世界の建築は今 No.164

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

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最終更新 2019/05/30 17:50

MahaNakhon Tower (Bangkok, Thailand)

マハナコン・タワー(タイ、バンコク)

Design : Ole Scheeren/ Buro Ole Scheeren
設計:オーレ・シェーレン/ビューロ・オーレ・シェーレン


3Dピクセル化スパイラル空間をまとった超高層

21世紀に入ってこの方、世界の現代建築分野において、アジアの貢献は素晴らしい。何といっても中国の経済的な台頭による世界の著名建築家の流入により、広い中国各地に素晴らしい建築が生まれたことだ。同じように韓国でも海外建築家の作品が多数ある。こうした状況に参画した世界的な建築家としてあげられる筆頭が、ザハ・ハディド・アーキテクツやOMAだ。彼らの牽引力により、世界中からの建築家がアジアへと結集。台湾、シンガポール、ヴェトナム、タイなどにおける大都市は未曾有の変化を遂げつつある。

「マハナコン・タワー」はタイの首都バンコクに建設された同国最高のタワーだ。OMAのアジアを統括するパートナー、オーレ・シェーレンによるデザインは、高さ314mの超高層ビルのガラス張りのフラットなシャフト部分を、3次元的ピクセル・リボンがスパイラル状にえぐって上昇していく、ユニークな形状が得も言われぬアイデンティティーを放っている。

「マハナコン」とは、”Great Metropolis”(巨大都市)の意味で、その強烈なシルエットはバンコクのスカイラインを変えたと言われている。建物は今やグローバルなメトロポリスとして発展し続けるバンコックのエンブレムとして屹立している。一般にもオープンされている最上階の展望デッキからは、賑やかなアーバン・ランドスケープを360度のパノラミック・ビューで満喫でき、眼下にはチャオプラヤー川を見下ろすことができる。

77階建ての集合住宅タワーは、近隣のアーバン・コンテクストを補強する超高層ビルがもつポテンシャルをラジカルに表明している。シェーレンのデザインは、従来の内向的な閉ざされたタワーをやめて、建物を開放する事で内部のヒューマン・ライフのスケールを露出させている。それが先述のシャフト部分をえぐる彫刻的なデザインで、内部生活を露わにし、人間活動を外部へと露わにしている。

シェーレンによれば、「マハナコン・タワー」のデザイン・コンセプトは、バンコクの都市生活を取り込み、それをドラマティックなスパイラル的な動きを加味したタワーへと積み上げたものだという。その最上階でさえ一般に開放しているため、1階のパブリック・スクエアのみならず、人間の活動があのピクセル状のスパイラルに沿って屋上の展望台まで繋がっているというアイディアがユニークだ。それは市民生活からかけ離れた超高層ビルではなく、むしろ市民生活に溶け込んだスカイスクレーパーといえる。

最上階の展望台には“スカイ・トレー”と呼ばれる面白い仕掛けがある。これは4.5m × 17.5mもあるガラス張りの床が、300mの上空に張り出しているのだ。歩けるガラス張りプラットホームは、世界のいろいろな超高層ビルで使用されているが、マハナコンのそれは圧倒的に大きく、観光客などを振るい上がらせている。今やバンコクの最もスリリングな観光スポットになっているようだ。

建物側面の細かく彫り込まれたカーブしていくプロフィールは、近隣アーバン・ファブリックを圧倒するのではなく、むしろそれに対し開き、コネクトしている。遠くから見ると、建物はまだ未完で工事中にみえる。完成した‘建物をフォーマルなゼスチャーで見せるのではなく、“ジオメトリック・エロージョン”(幾何学的溶解)として実際の生活空間;テラス、バルコニ、浮遊するリビングルームやアパートメントはトロピカルな内外空間をミックスしている。

トロピカルなエリアで生活をしている人々が流動的な内外部空間で生活していることから、建物ではそのような空間を彫り込んでいる。その可能性を埋め込んだのが「マハナコン・タワー」だ。15万㎡の建物には、アウトドア・パブリック・プラザ、小売店舗スペース、カフェ、庭&テラス付きのレストランなどが、多層に渡って展開されている。200戸のオーダーメード住戸、サービス付きアパートメント、150室のブティック・ホテルを内包している。


[図 面]

 

[建築家]

Ole Scheeren / Buro Ole Scheeren
オーレ・シェーレン/ビューロ・オーレ・シェーレン

(Photo by Buro Ole Scheeren ©Buro-OS)
https://buro-os.com/

 

・Photos of MahaNakhon Tower ©Buro-OS
・Drawings & Diagrams ©Buro-OS
・Photos and Materials: Courtesy of S Buro Ole Scheeren