審査委員長 塚本由晴(アトリエ・ワン/東京工業大学大学院准教授) |
5軒分の住空間の確保、斜面の扱い、全体計画にはない町と家をつなぐ仕掛け、などの異なる配慮が議論され、敷地と建物の固定的な関係を一度解除し、複数の部屋を緩やかにつなぎながら斜面に生活を展開させる「COMMONS HOUSE」がこれらの配慮を最も自然なかたちで統合しているとの結論に至り最優秀賞に、斜面に対し45度平面をずらすことで変化に富む空間を生んだ「Houses in Olive Park」、建物を道路に寄せ背後に雑木林を確保した「繋がる家 繋げる家 余白のある街並み」が優秀賞に選ばれた。「小屋の森」は過激な案でしたが、小屋のつくり方に配慮が及ばず惜しかった。
審査委員 千葉 学(千葉学建築計画事務所/東京大学大学院教授) |
今年はアイデアコンペから一転、具体的な敷地でのコンペとなった。やはり建築は、現実の社会や都市に潜在する課題から導かれたアイデアの方が、遥かに面白い。特に今回は、都市を用途によってゾーニングする古典的な宅地開発、そして一家族一住宅というあり方を問うた点でより現代的だ。「COMMONS HOUSE」は、これからの町や住宅の程よい“調整代”になりそうなAnnexが魅力的だ。家族や住まい方の変化に応じて家が伸縮したり、住宅地に他の用途が入り込む時の受け皿にもなる。「あふれだすふるまい」は、斜面に散在する色とりどりの箱によって、全ての部屋が玄関を持つと同時に家の輪郭が曖昧になっている点に新しさを感じた。
審査委員 小野田泰明(東北大学大学院教授) |
コンペの敷地は傾斜地で、土工事をイメージしにくい“学生”参加者には、難しい条件であったかもしれない。入選「街に開き、まちに住まう」も土を深く掘削し、その上で構造を左右に振るという荒業を仕掛けており、突っ込みどころ満載である。しかしながら、地上部に自由に連結されたデッキが伸び伸び描かれており、若い二人は、敷地の可能性をしっかり捉えてもいる。この伸びやかさの一端が、少子高齢化に直面する日本の郊外団地の問題にちょっとでも触れていたなら、評価はもっと伸びたかもしれない。今後に期待したい。
審査委員 西沢立衛(西沢立衛建築設計事務所/横浜国立大学大学院Y-GSA教授) |
最優秀賞「COMMONS HOUSE」は、僕個人としては全応募案の中でもっとも共感したものだった。これからの時代がもとめる住宅の姿を素直に考えている、その等身大な感覚が素晴らしい。また意外と覚めた、現実的な感覚もある。今回のコンペ全体の暗さに、明るい光を与える提案だ。「物語を描く境界線」は五戸が地形の連続性の中で展開していて、その全体の調和が美しいドローイングで描かれた。「透明な洞窟」は、斜面を小さく細かく造成していくことで、斜面全体を生活の場と変える試みだ。家五戸が意外と普通に並んでしまうのが残念だった。
審査委員 玉木伸弥(タマホーム株式会社代表取締役副社長兼COO) |
この度は多くのご応募頂き、誠にありがとうございました。今回は初の「公開審査」に挑戦しました。審査をオープンにすることで、会場にいる全員が、一つ一つの作品と向き合いながら今回のテーマに最も適した作品を導くことができたと思います。どの作品も素晴らしく甲乙付け難い審査となりましたが、最優秀賞を受賞された菅沼さん、白石さんの作品は見事に審査員の心を掴む強さがあったと思います。誠におめでとうございました。次回もより多くの応募を頂けますよう、今後も住宅会社として、皆様の理想の住まいづくりのお手伝いに一層努めて参ります。