最終更新 2016/11/04 10:00
スイス連邦工科大学ローザンヌ校というと、SANAAの名作「ローレックス・ラーニング・センター」を思い出す。ドミニク・ペローの「メカニクス・ホール」は、ちょうど「ラーニング・センター」の前に建っている。低く優美にうねる有機的なSANAA作品に対して、スティール製のメカニカルな装いで控えるペロー作品は好対照をなしている。
ドミニク・ペローは「メカニクス・ホール」を2011年の国際コンペで勝利。この計画は古いホールを取り壊し、キャンパスへのブリッジ役をしていた接続軸を温存して「メカニクス・ホール」を新設するものであった。
延床面積19,000㎡に及ぶ建物は、4層のスーパーストラクチュアと1層のインフラストラクチュア・レベルを有している。内部にはエンジニアリング学部の管理オフィスをはじめ、研究実験室群、および生物学部のオフィス・スペースを内包。
研究科学者用の大規模な実験場と研究室である建物は、大きな中央アトリウムによってふたつの棟が連結されている。機能的に言えば、ふたつの棟はそれ自身の技術的・サーキュレーション的ネットワークをもつ別々の2棟と考えられる。
2棟の分割はオリジナルのグリッドを尊重したもので、他方空間の細分化とダブル・ハイトをもたらしている。RC造の躯体は、メタル壁+セメント&PVCフロアで、仕上げは白黒のカラーリングを光沢とマットに塗り分けている。
オパークの壁面とガラス・スクリーンがパースペクティブを生み出し建物に深度を与え、廊下を歩くと初めてのオリジナル体験のような印象を受ける。天井や壁面の明快なスーパーグラフィックにより、建物内への目的地には容易に到達できる。
個々のオフィスはペリフェラル部分に配置。オフィスは広く、ベイ・ウインドウによって外部にワイドに開かれている。そのため程よく抑えられた自然光が内部のワーク・スペースを満たす。居心地よく、明るく、広い部屋はリサーチ・ワークという長時間の仕事には打ってつけである。
建物中心部のアトリウムは、レセプションやソーシャル・エリアとして使用。吹抜けた大ヴォイド空間を飛び交い輻輳する階段群が、正にピラネージの「牢獄」的世界を演出している。白い空間に、黒い手摺ややはり黒いチューブ状の照明器具が錯綜するヴォイド空間を彩っている。
メカニカル・ファサードは建物の南面、東面、西面を覆っている。組立前に工場でつくられたモジュールの形と大きさは、EPFLの歴史的なマスタープランによって決定された。個々のモジュールは、ふたつのスーパーインポーズされた層で構成されている。内側のスキンは温度や騒音を遮断し、外側のスキンは太陽光を遮断する。それはドミニク・ペロー事務所の「フランス国立図書館」で使用された高品質のメタリック・メッシュを装備したフレームで構成されている。
ひとつのモジュールは3つの垂直パネルで構成され、そのうちの2つはスライドし、他は固定されている。スライディング・モジュールはガラス・パネルの前面で展開し、もうひとつはガラスにスーパーインポーズされている。
スライド・パネルは普段はビル自動システムによって可動するが、手動での操作も可能だ。3番目のモジュールは、オパーク色のファサード・パネルに固定されている。グレーの陰影が付いたメタリック・メッシュ・パネルは、ファサードの垂直面から5度傾斜。この傾斜パネル群の並置は編み目のパターンのように見える。
科学が新しい「メカニクス・ホール」のエッセンスだ。工業製品やデータ・プロセッシング技術を用いつつ、他方オリジナル・マスタープランによる動線ネットワークや構造グリッドを継承した「メカニクス・ホール」は、EPFLキャンパスの歴史における新しい科学の殿堂だ。
Portrait: ©Domus-China
1953年 | フランス、クレルモン・フェラン生まれ |
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1978年 | 第6建築大学卒業 |
1979年 | エコール・デ・ポンゼショセ(国立土木大学)卒業 |
1980年 | 国立高等社会大学大学院修了 |
1981年 | ドミニク・ペロー事務所設立 |
1982-84年 | パリ市と誌計画研究所勤務 |
1993年 | フランス建築グランプリ |
1997年 | ミース・ファン・デル・ローエ賞 |
1998-2001年 | フランス建築家協会会長 |
2001年 | ワールド・アーキテクチュア賞 |
2002年 | BTVバウエレンプライス賞 |
2006年 | ニュー・アルペン建築賞、デダロ・ミノッセ国際賞 |
2010年 | 建築アカデミー・ゴールドメダル |
2013年 | レジオン・ドヌール賞 |
2015年 | 高松宮殿下記念世界文化賞 |
主な代表作に、ユジノール・サシロール会議場、ベルリエール工業館、コロニーハーフェン、イヴリ・シュル・セーヌ浄水場、図書技術センター、フランス国立図書館、オリンピック・ヴェロドローム&水泳競技場、アプリックス工場、ルーシー・オブラ・メディアテーク、プライス・スーパーマーケット、インスブルック市庁舎、ヴィラ・ワン、バタフライ・パビリオン、梨花女子大学キャンパス・センター、ヨーロッパ連合(EU)裁判所、スカイ・ホテル、NHフィエラミラノ・ホテル、プライオリー公園パビリオン、3星&4星ホテル、マジック・ボックス、オリンピック・テニス・センター、MEバルセロナ・ホテル、ピアッツァ・ガルバルディ、スイス連邦工科大学ローザンヌ校ニュー・メカニクス・ホールなど。
Photos and Material: Courtesy of Dominique Perrault Architecture
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