審査委員と受賞者の記念撮影
今回のコンペのテーマ「これからの平屋」には、さまざまな意味が込められている。これからの住宅事情を考えれば、人口の減少や高齢化に対応してバリアフリーな住宅が求められることは間違いない。ならば平屋住宅がこれからの住宅にふさわしい形式だと考えるのは自然である。しかし他方で、今後は平屋の住宅が建ち並ぶ低密度な住宅地が一般化するとは考えにくい。しかも広い敷地に平屋住宅を建てることはよほど恵まれた特殊解であり一般性はない。今回のコンペがそのような安易な回答を求めているのでないことは少し突っ込んで考えてみれば理解出来るはずである、にもかかわらず広い敷地を想定し、快適な平屋住宅をデザインしようとする案が多かったことは残念だった。もちろん条件の良い中でテーマを追求する正攻法がいけないわけではない。その方針で優れた平屋の都市住宅を提案した入選作も見られたからである。とはいえ、あえて平屋をテーマに選んだ意図をじっくりと読み込まないと、発見的な案は生まれないだろう。
期待されたのは、今までとは異なる平屋住宅の建ち方である。何よりも再考して欲しかったのは敷地のあり方についてである。平屋は必ずしも地面の上に建つとは限らない。ビルの屋上や人工地盤は新しい地面と考えることができるのではないだろうか。かつてのメタボリストたちはそのような敷地を提案しているし、最近では実際にそのような形式の都市住宅も散見されるようになった。しかし応募案には、そのような敷地の読み替えはほとんど見られなかった。高齢者が住むことが予測される住宅であるにもかかわらず、駐車場を考慮している案が少なかったのも意外な結果である。
テーマの前提を批評的にとらえ読み替えることは、コンペにおいては重要な条件である。その点で今回は、意欲的な案は多く見られたが、批評的な案は少なかったことがやや悔やまれる。
「Mini×4→FLATcollective
~高齢の4世帯が集う平屋の集合住宅~」
川田 浩史(UR都市機構)
藤森 俊行(SPIKE design studio)