レポート

豊田市美術館『久門剛史 らせんの練習』展 レポート

文・写真:柴田直美

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2020年3月20日に豊田市美術館にて『久門剛史 らせんの練習』展が始まった。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言の発出を受けて豊田市美術館は、4月10日から臨時休館していたが、5月19日に開館した。それに伴い、『久門剛史 らせんの練習』展は会期終了日が伸びて、9月22日になった。

本展を鑑賞したのは3月20日。迫り来るコロナウイルスの脅威を感じながら、展示からも切実さを感じ取り、気持ちが落ち込みそうなところが、なぜか救われた気持ちで会場を後にした。それはひとりひとりの小さな命が全肯定されていると感じたからではないかと浮かんだ。

 

 

京都市立芸術大学で彫刻を学んだ久門氏は「彫刻的な視点でみることを大学で学んだ」という。それは例えば、「螺旋は真上から見ると円だが、横から見ると上昇している」と言うように、見方を変えることで見えるものが違うと言う視点と言えるだろう。

 

 

展覧会場で聞こえる作品の音は、かすかで不穏ですらある。紙が落ちるカサッという乾いた音、ピンクノイズ(周波数に反比例し、高い周波数の音ほど弱くなる雑音で、人をリラックスさせる効果があると言われる1/fゆらぎを持つノイズ)、《Pause》(2020年)の踏切の遮断音、テレビのカラーバーの音、かすかに聞こえる時計が時を刻む音、余韻が残る水滴の音など。その不穏さの中で見る、自然光の穏やかさに息をのむ。

 

 

2018年7月から2019年6月まで行われていた改修工事中に視察に来たと言う久門氏は、がらんどうの展示室を見て、「この空間を最大限に活かしたい」と思ったそうだ。何かが繰り返し繰り返し起こっている空間で、もしかしたら何かがちょっとずつずれていって、いつか作品としても意図していない何か違うことが起きるのではないか、空間自体が有機体であるかのような錯覚を覚えた。

 

 

チラシのビジュアルにもなっている《crossfades #1》に書かれている円周率の数字は0.2mmという小ささで、近づいて片目でルーペ越しに見ないとそこに書かれた文字が見えてこない。その行為を久門氏は「知覚の解像度を上げる」と表現する。Quantize(量子化=アナログ信号などの連続量を整数などの離散値で近似的に表現すること/電子音楽の制作における補正機能の名称)される社会でこぼれ落ちてしまうもの、視点を変えないと見えてこないもの、目を凝らす・耳を澄ますことで見つけられるもの、そういった微かなものに気がつくことで、自分以外の他者や社会の見え方が変わるだろう。

 

 

久門剛史―らせんの練習

会場:豊田市美術館(愛知県豊田市小坂本町8-5-1)

会期:2020年3月20日~9月22日

開館時間:10:00~17:30(入館は17:00まで)

休館日:月曜日、6月22日〜7月17日

観覧料:一般 1,000円/高校・大学生 800円/中学生以下無料

公式ウェブサイト:http://www.museum.toyota.aichi.jp