世界の建築は今 No.117

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

プロフィール バックナンバー

最終更新 2015/07/02 10:00

The Library of Birmingham (Birmingham, UK)

バーミンガム図書館(イギリス、バーミンガム)

Design: Francine Houben/ Mecanoo
設計:フランシーヌ・ホウベン/メカノー


金銀の透かし細工をまとった華麗な図書館

イギリスのバーミンガムと聞いてその位置的イメージや街の感じがわかる人は少ない。建築的なことでいえば、かつてフューチュア・システムズのヤン・カプリッキーが「セルフリッジス・バーミンガム」という外壁に無数の円盤を装着した異形のデパートをデザインしている。そこにメカノーの「バーミンガム図書館」が登場した。

周知のようにオランダの建築家集団メカノーはフランシーヌ・ホウベン女史が率いる同国を代表する建築家チームのひとつ。「バーミンガム図書館」は彼女の女性らしさが表現されたデザインとして評判だ。外壁を覆う大小のゴールドやシルバーのメタル・リングが華やかで目を引く。この華麗なデザインはいやがおうにも目に付くし、ここまで徹底するのは大胆この上ない。

外壁のパターンはこのエリアがジュエリー・ビジネス地区で、そこから繊細な金銀のフィルグリー(透かし細工)を考案したという。女性感覚が見事に建物の魅力を引き上げた例だ。これはフューチュア・システムズの「セルフリッジス・バーミンガム」のアルミ円盤と同じように、小さなエレメントを無数集めて外壁を覆ったデザインだが、その印象は全く異なっている。

ホウベン氏は「光がたくさん欲しかったので、煉瓦積みの建物はつくりたくなかった。といってガラス張りだけのビルも嫌でした。内部に座っていると自然光の輝きと陰影、さらに天候の変化で光が非常にきれいに見えます。12月から6月は特に変化に富んでいます。」

35,000㎡の建物はヨーロッパ最大の図書館で、完成後1年で270万人以上の入場者があったほどの人気スポットだ。建物は市の中心部にある100年広場に面している。そのためメカノーは広場を円形に掘り込んでアンフィ・シアターをつくり、地下レベルで建物とつないでアウトドア・パブリック・スペースをつくっている。

地下1階地上10階ほどの建物は、地下地上とも複雑な内部空間で構成されている。まず1階と地階周りには多数の機能がひしめくために、たくさんのグラウンド・フロアが必要であった。そこでまず、中地階、中中地階が取られ、それらが緩やかに傾斜したテラス群としてつくられ連続的につながれている。こうしてビジターはフロント側から建物後部側へスロープで下り、さらにフィクション・エリアに下り、それから子供図書館、ミュージック・セクションへと下り、アンフィ・シアターに到着する。

逆に上階へは複雑な形態をしたロトンダ空間が全館を貫いており、その中をエスカレーターが上昇している。各階のロトンダ形は同じではなく大きさは異なり、しかも中心軸をずれて積層化されているので、非常に変化に富んだ垂直空間が構成されている。ここは自然光に溢れ、またナチュラル・ヴェンチレーションが徹底している。

「バーミンガム図書館」は1930年代のビルと1969年代の「レパートリー・シアター」に挟まれており、外観は4つの矩形のヴォリュームがずれて層状化されている。それにより、種々のキャンティレバーによるキャノピーやテラスが生まれている。特に2階のキャンティレバーのヴォリュームはエントランスのシェルターになるのみならず、ディスカバリー・ガーデンのあるグランド・バルコニーとして機能している。

植物が繁茂する二つのルーフトップ・テラスは、ビジターが外部で読書をしたり、勉強をするためのアウトドア・スタディの役目を果たしている。さらに最上階の円形ドームには、長年各所を渡り歩いて来たシェイクスピア・メモリアル・ルームが収容された。

無数の文化的機能が詰め込まれた「バーミンガム図書館」を、単なる図書館と呼ぶには異論があるだろう。それをクリスティーヌ・ホウベン氏は、「この公共ビルは市民コミュニティにとっては重要なランドマークであり、今の時代図書館は中世のカテドラルと同様、都市における最も重要なパブリック・ビルディングではないか」と結んでいる。


[図 面]

 

[建築家]


©Marco van Rijt

■フランシーヌ・ホウベン略歴
1955年 オランダ生まれ
1984年 デルフト工科大学卒業。この年同大学の卒業生5人が集合住宅コンペに勝利したことを機にロッテルダムにメカノーを設立。現在はフランシーヌ・ホウベン女史が主宰。
1999年 デルフト工科大学教授に就任。
2000-01年 イタリアのスヴィッツェラ大学の建築&動態美学教授。スイス建築アデミー教授。
2001年 RIBA名誉会員。
2002年 第1回ロッテルダム国際建築ビエンナーレ2003のディレクター。
2002-06年 アルメレ市建築家。
2003-05年 ロンドン国際デザイン・コミッティー・メンバー。
2007年 アメリカ建築家協会名誉会員、王立カナダ建築家協会名誉会員。
2007年- ハーヴァード大学客員教授。
2008年- ヴーヴクリコ・ビジネス・ウーマン賞受賞。
2010年 シカゴ・アセナウム・ヨーロッパ・グリーン・グッド・デザイン賞
2011年 デダロ・ミノッセ国際賞
2012年 デイライト賞、国際デザイン賞

 
■代表作

主な作品に、ヘルデンキングスプレイン集合住宅、デルフト工科大学図書館、ユトレヒト大学経営・経済学部棟、セントローレンス墓地チャペル、国立遺産博物館、カナダプレイン文化センター、フィリップス・ビジネス・イノヴェイション・センター、モンテヴィデオ、ディジタル・ポート・ロッテルダム、ニュー・エルブレッゲ、オフィサーズ・ホテル・デ・シタデル、ラロンハ劇場&会議センター、エチオピア・ドイツ大使館、カープ・スキル海洋&漂着物博物館、デルフト市役所&デルフト駅、ブルースC.ボーリング市民ビルなど多数。

Material : Courtesy of Mecanoo


Cookie(クッキー)
当社のウェブサイトは、利便性、品質維持・向上を目的に、Cookie を使用しております。詳しくはクッキー使用についてをご覧ください。
Cookie の利用に同意頂ける場合は、「同意する」ボタンを押してください。同意頂けない場合は、ブラウザを閉じて閲覧を中止してください。