世界の建築は今 No.120

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

プロフィール バックナンバー

最終更新 2015/10/01 10:00

New Philharmonic Hall of Szczecin (Szczecin, Poland)

シュチェチン新フィルハーモニック・ホール(ポーランド、シュチェチン)

Design: Barozzi/Veiga + Studio A4
設計:バロッツィ/ ヴェイガ + スタジオ A4


暗い都市景観にインテグレートした白亜の美形

「シュチェチン新フィルハーモニック・ホール」は、ポーランド北西部のザホドニョポモルスキェ県の県都であるシュチェチンにできた新しい音楽ホール。敷地は第二次世界大戦で破壊された歴史的なコンサート・ハウスの跡地で、都市の交差点を形成する敷地の再構築が意図された。

建物には1,000席のシンフォニー・ホールをはじめ、200席の室内楽ホール、展示や会議用の多目的スペース、イベントに使用される広いホワイエなどを配置。建物全体は総合的なバランス形態を見せているが、また同時に複雑なヴォリューム構成ともなっている。建物全域を貫くひとつのパブリック・ルートに沿って展開するこれらの機能空間は、連続的な”内部プロムナード”によって容易にアクセス可能だ。

外観的には近隣にある建築群のように、垂直性と屋根の形態的なジオメトリーが支配的になっている。これらのエクステリア的特徴によって、「シュチェチン新フィルハーモニック・ホール」は近隣コンテクストと一体になって街並みに溶け込んでいる。

平面的なコンポジションはペリメーター部分にシャープな切妻屋根を配している。これらのエレメントは主にサービス・スペース群に用いられている。一方でこれによって、シンフォニー・ホールと室内楽ホールを囲い込む大きなヴォイド空間を限定し、他方近隣建物群との都市的関係を形成している。

シャープなノコギリのような屋根形態は近隣にある城のシルエットと対話を醸す。変化に富んだルーフスケープは唯一の外観的な表現エレメントであり、それによってシュチェチン市のフラグメント化された都市的相貌に建物を見事にインテグレートさせている。

白亜の建物はどちらかというと暗い都市景観の中で圧倒的な美しさを誇り、軽やかな造形として知覚されるよう意図された。ガラスのファサードは夜間内部からの照明で輝き出す。内部のアクティビティにより異なる表情を見せる。ストイックな外観とインテリア・サーキュレイション空間のシンプルな構成が、メイン・ホールの装飾的な表現と見事なコントラストをなす。

中央ヨーロッパのクラシカル・コンサートホールの伝統に従えば、デコレーションは装飾であると同時に機能でもある。メイン・ホールは金色の葉のパターンをもつ3角形の木製音響パネルをフィボナッチ数列に従って配列。その断片は舞台から遠ざかるに連れて増加して見え、クラシカルな伝統を想起させる装飾空間を生み出した。

「シュチェチン新フィルハーモニック・ホール」は、2015年のヨーロッパ建築賞であるミース・ファン・デル・ローエ賞に輝いた秀作だ。毎年EU圏に完成した優秀作品に贈られるこの賞は、数チームのファイナリストをまず選び、その中から最終的な勝者を決めている。

今回のファイナリストは、BIGの「デンマーク海洋博物館」、レデラー・R.オエイの「ラヴェンスブルク美術館」、アルキア・アソシエイツの「アンティノリ・ワイナリー」、オドネル+トゥオメイの「ロンドン大学経済学部ソー・スィー・ホック学生センター」などの強豪が、「シュチェチン新フィルハーモニック・ホール」のライバルとなった。

バロッツィ/ ヴェイガはバルセロナをベースに活躍するファブリツィオ・バロッツィとアルベルト・ヴェイガのチームで、今回はスタジオ A4の協力を得て優勝した。授賞式は5月8日、ミース・ファン・デル・ローエの代表作のひとつ、「バルセロナ・パビリオン」で開催された。


[図 面]

 

[建築家]


バロッツィ(左)、ヴェイガ(右)
Courtesy Barozzi/Veiga

■バロッツィ/ヴェイガ略歴
2004年 バルセロナに設立
2007年 バルセロナ大学アハック賞、リーフ賞
2008年 ヨーロッパ40アンダー40賞
2011年 バルバラ・カポチン賞
2012年 エコラ賞佳作、スパッツィオ・ディ・ヴィノ国際建築賞、ミラノ・トリエンナーレイタリア建築ゴールドメダル
2013年 イタリア建築ヤング・タレント賞
2014年 アーキテクチュラル・レコード誌デザイン・ヴァンガード賞
2015年 ミース・ファン・デル・ローエ賞
 

ファブリツィオ・パロッツィ略歴

1976年 イタリアのロヴェレト生まれ
2004年 バロッツィ/ヴェイガ設立
2007―2009年 カタロニア国際大学デザイン学科准教授
2009年 ジローナ大学デザイン学科准教授

アルベルト・ヴェイガ略歴

1973年 スペインのサンチャンゴ・デ・コンポステラ生まれ
2004年 バロッツィ/ヴェイガ設立
2007年 カタロニア国際大学デザイン学科教授
 
■代表作

代表作にアグイラス・コングレス・センター、リベラ・デル・ドゥエロ本社、シュチェチン新フィルハーモニック・ホール、グラウビュンデン美術館増築(進行中)、ローザンヌ美術館(進行中)などがある。

Photos and Material: Courtesy Barozzi/Veiga