[ヴェネチア、イタリア、2021年]
1914年の開館したパヴィリオンの改修とそのストーリーを展示し、第17回 ヴェネチア・ビエンナーレ 国際建築展「特別表彰」を受賞した作品。ホワイトボックスが流行っていた美術品のモノ先行の空間を、ヒト中心へと施設自体の解釈を変えていくべきと、ここをロシア人にとっての「ダーチャ」(菜園付きセカンドハウス)のような場にして行けたら良いのではと考えたそうだ。ロシアでは都市の家とそこから1時間くらいの所に「ダーチャ」を持ち行き来し、都市に住んでいる時にも田舎を思いながら生活をしているので、ヴェネチアのロシア館自体がロシア国民にとっての「ダーチャ」となる、人々をもてなして議論するような場所を目指し改修したプロジェクト。ビエンナーレでの展示物としてつくられた絵本『Traces』と写真や図版をまとめた著作『The Russian Pavilion in Venice Giardini』がロシアの出版社TaTALINから出版されている。
何か壊れたものを直す時に、元通りにしようと復元して直すのではなく、そこにあるものを注意深く観察し、金継ぎするように新しい価値を見出し更なる意味を与えていくのかが重要だった。「審査委員長だった妹島和世さんをご案内した際に、『天窓からの自然光に溢れる明るい吹き抜けがファサードに面したことで、内部と外部が連続し、建築の印象だけでなく、ジャルディーニ公園の正門から続くメインストリート自体が今回2021年の改修によって明るくなった。』とおっしゃってくださった。建築を点で考えるのではなく、ある部分を変えることで何か他との関係性が変わったり、それ自体が「繕っていく」感覚なんだということを得れたと思います。」と佐藤さんは話す。
レンガ組積造 地上2階(改修)/建築面積:326㎡/延床面積:625㎡
写真:Marco Cappelletti(1枚目、6枚目) / KASA
https://www.axismag.jp/posts/2021/04/361664.html
https://pavilionrus.com/en/projects/kasa-kovaleva-and-sato-architects-9
https://www.labiennale.org/en/news/awards-17th-international-architecture-exhibition
[三重県桑名市、2023年ー]
20年前から区画整備が始まった、三重県桑名市の桑名駅の目抜きの通りに面する敷地に計画する佐藤さんのご実家の住宅プロジェクト。この一画すべてが玉突き式で開発される予定で、区画整理は住人が退いた敷地から整備されていくので、部分的に小さな家が残っていたり、アパートが建った場所もある。ここは容積率500%、建坪率が80%の商業地域だが、誰もこの街の方向性を見出せず、街の雰囲気がどうなるか分からず、家を置換して移動先に同じ大きさの建物を建てるか駐車場にしている。桑名はまだ緑が残っている所もあり、駅前の立地で田舎の暮らしを皆が感じられる場所にできればと、昔の民家や田舎の暮らしや都市の成立の過程等をリサーチし、大通り沿いにある約500㎡の敷地に、庭を大きく取った境界のような住宅を計画した。境界はフィルターのような役割で、街と庭を繋げたり隔たり、伸び縮みしながら大きく暮らす住まい方を提示している。
今回計画する土地の周辺がどういう場所になるのかわからない中で、街と庭と敷地の関係性(道を歩いていると建物があり、その奥に庭があり、そこでは色々な農作物を育てている。都心の駅前の通りだけどそんな別世界がある)をまずは示してみることが重要で、周囲の住民が自分たちの形式を参考に家を建てていったら、建物・庭、建物・庭と広がり、街自体の雰囲気を共有できるのではと考えているそうだ。都市と家の関係性や、普遍的な部分の型/形式を形影することが緩やかにマスタープランを描く事が重要なのだと言う。今年のU-35 (2023年10月20日〜30日)でこの作品出展しており、審査員や来場者の人たちと会場でエスキスをして、それをまとめ着工に向けて進める。進行中のプロジェクトに連結できるので最終的にどのような形になるかが楽しみだ。
[香川県伊吹島、2022年]
瀬戸内国際芸術祭2022の秋会期に旧伊吹小学校の空教室を敷地に製作したインスタレーション。通常、空き地が増えていくと寂しくなる印象があるが、伊吹島の場合は島のおばあちゃんたちが空き地に自分たちで花を植えて庭を作っており、空き地が増えていくことでだんだん庭が広がって凄く美しい風景が次々に生まれていく。島の庭は、そんな風景を庭で使う園芸用の金網のようなものと島の水に関するものを集めて使用して再現している。海の庭は、漁網を使った借景的な庭で奥に見える瀬戸内海を引き込んでいくよう幾層にも重ねた。この島では「いりこ」というカタクチイワシが日本一の生産地でサワラも有名で、サワラの網といりこの小さい細かい網が港にいくとたくさん捨てられているので、それらをもらってきて作った。部分的にほつれてしまっていたり直した跡があり、最初はない方が良いと思ったそうだが、そのまま使ってみると潮目や船が動いているように見えたり、ほつれているところが波に見え、自分たちで新しく作ったらできない表情が生まれて逆に海らしさが生まれた。
魚網 / 亀甲金網 プロジェクト面積:90㎡ / 270㎡ /インスタレーション
写真:KASA
https://setouchi-artfest.jp/artworks-artists/artworks/ibukijima/428.html
[東京都港区、2003年]
東京ミッドタウンの青々しいガーデンに大きな絨毯を浮かべるようにやわらかな図形を描き「風の庭」と名付けました。波紋のようにリズムよく繰り返される正円による幾何学模様は、眺める場所によってその姿を変えうまく形を掴めません。1つ1つを覗き込むと周辺を映し込んだ小さな風景が揺らぎその輪郭をぼかします。些細なものが集まり大きな風景をつくる。それは私たちが暮らすこの地球に対しても同じことなのかなとも思ったりします。
プロジェクト面積:1,000㎡
写真:KASA
【期間】 2023年10月6日(金)~10月29日(日)
【時間】 11:00~17:30(予定)
【場所】 ミッドタウン・ガーデン
https://www.tokyo-midtown.com/jp/event/designtouch/windgarden.html
人々に建築をもっと近づける事、それが私たちの関心の根底にあります。
なんともないカップを金継ぎで直したとたん、それがとても愛着のあるものに生まれ変わるような感覚。そんな風な距離で建築と向き合えたら、建築だけでなく街や都市や環境はずっとよくなっていくように思います。
何かを" つくる" 事を、何かを" 繕う" 事と捉えてみる。
そうすると建築をつくる事は街を繕う事になるし、街をつくる事は環境を繕う事になったりします。つくるという単体要素から脱却。循環の中でものをつくる事。それが繕う事の先にあります。
ろくろの前に座り土をこねるのではなく、バラバラのセラミックの欠片を注意深く観察し、どのように美しく再構築するのか。そういった態度を目指しています。
建築や街や都市や環境が、今よりもずっと愛おしい存在になるような世界です。
https://www.kovalevasato.com/
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