KENCHIKU世界/地域に根ざした建築家

shushi architects/吉田周一郎、石川静 |徳島県神山町|建築をまるごと考える(2/2)

文・写真(明記以外):北澤 愛

プロフィール バックナンバー

神山まるごと高専の仕組みや運営について *1

「学校を作れないか」とSansan株式会社の寺田親弘社長の思いから始まったこの学校は、寄付金で作られている。定められた資金を確保しないと文科省から認可が降りないという中、寺田社長の寄付を筆頭に、開校資金の寄付集めは大変で、企業版ふるさと納税(寄附受入額は全国で第3位)や、クラウドファウンディング(「Makuake Of The Year GOLD賞」)も募ったそうだ。そして注目すべきは、経済状況に左右されない学校を目指し、奨学金基金に拠出および寄付を行う11社の民間企業(スカラーシップパートナー)が決定し、全学生を対象に学費の無償化が実現したことだ。結果、40都道府県と海外からの応募で倍率は約9倍だった。今年入学した一期生は44名。5年後が楽しみだ。

 

森のサウナ*2

[徳島県神山町、2019年]

神山で、家に帰るように寄っていたレストラン「カフェ・オニヴァ」のオーナーから、古民家を買ったら杉で鬱蒼とした山がついてきたので、この杉の間伐材を薪として焚き、滝壺を水風呂にするサウナを建てたいという依頼を受けた。オーナーとサウナ作りの勉強の為にバルト三国へ行くところから始めたそうだ。まず整地をして道を作り、皆で製材所で製材の作業したり、ガラスも担いではめた。道路側からすぐだったこともあり、基礎のコンクリートを打つ時もバケツリレーで運ぶなど、ほとんどDIYで完成に2年以上かかった作品である。

 

木造 地上1階/敷地面積:6520㎡/建築面積:9.59㎡/延床面積 8.79㎡
写真:鈴木久雄
https://shushi.tokyo/817/

 

 

Sansan 神山ラボ OMOYA*3

[徳島県神山町、2019年]

「森のサウナ」のオーナーがSansan株式会社のSansan神山ラボに紹介してくれた縁で手がけた作品。ここはSansan株式会社のサテライトオフィスとして、すでにNAYAとKOYAは整備されていた。主に社員が利用する宿泊・研修棟を使い勝手よくしたいという要望があり、中庭に開くよう、また他の2棟と繋がるように部屋の役割交換を行い、新古の調和をとりつつ古民家の良さを十分に引き出すリノベーションした。

 

地上2階(改修)/敷地面積:953㎡/建築面積:126㎡/延床面積 155㎡
写真:鈴木久雄
https://shushi.tokyo/1019/

 

シモノロ・パーマネント

[徳島県三好市、2018年]

徳島の三好市と香川県との県境にある下野呂内集落の廃校になった小学校のリノベーション。オーナーは、廃校を引き継ぐ事業者を募集するプロジェクトに応募して事業が上手く行き、二号店の依頼を受けた。ここではショップ、カフェ、パティシエ教室、食堂、保育教室が入るように再生し、大自然と昔ながらの木造校舎を活かして実験的、持続的な暮らしを試みる場を作っている。

このプロジェクトをやりながら、「森のサウナ」ができて、「Sansan 神山ラボ OMOYA」に続き、「神山まるごと高専」につながった。

 

木造 地上1階(改修)/延床面積 311㎡
写真:shushi architects
https://shushi.tokyo/785

 

 

池袋西口公園 GLOBAL RING

[東京都豊島区、2019年]

石川さんが独立される前に在職していた三菱地所設計時代にランドスケープデザイナーの平賀達也さんとともにコンペで勝ち取った、1990年に東京芸術劇場と一体的に整備された池袋西口公園の改修計画。小さくてもコンセプトがぎゅっと詰まった建築をつくることで、広場空間を最大限に生かし、クラシックコンサートもできる屋外舞台と、都心防火地域に小さな木造のカフェを作った。shushi architectsのコンセプトの原点となるようなプロジェクトでもある。

 

舞台棟:S造一部RC造 地上2階、地下1階、延床面積:633㎡/カフェ棟 木造 地上1階、パーゴラ(工作物)S造、延床面積:99㎡/敷地面積:3,123㎡
写真:藤井浩司/ナカサアンドパートナーズ

 

 

 

吉田周一郎、石川静/shushi architects

吉田周一郎さん、石川静さん

吉田周一郎さんからのメッセージ

日本で設計の経験を積み、スペインの建築家RCRアーキテクツで働きながら、ピレネー山麓の街でしばらく暮らしました。帰国し独立してからは、自然環境豊かな場所や時を経て更新し続ける設計の仕事が、自然に増えていきました。「神山まるごと高専」は学校つくりという点では新たなチャレンジであると同時に、これまでに積重ねてきたことの時間軸上にも位置しています。shushi architectsとして世界中の人が時間をかけて築いてきた建築・生活環境に、もう一つ新たな層を塗り重ねていくようなもの創りを心掛けています。

石川静さんからのメッセージ

新卒以来、組織設計事務所に勤務して来ました。施主に近い会社であったこともあり、「プロジェクトをゼロから考える」機会に恵まれました。「神山まるごと高専」もゼロから学校をつくるプロジェクトでしたが、これを機に独立し、夫を支えながらshushi architectsとして活動することにしました。今後も「ゼロから考える建築」を軸に、種子のように小さくとも、魅力的で人々を豊かにするような建築空間づくりを目指すとともに、アートや家具など建築周辺領域にも活動を広げたいと思っています。

 

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