2023年4月14日、歌舞伎町に「東急歌舞伎町タワー」が開業した。映画館・劇場・ライブホールなどのエンターテインメント施設やホテルなどが入る超高層複合施設で、地上48階(高さ約225m)と新宿西口の高層ビル群(新宿三井ビルディング:高さ225 m/新宿センタービル:高さ222.95m)に並ぶ高さで西武新宿駅の東側にそびえる。
2014年年末に閉館した「新宿TOKYU MILANO」の跡地活用に向けた再開発事業として、2018年に東京圏国家戦略特別区域における国家戦略都市計画建築物等整備事業として、内閣総理大臣による初の認定を受けて動き出した「歌舞伎町一丁目地区開発計画(新宿TOKYU MILANO再開発計画)」。東急および東急レクリエーションが推進したこの計画は、新宿駅周辺地域の新しい地域整備方針に基づく民間都市再生事業計画として、エンターテインメント・宿泊の新しい在り方を体現し、国際観光都市東京・新宿・歌舞伎町のさらなる魅力向上に貢献して行くことを目指している。
設計は久米設計・東急設計コンサルタント設計共同企業体、外装は2017年の指名コンペで選ばれた永山祐子建築設計による「噴水」をイメージさせるデザインで、新宿のスカイラインのなかで一際目を引く。
施設全体に設置されたアートプロジェクトは、拝戸雅彦氏(愛知県美術館館長)と現代美術ギャラリー「ANOMALY」が監修しており、4年ほど前から作家選定と準備をしていたという。参加作家は全26組、若手の作家から世界的な活躍をしている作家まで幅広く、ほとんどが新作となる総作品点数は190点(新作:175点)である。また、上階の HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel には、開発好明氏、玉山拓郎氏、鷲尾友公氏による部屋全体を作品化した「GROOVE ROOM」が3部屋ずつあり、インスタレーション作品の中に入り込むような体験ができ、地上階の屋外ビジョンの大画面では、ムラタタケシ氏の映像作品が、客室内テレビではぬQ氏が制作したホテルブランドムービーが宿泊客を迎えるなど、絵画や彫刻といったホテルに置かれがちなメディア以外の作品があるのも現代的な特徴を反映していると言えるだろう。
丁寧に設置場所が選ばれ、作品と出会うシーンが生み出されており、映画「アートのお値段」(監督:ナサニエル・カーン)で「ロビーアート」と呼ばれたような、脈絡もなく美術作品が置かれるような状況とは一線を画しているように感じた。
犯罪件数が多く、治安が悪いイメージだった歌舞伎町は、外国人家族が観光しているなど、以前では考えられない変化を遂げているように思う。歌舞伎町を観光拠点にという国家戦略により、インバウンド需要を見込んだ東急歌舞伎町タワーは開業1カ月で100万人が来館するなど、順調なスタートを切ったと言えるが、すぐそばでは、「新宿東宝ビル(TOHOシネマズ新宿)」周辺でたむろをしていたことから『トー横』キッズと呼ばれる若者(その多くが未成年)たちが犯罪に巻き込まれる事件が起きている。単にエンターテイメント・シティというにはあまりにも複雑な街で、一元的な都市開発は難しいように思うが、そもそも歌舞伎町は、第二次世界大戦後に日本は「観光国家」として活路を見出すべきと考えた角筈一丁目北町会(現在は歌舞伎町の一部)町会長だった鈴木喜兵衛が石川栄耀(東京都建設局都市計画課長)とともに計画した街であることを考えると75年前に戻ったということかもしれないが、その75年を経て、都市計画は変わらなくてよかったのだろうか。
東急歌舞伎町タワー
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町一丁目29番1号
https://tokyu-kabukicho-tower.jp/
【アートプロジェクト参加作家】
青木野枝、大巻伸嗣、細倉真弓、荒木経惟、川内倫子、野村佐紀子、羽永光利、山本糾、水戸部春菜、沢村澄子、新城大地郎、佐々木類、玉山拓郎、開発好明、鷲尾友公、ぬQ、西野達、竹中美幸、SIDE CORE、SIDE CORE×しょうぶ学園、Chim↑Pom from Smappa!Group、篠原有司男、森山大道、ムラタタケシ、淺井裕介、足立喜一朗(順不同)
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