世界の建築は今 No.143

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

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最終更新 2017/09/04 11:30

The Interlace (Singapore)

インターレイス集合住宅 (シンガポール)

Design : Ole Scheeren (OMA)
設計:オーレ・シェーレン(OMA)


ヘキサゴナル・コートヤードが生み出すインターレイス空間

シンガポール・ダウンタウンのアレキサンドラ通り。OMAのオーレ・シェーレンが担当した「インターレイス集合住宅」は、長方形のヴォリュームが多数自由な角度で積み重なった一見乱雑に見えるコンポジションが、圧倒的な驚異的造形フォルムで迫ってくる。

集合住宅という建築タイポロジーは、他の建築に比べて制約が多くダイナミックなデザインがしにくいとう定説がある。人間が生活する空間がだから、ある意味当然だろう。ところが「インターレイス集合住宅」によれば、そうした既成概念は吹っ飛ばされる。

オーレ・シェーレンのデザインでは、コミュニティにおける現代生活をラジカルに再解釈することによって、個人的空間やシェアされた社会空間の広範囲なネットワークを生み出している。高密度な都市環境における集合住宅の間違ったデザイン、例えば孤立したタワー集合住宅群など、を追従するのではなく、彼のデザインは垂直的な孤立化を水平的な連続性へと変え、コミュニティの概念を今日の社会における中心課題として修復している。

「インターレイス集合住宅」には6階建ての長方形アパートメント・ブロックが31棟ある。これらの棟が8つある広い中庭を6角形に取り囲んで積層化されている。積み重ねられたブロックは共有のアウトドア・スペースを多数生み出し、段状に積層化されたヴォリューム越しに、ドラマティックなテラス・ガーデを多数配している。

部分的に固定され、部分的にフロートするブロック群は、お互いの上部を浮遊し、"インターレイス・スペース”(織り交ぜた空間)を生み出した。これにより個々のアパートメントは、アクセスしやすい包括的なコミュニティ・ライフに接続可能となっている。このデザインにより、住空間の質やチョイスの多様性を生み出し、ライフ・スタイルの多重でリッチなフィーリングや自由な感覚を住民にあたえている。

建物は延床面積170,000㎡、1,040戸の開発。ブロック群は24階建ての3つのピークを頂く4つのメインとなるスーパー・レベルに配されている。他のスーパー・レベルには6階~18階のブロックが段状の幾何学を構成し、各ブロックの屋上にランドスケープ・トポグラフィーを表現している。6階もしくは12階分の巨大な開口部から光や風が入り込み中庭のランドスケープを通り抜けて行く開放感は素晴らしい。

さて一見ランダムに積層化されたように見える「インターレイス集合住宅」は、実は非常に明快なプランをベースに計画されている。先述の6階建て長方形のアパートメント・ブロックは長さ70.5m、幅16.5m、高さ6階建て22mだが、これを6ブロック用いて直径56.5mの正6角形プランをつくる。これらを多数敷き詰めた正6角形グリッド・プランの上に、敷地境界線を描いて敷地内のプランを決定している。

ヘキサゴナル・コートヤード(正6角形の中庭)は8つあり、全てが異なる特徴をもつ居心地のよいコートヤードになっている。セントラル・スクエアを中心に、バンブー・ガーデン、シアター・プラザ、ロータス(蓮)・ポンド、ウォーター・フォール、ウォーター・パーク、レインフォレスト・スパ、ザ・ヒルズと命名された中庭である。

ただし中庭全てが6階建てのブロックで囲まれているわけではない。つまり眺望、方位、日照、風当たりなどを考慮し、随所でブロックを抜いているのだ。このため地上から見ると、非常に錯綜した複雑な外観形態が、ちょっとかつてのデコン風にも見える。この予期せぬ尋常には見えない集合住宅フォルムが、「インターレイス集合住宅」の魅力となっている。

8つの広い中庭と個々のランドスケープはプロジェクトの中核的なデザインとされ、それぞれ別個のスペース・アイデンティティーを形成している。約 60mの長さ(直径)をもち、かつ通過可能なインタラクティブな接続ルートで繋がれた中庭は、プレイス・メイキング(場所づくり)や空間アイデンティティーを形成する特殊なキャラクターやアトモスフィアを醸しているが、バラエティのあるそれらに都市の中心機能を担わせているのは、建築形態と相まって巧みなデザイン手法だ。


[図 面]

 

[建築家]

■オーレ・シェーレン略歴


オーレ・シェーレン
Portrait: ©Wing Shya

1971年 ドイツのカールスルーエ生まれ
カールスルーエ大学、ローザンヌ工科大学、AAスクールに学ぶ。
1995年 OMAに入所
2000年 RIBAシルバー・メダル
2007年 タイムズ誌ワールド・モースト・アンビシャス・プロジェクト賞
2008年 新ベスト・グローバル・デザイン国際建築賞、ニューヨーカー誌建築10ベスト賞
2010年 アジア・パシフィック・プロパティ・ベスト建築賞、グリーン・マーク・ゴールド・プラス賞
2012年 MIPIMアジア・ベスト・フートゥラ・プロジェクト賞
2013年 CTBUHベスト世界超高層ビル賞
2014年 CTBUHグローバル・アーバン・ハビタ賞
2015年 アジア・パシフィック・プロパティ多目的開発賞、2015世界建築賞
現在 OMAより独立後、総勢70数名のスタッフを擁し、香港、北京、バンコク、ベルリン、ニューヨークに事務所を配している。

 
■代表作

主な作品にOMAのアジア・パートナーとして、CCTV &TVCC、マハナコン、インターレイス集合住宅、台北舞台芸術センターなどがある。独立してからの作品として、ヴァンクーバー・スカイスクレーパー、北京オークション・ハウス、アンカサ・ラヤ・タワーなどが進行中。

Photos: ©Iwan Baan
Material: Courtesy of OMA & Ole Scheeren Architects