最終更新 2015/05/08 18:00
近年、アジアの高層住宅タワー群は、かなり顕著な変貌を遂げてきたといえそうだ。特に土地の広くないシンガポールでは、高密度の高層集合住宅群は他の国のそれをはるかに凌駕する勢いだし、そのデザインも断突の先進性を見せている。もはや多くのアジアのスカイラインを構成してきた複製化されたようなマスプロ的集合住宅タワーでなく、オーダー・メイドのタワー群が櫛比する美学的で非凡なシルエットを呈している。
実際にダニエル・リベスキンド設計の「レフレクションズ・アット・ケッペル・ベイ」を筆頭に、ザハ・ハディドの「ドリードン・コンドミニアム」、OMAの「ザ・インターレイス」など、世界のスーパー・スター建築家がデザインした作品は、居心地の良いリビング・スペース、魅力的なランドスケープされたガーデン、快適なアメニティの数々をシンガポールのアーバンスケープに現出させている。新たにそこに参入したのが、ベン・ファン・ベルケルの「アルドモア・レジデンス」だ。
建物はシンガポールのアルドモア・パーク7番地にある新しいタイプのコンドミニアム・タワー。近くに有名なオーチャード・ストリートという高級ショッピング街を擁する一等地にある。ここからはシンガポールのパノラミックな市街地を一望の下に納め、また建物の東西側に展開する広大なグリーンをエンジョイすることができる。
建物は36階建て、延床面積17,178㎡の高層集合住宅タワー。 基本コンセプトは、シンガポール固有のガーデン・シティという自然のランドスケープに対応した、多層の建築コンセプトだ。このランドスケープ・コンセプトは4つの大きなデザイン・ディテールによって、建物にインテグレートされている。
そのひとつはファサードを分節することによって、多種のオーガニックなテクスチャーやパターンを外観に表現させている。またシンガポール市街に向けてのワイドなビューが、大きなガラス・エリアをはじめ、ベイ・ウィンドウやダブル・ハイト・バルコニーなどからエンジョイできる。
さらにインテリアのリビング・ランドスケープ・コンセプトを採用し、2タイプのアパートメントが設計されている。またオープン・フレーム構造で支持された高架ストラクチュアによって、地表レベルのガーデンへのヴィジュアルな透明性や接続性が導入されている。
「アルドモア・レジデンス」のファサードは、マイクロ・デザインの特徴から派生している。つまりベイ・ウィンドウやバルコニーをひとつの連続的なラインとして構成しているのだ。ファサード・パターンは4階ごとに繰り返されており、他方曲面ガラス部分は、視覚的にインテリア・スペースと外部バルコニーを融合させている。
建物は絡み合うラインとサーフェスによって包み込まれ、シームレスにサン・スクリーンが合体されている。またアパートメントおける内部空間のクオリティとその外観フォルムは、見事に一致して、一つの統合された全体を構成している。
「アルドモア・レジデンス」は、”リビング・ランドスケープ”のアイディアが具体化されている。機能空間群は見直しが計られ、リビング・ランドスケープ・コンセプトが組み込まれて、住人のために万能的な機能性を発揮できるようになっている。
インドア&アウトドア・リビング体験の素晴らしさは、各住戸において大きな開口部とダブル・ハイトのバルコニーによって実現されている。高度にテクスチュラルなファサードからは建物組織と個々のアパートメントが一体となって多くの昼光を取り込み、シンガポール市街のパノラミック・ビューをエンジョイできる。
ベン・ファン・ベルケル
Courtesy of UN Studio
1957年 | オランダのユトレヒト生まれ。 |
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1982年 | アムステルダム・リートフェルト・アカデミー卒業。 |
1983年 | アイリーン・グレイ賞 |
1987年 | ロンドンのAAスクール卒業(ザハ・ハディドに学ぶ)。 |
1987-88年 | チューリヒのサンティヤゴ・カラトラヴァ事務所勤務。1988年 アムステルダムにキャロライン・ボスとファン・ベルケル&ボス建築事務所開設。 |
1997年 | ドイツ建築家教会名誉会員 |
1998年 | ふたりでUNスタジオを別途設立。 |
2003年 | 1822美術賞 |
2007年 | チャールズ・ジェンクス賞 |
2013年 | AIA名誉会員 |
キャロライン・ボス
Courtesy of UN Studio
1959年 | オランダのロッテルダム生まれ。ロンドンのバーベック・カレッジで美術史を専攻。 |
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1988年 | アムステルダムにベン・ファン・ベルケルのファン・ベルケル&ボス建築事務所開設。 |
1998年 | ふたりでUNスタジオを別途設立。 |
2012年 | メルボルン大学名誉教授 |
主な作品に、カルボウ・オフィス、PEMU変電所、ピエトハイン・トンネル・ビル、エラスムス・ブリッジ、メビウス・ハウス、ヘット・ファルコフ美術館、エレクトリカル・サブステーション、イッセルシュタイン市庁舎、リビング・トモロウ、ニュートロン磁気共振施設、オフィス・ラデファンス、メルセデス・ベンツ博物館、プリンス・クラウス・ブリッジ、ヴィラ NM、アゴラ・シアター、スター・プレイス、デ・ストゥープ劇場、ライト・ハウス、青島園芸世界博覧会会場など多数。
Photos & Material: Courtesy of UN Studio
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