世界の建築は今 No.172

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

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最終更新 2020/01/30 16:00

Comcast Technology Center (Philadelphia, USA)

コムキャスト・テクノロジー・センター(アメリカ、フィラデルフィア)

Design : Norman Foster/ Foster + Partners
設計:ノーマン・フォスター/フォスター+パートナーズ


フィラデルフィア最高の先端オフィス・ビル

ペンシルヴァニア州フィラデルフィアといえば、かつてヘルムート・ヤーン設計の「ワン・リバティ・プレイス」(1987)が、その尖塔形のクラウンを頂いて最高(288m)の建物であった(拙著『アメリカ建築案内2』)。あれから30年程が過ぎた今日、ここに紹介するノーマン・フォスター設計の「コムキャスト・テクノロジー・センター」が、フィラデルフィア最高の341mの高さで立ち上がった。

建物は既存の「コムキャスト・センター」に隣接しており、垂直的な段状の形態の中に、ロフトのようなワーク・スペースや最先端テレビ・スタジオを擁し、その上部に12階建てのフォーシーズンズ・ホテルを配している。アーバン・スケールの観点からも、そのショップ、バー、レストランをもつこの建物は、この界隈への新しい参入者として歓迎されている。

敷地は住宅地でリッテンハウス・スクエアの社会的ハブ・エリアと、ベンジャミン・フランクリン・パークウェイ近辺の文化地区の間にある。建物はフィラデルフィアにおけるパブリック・スペースの市民的な伝統を反映させて、建物のメイン・エントランスにシェルター化されたウインター・ガーデンを付加しているのが特徴だ。

このアーバン・ルームには、ロビー、プラザ、ソーシャル・スペースが必要とするベスト・エレメンツが、住人やビジターのために用意されている。すなわちいくつかのサイト・スペシフィックなアートである、ジェニー・ホルツァーの「For Philadelphia」やコンラッド・ショークロスの「Exploded Paradigm」が空間に活気を与えている。

さらにロビーの上階レベルには、スティーヴン・スピルバーグによるユニークなシネマ体験が出来るストラクチャーである「The Universal Sphere」がある。この球形のストラクチャーはパネルでカバーされており、その外壁には無限のジオメトリック・パターンが創造されている。ヴェルニック・コヒー・バーも近くでビジターや社員にテイクアウト用の軽食やテーブル・サービスを提供している。

グレッグ・ヴェルニック・レストランやヴェルニック・フィッシュは、1階の北側全域を占めており、活動的なストリート文化に参加している。地下にはショップ、アート・ワークス、ベンチなどが配された地下通路があり、隣接の「コムキャスト・センター」や地下鉄にも通じている。

建物はLEEDのプラチナ・レベルの認定を受けたほどの、徹底したサステイナブル・デザインを随所に散りばめて、フィラデルフィアの厳しい冬をしのいでいる。建物にはチルド・ビーム・システムを用いてエネルギー負荷を減少させ、より健康的な職場環境を生み出している。日光は3層吹抜けのスカイ・ガーデンからインテリアへと降り注ぐ。またグリーン・ルーフ、ウォーターレス便器、ハイ・パフォーマンス冷房タワーなど、水の効率的な使用システムを取り入れている。

インテリア空間は非常に流動的かつダイナミックで、ロフトのようなフレキシブルなスペースとなっており、スタッフがどこでどのように仕事をするかについては最大限の自由が与えられている。なお建物中央部に一際高く聳えるセントラル・スパインは、高さ38mのイルミネートされたガラスのブレードで、フィラデルフィアのスカイラインを象徴するランドマークとなっている。


[図 面]

 

[建築家]

Norman Foster/ Foster + Partners
ノーマン・フォスター/フォスター+パートナーズ

(Portrait by Julian Cassady)

https://www.fosterandpartners.com/

・Photos by Nigel Young (1, 3, 4, 5, 6, 7, 9)/ Jeffrey Totaro (2)/ Joseph Kaczmarek (8)
・Drawings by Foster + Partners