1932年、名古屋港から名古屋駅に物資を輸送するためにつくられ、1960年代がピークだった運河。道路網が発達したことにより、陸上輸送がメインとなり、今はほとんど使われていないが、埋め立てられずに、沿岸には工場や倉庫が立ち並んでいる。名古屋市が市民の憩いの場に変えようと再生計画を策定したが、共有できるビジュアルがなく、2021年5月に開催された世界運河会議に向けて、イメージを描いて欲しいと依頼され、全延長10.3kmに及ぶプロムナードと沿岸用地のあり方をデザインした。これは、これまでに市民から寄せられた様々な意見をベースにそれらをビジュアル化するかたちで中川運河の将来像を描いたものであり、今後も市民の声を集め、絵を描き変えて、現在地を書き換えていくコミュニケーションツールとして機能する。現在、パイロット事業実施予定。
2021年6月にプロポーザルが開催され、9月に最優秀提案者として選定された。2021年度中に基本設計、2022年度中に実施設計、2023年度に着工を予定しており、2027年の完成を目指す。名古屋駅の西側は名古屋の人に「裏側」という意識があるが、リニア開通に向けて、検討が進んでいる。米澤隆建築設計事務所のチームは、アクティビティのよりどころとなる「グリッド柱」、分散・連続両方の利点を兼ね備えた雲形の「クラウド屋根」、円形にデザインされた「サークル床」などで構成する、隣接地域から続く東西軸と南北軸が織りなす広場空間を提案した。評価委員の講評によると、要求条件への配慮が多く示され、利用のアイディアが豊富で、東口と対比した際の西口の地域性への対応が期待できることなどを高く評価された。
【設計チーム】
デザイナー・意匠担当技術者:米澤隆(米澤隆建築設計事務所)
意匠担当技術者:米澤睦(米澤隆建築設計事務所)
意匠担当技術者:村西凱(米澤隆建築設計事務所)
意匠担当技術者(アドバイザー):野村直毅
構造担当技術者:藤尾篤(藤尾建築構造設計事務所)
設備担当技術者:佐橋政人(株式会社明和技術管理事務所)
照明デザイン:永野俊哉(株式会社LIGHTLINKS)
ランドスケープデザイン監修:大野暁彦(株式会社エスエフジー・ランドスケープアーキテクツ)
高校の同級生で、京都工業繊維大学に進んでいた友人、野村直毅さんと一緒に設計。上階の屋根空間と下階の土間空間で構成され、屋根空間には大きなガラスのテーブルが、土間空間には大きな木のテーブルがそれぞれ空間の中央にあり、ふたつの空間性が独立せず相互補完関係をつくりだすように繋がりを持つ。上階には公文式学習塾、下階には大人向けの教室が開かれる。生徒数も倍増し、親御さんの信用度もあがったそうだ。
敷地面積:45.17㎡/建築面積:31.55㎡/延床面積:60.68㎡ ( https://www.takashiyonezawa.com/kumon )
大学4年生の時、ふとした縁からとある住宅の設計の相談を受けました。がむしゃらに設計に取り組んでいるとなんとか竣工にこぎつけることができました。その様子を見ていた大工さんから次の住宅の設計の依頼を受け、それを見聞きした近所の人から次のといったように建築設計の依頼が広がり、気が付けば同時に5件も6件もプロジェクトを抱えるようになっていました。そうなると自分一人の手にはおえないので、後輩達を集めてゼミ形式で設計活動を展開することになりました。
いっぽうで、設計活動と並行するかたちで、軸足は学生ということもありましたので、卒業論文、修士論文、博士論文など研究活動を継続していました。設計活動を通して得られた可能性の実感やぶつかった課題をシーズとしてその都度拾い集め、研究に取り組みました。その一つの成果が空き家再生データバンクでした。地域や社会の抱える課題を引き受け、研究を通して実効性と展開性のあるメソッドを考案し、建築設計を通して地域や社会に還元する。
そういった設計や研究の取り組みが、名古屋の港まちでの空き家再生プロジェクトへ、そしてそこから、中川運河再生プロジェクトへ、柴田商店街再生プロジェクトへ、名古屋駅西側駅前広場プロジェクトへといったように展開していくことになりました。今では、どっぷりこの地域に根差した建築家になっているようです。
こうして振り返ってみると、地域とは、まずは身の回りの一歩から始まり、歩み進めていく中で新たな面白い道を発見したり難所や岐路に遭遇したりしながら、必要に迫られて仲間を集め知恵を出し合い時には事をおこし、経験を重ねながらもその過程で得たリソースをその先の行程にフィードバックして、さらなる未踏の地へと歩を進めていく、そういった一連の道程で、場や人や物や事が織り交ぜられ耕されていく、そういったものの総体なのではないかと思ったりします。
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