最終更新 2018/06/28 17:00
ブルックス+スカルパによる「南ユタ美術館」(SUMA)は、周囲を山々に囲まれた盆地のような静かな田舎にある。だが高さを抑えた白亜の長い建物は、直線と曲線が入り混じった造形が、巨大な彫刻のような迫力を滲ませて印象深い。
ブルックス+スカルパは、近くにあるブライス・キャニオンとシオン(英語発音=ザイオン)・マウンテン国立公園にあるドラマティックな形態を見せる砂岩の自然造形にインスパイアーされたという。実際にブライス・キャニオンとシオン・マウンテン公園の自然造形は奇妙な形で、世界的に知られている観光地でもある。
メインとなる建物の特徴は、キャニオン(峡谷)的な屋根形態だ。建物全体をカバーする大きな屋根は、さらに約550㎡もある外部のイベント・スペースをも覆っている。屋根の裏側、すなわち屋根に覆われたイベント空間は、巨大な恐竜の巨大な体の下側にいるような雰囲気だ。太くどっしりとした恐竜の足のような柱がコーナー側に立っている。
巨大なエントランス・キャノピーとも思えるこのスペースは、内・外部空間の境界を曖昧にする一方、社会的なアクティビティの場となり、種々の意見やアイディアの交換ができるカルチュラル・スペースでもある。
36mほどキャンティレバーで西側に延びた屋根は、カバーされた外部のソーシャル・スペースとして機能する一方、ガラス・ファサードに面する西面全域を直接的なソーラー・ゲイン(日射熱)やソーラー・グレア(眩しさ)から守っている。
この内部から外部への自由な動きは、レジャー的な雰囲気を醸している。他方影を生み出して内部のアート作品を保護しつつ、周辺山々のスペクタキュラーな景色をも取り込むという、巧みなデザイン処理が素晴らしい。
屋根は環境から広い外部スペースを守っているが、また雪解けの水や暴風雨のはけ口にもなっている。屋根の峡谷型の筋は両方向に傾斜しており、雨水を建物の両妻側壁面に流す。これはストリート側から見ることができ、壁面を流れ落ちた水は、ビルの地下に埋設された見えない井戸へと集められ、帯水層へとリチャージされる。外壁には砂岩によく見られる線条に似た襞をもつ青白いパネルが使用されている。
ここでのミュージアム・プログラムは、学生中心の体験的学習環境によって、ユタ州南部やコロラド高原周辺の視覚芸術作品を収集し、保存し、展示することである。美術館の展示や教育プログラムは、地域アート、文化、興味の対象をより大きな世界へとつなげる事で、メインとなる作品の範囲を拡大している。
アート&デザイン学部の学生や学科と舞台芸術&視覚芸術カレッジは、SUMAを利用してミュージアム・マネージメントや、保存やコレクションにおけるベストな実践的手法を学ぶことができる。
また美術館コンプレックスは、スカルプチャー・ガーデン、公園、ライブ・パフォーマンスやパブリック・アクティビティ用の外部空間をも含んでいる。公園のようなセッティングにより現地の植物が植え込まれ、ベンチでのんびりとリラックスしたり、果ては300人規模の即興的集会も可能である。
「南ユタ美術館」は、セダー・シティにある南ユタ大学キャンパスの「ビバリー・テイラー・ソーレンソン芸術センター」の一部として完成したものである。5.5エーカーのマスタープラン・コンプレックスが、セダー・シティのダウンタウンと南ユタ大学キャンパスをリンクしている
アンジェラ・ブルックス
ローレンス・スカルパ
1987年 | ローレンス・スカルパとアンジェラ・ブルックス結婚 |
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1999年 | ピュー+スカルパをロサンゼルスに設立 |
2003年 | AIAトップ・テン・グリーン・ビル賞 |
2003年 | ブルーナー賞 |
2003年 | レコード・インテリアズ賞 |
2004年 | アーキテクチュア・リーグ・エマージング・ヴォイス建築賞 |
2005年 | レコード・ハウジス |
2006年 | AIAトップ・テン・グリーン・ビル賞 |
2009年 | 『インテリア・デザイン』誌生涯業績賞 |
2010年 | ブルックス+スカルパに改組 |
2010年 | AIAナショナル建築賞 |
1964年生まれ
1987年 | フロリダ大学建築学科卒業 |
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1991年 | 南カリフォルニア大学建築学科大学院修士課程修了 |
1959年 ニューヨーク生まれ
1981年 | フロリダ大学建築学科卒業 |
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1987年 | フロリダ大学建築学科大学院修士課程修了 |
主な作品(ピュー+スカルパ時代の作品も含む)には、サンタモニカ・カレッジ、 LATTCスポーツ・センター、ミル・アーツー・センター、サンタモニカ・パーキング・ガレージ、フラー・ロフト、ジグゾー、ナセント・テレイン、クリエイティブ・ドメイン、CoOPエディトリアル、ソーラー・アンブレラ・ハウス、ユーベット・ドット・コム、アブソリュート・ディヴァ、バーガモット・アーティスト・ロフト、リアクター・フィルムズ、クリック 3X LA, デクトール・フィルムズ、チェロキー・ミクストユース・ロフト、コロラド・コート、ザ・シックス集合住宅、南ユタ美術館など多数。
Photos: ©Ale Scarpa, ©Brooks Scarpa, ©Tim Hursley, ©Alan Blakely, ©Dana Sohm
Material: Courtesy of Brooks +Scarpa
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