世界の建築は今 No.171

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

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最終更新 2020/01/06 09:30

121 East 22nd Street (New York, USA)

22ストリート・イースト121(アメリカ、ニューヨーク)

Design : Shohei Shigematsu/ OMA
設計:重松象平/OMA


ファセット・コーナが輝く集合住宅タワー

ニューヨークのOMAの作品と言えば、レム・コールハースの「プラダ・ニューヨーク・エピセンター」などのようにインテリア・デザイン作品であったし、流石のOMAといえどもニューヨークのマンハッタンに、完全なビル作品はなかった。しかしここに紹介する「22ストリート・イースト121」は、OMAニューヨーク・パートナーの重松象平氏設計による、マンハッタンにおけるOMA初の完全なビル形態の集合住宅コンプレックスである。

建物は敷地がふたつの離れた異なる界隈をまたぐため、デザインはそれに呼応したものとなっている。グラマシー・パークを取り囲む静かな住宅エリアと、活動に満ちたマジソン・スクエア・パーク界隈の騒がしいコマーシャル・エリアだ。L字形の敷地はふたつの界隈に面し、他方3つのストリートを活性化している。

建物のデザイン・コンセプトはこれらふたつの状況から生まれた。キュービストのアート作品のように、オブジェを一方から見るのではなく、多方面から見られることを意識しているデザイン。その結果、ノース・タワーはふたつの界隈を突き合わせた、23番街とレキシントン通りが出会うふたつの連結するファサードによって、非常に目立つ3次元的ファセット(切子面)・コーナーを生み出した。

コーナー部は垂直的に凹凸を繰り返しており、内部からは空に向けての見上げと、街路に向けての見下ろしができるユニークな視界が開けている。ストリート・レベルのコーナー部は内側へと凹んでいるため、歩道を広くし、内部のショップへの明快なエントランス・ポイントを構成している。

表現的なコーナーの両サイドのファサードは、隣接する戦前の建物に近づくに連れてよりコンテクスチュアルになっている面白さ。そのプレキャスト・パネルもコーナーから遠ざかるに連れて大胆になり、シームレスに新から旧へと視覚的なグラデーションを確立している。ブラック・コンクリートが窓を強調し、グラデーションにアクセントを付与したユニークさ。

3次元的なアーティキュレーションは13階建てのサウス・タワーへと続き、うねるグリッド壁の窓が22番街を見下ろしている。サウス・タワーにはメインの集合住宅エントランスがあり、漏斗形のロビーがふたつのタワーをつなぐ、屋根付きの渡り廊下とセントラル・ヴァーレイ(中央の谷間)へと通じている。

ヴァーレイは23番街とレキシントン通りの喧騒の中における静穏なオアシスであり、また集合住宅アメニティーやバルコニー群の中心に座している。それはコンプレックス全体における内外空間のリビングを形成。中庭に面するふたつのタワーのインテリア・ファサードは、エクステリア・ファサードの3次元性を反映させている。見上げると一連のヴォリューム感のあるバルコニー群が、彫刻的な造形性を見せている。


[図 面]

 

[建築家]

Shouhei Shigematsu/ OMA
重松象平

(Portrait by Julian Cassady)

https://oma.eu/

 

・Photos by Laurian Ghinitoiu (1, 2, 3, 4, 6)/ Iwan Baan (5, 7, 8, 10) / OMA (9)
・Drawings and Diagrams by OMA

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