
用途:ホテル
付帯施設:レストラン (THE PEAK)、カフェ・バー (HOT SPRING BAR)、スタジオ
竣工日:2020年12月9日
所在地:大分県別府市堀田5組
客室数:35室
ツイン:12室 [47.43㎡+テラス10.26㎡]
デラックスツイン:16室 [47.43㎡+ テラス10.26㎡]
ガレリアキング:5室 [47.43㎡+テラス10.26㎡]
2ベッドルームスイート:2室 [116.88㎡+テラス29.55㎡、デュープレックスタイプ]
温泉・泉質:各部屋に天然温泉半露天風呂付 弱酸性低張性高温泉・硫黄泉
敷地面積:4856.94㎡
延床面積:2991.02㎡
発注者:株式会社関屋リゾート
アートキュレーション他:NPO 法人 BEPPU PROJECT
参加アーティスト:[ロビー]大巻伸嗣、鈴木ヒラク、西野壮平 [HOT SPRING BAR]草本利枝 [半屋外]中山晃子、青木美歌、olectronica [客室]Nerhol、目[mé]、泉イネ [レストラン]島袋道浩、勝正光
https://hjmr-arch.jp/works/3614
辰野金吾・片岡安設計による歴史的建築「旧第二十三銀行本店」を、地域商社「Oita Made Shop 本店」やカフェなどを備えた新たな“クリエイティブハブ”として再生したプロジェクト。東京駅と同時期の大正2年に竣工した「辰野建築」を活かしながら、建物が積み重ねてきた歴史や時間を感じられる空間づくりを目指した。
改修では、創建当時のレンガ壁や戦後改修時のRC構造、既存梁を現しとし、本来の空間スケールや建築の痕跡を体感できる設計としている。一方で、新たなデザインは極力抑え、「引き算」の発想によって素材や空間そのものの魅力を引き出した。
また、将来的な耐震補強を見据え、今回の改修を長期的な保存再生プロセスの一部として位置づけ、アスベスト除去を行うとともに、将来撤去が必要になる工事を最小限に抑え、再利用可能な構成とした。
内装には大分県産スギ材や別府竹細工を用い、地域性と現代性を両立。展示什器には円形の可動式デザインを採用し、来訪者が巡りながら楽しめる柔軟な展示空間とした。(文:ハジマリアーキテクツ)
https://hjmr-arch.jp/works/1073
車輪がついているなど、持ち運ぶことができ、組み立てや解体が簡単であることで、土地に固定されず移動することができる「可動建築」は、街が抱える様々な課題にも有効な、場のちからを引き出すための建築的ツールである。
2019年、ハジマリアーキテクツは別府市との官民連携によるパブリックスペース活用の社会実験「カドウ建築の宴 in 別府公園」を開催した。ハジマリアーキテクツがつくってきた「可動建築」、アーティストが制作したものなどを一挙に集めた本社会実験では、道路や広場、公園などの屋外パブリックスペース活用のきっかけをつくり、「可動建築」による簡易なしつらえによって市民活動が屋外パブリックスペースに展開でき、参加しやすく、自由な文化発信の場となり得ることを実証した。2020年には、大分県立美術館と連携した「カドウ建築の宴 in OPAM」も開催された。(文:ハジマリアーキテクツ)
https://hjmr-arch.jp/works/2946
左端から5人目:光浦高史 私たちのOffice Westは、温泉のまち別府にあります。HAJIMARI Beppuでもある事務所の周囲には共同温泉が点在し、自治会ごとに温泉があることも珍しくありません。別府では温泉は観光資源である前に、暮らしの風景です。
温泉とは、不思議なものです。
地中から湧き出し続け、電気も燃料も使わずに熱い湯を提供してくれる。誰に対しても開かれていて、身体を温め、心をほどき、ときには見知らぬ人どうしをつないでしまう。望めばいつもそこにあり、地元の人も旅人も分け隔てなく受け入れながら、まちの営みを支えています。
別府の人はよそ者に優しく、気さくでオープン。世界中から留学生が集まり、アーティストや移住者も多く暮らしていますが、こうしたまちの多様性や寛容さの気風も、元を辿れば、温泉から湧き出たものかもしれません。
その土地に根ざしながら、人を受け入れ、身体や心に働きかけ、人を引き寄せ、人と人、人と大地をつなぎ、そして人とまちに幸せを巡らせる。
私たちが建築や空間づくり、地域での活動で大切にしたいことの多くを、温泉はすでに備えているように思えるのです。もしかすると、私たちのいちばんのメンターは、この温泉なのかもしれません。
Cookie(クッキー)
当社のウェブサイトは、利便性、品質維持・向上を目的に、Cookie を使用しております。詳しくはクッキー使用についてをご覧ください。
Cookie の利用に同意頂ける場合は、「同意する」ボタンを押してください。同意頂けない場合は、ブラウザを閉じて閲覧を中止してください。