最終更新 2018/11/05 10:10
オランダの建築家というと、レム・コールハースのOMAは別格としても、その後に控えるのはMVRDV、メカノー、UNスタジオだ。その中のひとつUNスタジオの規模がこんなに拡大していたとは知らなかった。アムステルダムの本社は別として、上海オフィスは40名のスタッフがおり6件のプロジェクトが進行中。香港オフィスは15名で3プロジェクトが進行中という。
中国広東省の中山市。「ケッペル湾マリーナ & クラブハウス」は中山市を流れる河川、西江のバンクに位置している。50,000㎡という巨大なマスタープランには、西江へ直接アプローチできるマリーナをはじめ、サービス・ビル、ハイエンド・レジデンシャル・ヴィラ群とそのサポート・インフラであるCIQPビル、ブリッジ、道路、外部周囲の堤などが含まれている。ここは中国における唯一初めての出入国管理事務所があるプライベート港である。
マリーナのクラブハウスは、ヨットや豪華な客船に乗っているような体験に似た雰囲気を醸すデザインとなっている。ひとつには忙しい日常生活から逃れ、静かさやリラクゼーションを楽しむことができるし、他方日常から離れ探求する機会をもつことで、エキサイティングな活動を展開することもできる。
マリーナ開発の中心的存在であるクラブハウスは、強かなアイデンティティを創造するコンセプトでつくられている。これはエントランスから川側に向けて、アイデンティティ・ポイントを演出することで達成されている。メイン・エントランスからブリッジを超えて、クラブハウスへの移行や、水辺や船を知覚する場所への移動は、期待感を募らせるようにデザインされている。
陸側からクラブハウスに近づくにつれて、彫刻的なランドスケープが次第に増強されてくる。他方、川側からは明快でオープンなファサードが輝く水面に影を落としながら船乗りたちを迎える。
建築の形態や周辺のランドスケープは、もっとも魅力的な景色が見える視認性と共に、クラブハウスへのメイン・アクセス・ルートを基礎にしてデザインされた。内部ではスムースに移動するために、空間は有機的な扇形となって外部に向けて放射状のプランになっている。扇形のデザインはさらにワイドな建物ファサードを形成し、マリーナのワイドな景色を取り込むことができる。また同時に、異なる利用者グループを速やかに彼らの目的地に案内することができるのだ。
建物周辺のランドスケープは、周辺環境の景観を尊重してデザインされた。近くに台地があり西江を望めるし、人々をシェンワンのランドスケープを観賞できるビュー・ポイントがある。建物はさらにこのマリーナの会員のプライバシーを侵害することなく、一般の人々にもこれらの景色をエンジョイさせることができる。
建物の最大の特徴は、建物の中を大きなオープンのファネル形(漏斗形)の空間が貫いているのだ。同時にそれがヴァーティカル・コネクションとしての階段室をも内包し、各レベル間の移動にも役立っている。このファネル空間は、建物というウォーターフロントへの障害物として通常考える概念を破って、内部空間をシームレスに移動することを可能にしている。それらはある場所から他の場所へと、建物のプログラムを干渉することなく歩いて通過可能なレベルを形成。そのためインテリア・スペースの組織構成には非常に有効である。
比較的暖かなシーズンには、ファネル空間は自然のクロス・ヴェンチレーションによって、空間を冷やす心地よいそよ風が流れる。自然光は大きなスカイライトから入り、東西側の開口部が居心地良いアトモスフィアを生み出し、光と影の戯れを常に演じている。これらの空間におけるウッド・パネルの仕上げは、近くに係留されている豪華なヨットを参照したものだ。
クラブハウスのファサードはブロンズ色をしたアルミ・パネルで構成されているが、これは現代のスピード・ボートやヨットの表層に使用されている色、材料、クラフトマンシップを暗示している。しばしば海軍の建築に使用されているブロンズの色合いは、クラブハウスにおけるフォルムの柔らかさと流麗さを高めている。
逆に川側の全ファサードはガラス張りで、そのため構造的サポートの見地からガラスの方立てが連続している。このファサードにはいくつかのバルコニーが配され、ビスタ・ポイントを提供すると同時に、ガラス開口部の日除けとなっている。屋根やバルコニーの軒裏はミラー仕上げとなっており、水面と同じような反射効果を出している。
海浜ライフスタイルの中心施設として、マリーナはビジネス、レジャー、健康などにおけるソーシャル・インターラクションの多種のアメニティを提供している。そのためクラブハウスには多数のレストランをはじめ、会員ルーム、スパ、ジム、カラオケ、ゲストルームなどが充実している。
Portrait: ©Els Zweerink
ベン・ファン・ベルケル/Ben van Berkel
1957年 | オランダのユトレヒト生まれ |
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1982年 | アムステルダム・リートフェルト・アカデミー卒業。 |
1983年 | アイリーン・グレイ賞 |
1987年 | ロンドンのAAスクール卒業(ザハ・ハディドに学ぶ)。 |
1987-88年 | チューリヒのサンティヤゴ・カラトラヴァ事務所勤務。 |
1988年 | アムステルダムにキャロライン・ボスとファン・ベルケル&ボス建築事務所開設。 |
1997年 | ドイツ建築家教会名誉会員 |
1998年 | ふたりでUNスタジオを別途設立。 |
2003年 | 1822美術賞 |
2007年 | チャールズ・ジェンクス賞 |
2013年 | AIA名誉会員 |
■主な作品に、カルボウ・オフィス、PEMU変電所、ピエトハイン・トンネル・ビル、エラスムス・ブリッジ、メビウス・ハウス、ヘット・ファルコフ美術館、エレクトリカル・サブステーション、イッセルシュタイン市庁舎、リビング・トモロウ、ニュートロン磁気共振施設、オフィス・ラデファンス、メルセデス・ベンツ博物館、プリンス・クラウス・ブリッジ、ヴィラ NM、アゴラ・シアター、スター・プレイス、デ・ストゥープ劇場、ライト・ハウス、青島園芸世界博覧会会場、新アーネム中央駅、ケッペル湾マリーナ & クラブハウスなどがある。
Photos: ©Tom Roe
Photos & Material: Courtesy of UN Studio
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