レポート

ミラノデザインウィークレポート

文・写真:柴田直美

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世界最大規模のデザインの祭典と言われる「ミラノサローネ(ミラノサローネ国際家具見本市などを含むイベントの通称)」が今年も4月14日〜19日(※一般来場者は18日、19日のみ)まで開催された。ミラノ郊外の見本市会場「ロー・フィエラミラノ」(マッシミリアーノ・フクサス設計)を会場とし、幅0.57km、奥行き12km、展示面積約21万㎡(東京ビックサイトの全館展示面積の約3倍)に、世界の家具メーカーが出展する。VitraやMagisといったおなじみのデザイン家具を扱う会社はトップデザイナーたちのプロダクトを趣向を凝らした会場構成で見せることでも注目される。今年のVitraのブースは長坂常氏(スキーマ建築計画)が会場構成を手がけた。会場が広すぎて全部を見ることはほとんど不可能だとしても、サローネ・サテリテという若手デザイナーたちの展示は見逃せないと多くの人が訪れ、ここから多くのデザイナーが見出されることでも知られる。

B to Bの意味合いが強く、出展に際しそれなりの費用を要するミラノサローネの期間に合わせて、ミラノ市内で展開されるフオーリ・サローネ(主催:インテルニ(イタリアのデザイン雑誌)があり、こちらは企業や大学などが自由な表現をして、街を賑わせる。トルトーナ地区、ブレラ地区、ヴェンチューラ・ランブラーテ地区、ミラノ大学周辺、トリエンナーレ美術館といくつかのエリアごとにまとまった地図やフリーペーパーを作っている。フォーリ・サローネに登録し、会場になっているところには、バナーが貸与され、人々はこれを頼りに街の中を歩きまわる。またフォーリ・サローネにも登録せずに独自に展示をしているギャラリーや団体もあり、街はインテルニが無料で配布する出展者一覧の冊子と地図を片手に歩き回るデザイン関係者でふくれあがる。ミラノ大学やトリエンナーレ会場など夜遅くまで開いている会場もあり、朝から夜までデザイン漬け。近年はインテルニが提供するアプリが無料でダウンロードできるようになり、オフラインでも地図を見ることができ、便利である。

スーパースタジオピュー(トルトーナ地区)

日本企業ではアイシン精機とAGCが出展していたスーパースタジオピューは、トルトーナ地区の中心的存在。一般公開の週末にはあまりの人の多さに入場規制もあったが、期間中に115.000人(2.000人のジャーナリスト)が来場したと発表があった。

トルトーナ地区

以前は若いデザイナーがプロットタイプを発表するようなエリアであったが、近年はLexus, miniなどの世界的企業、またはMoooiといったインテリアデザイン界のトップブランドも展示する、ミラノデザインウィークでもっとも活気があるエリア。

ミラノ大学

24:00まで開いているので、ライトアップされている作品が多い。入口付近は路上パーティの様相を呈し、道路はビール瓶の破片が散乱している。大きな中庭も使った会場はかなり広く、今年はEnergy for Creativityと題して、隈研吾やダニエル・リベスキンドも展示に参加。

ロザンナ・オルランディ

ミラノデザインウィークでなくても、ミラノに行ったら、ここは必見。オルランディ氏が選び抜いたものがところ狭しを置いてある。

ガルバルディ地区

大きな会場があるわけではないが、モスコーヴァ駅を降りてすぐに案内のスタンドが出ていて、地図を配っている。地下鉄をあがると方向感覚を失っていることがあるので、とても助かる。

ポルタヴェネチア地区

今回、ミラノ・マルペンサ空港に着いて壁面を見るとfabbrica pelletterie milanoのためにデザインしたスーツケース「KAME」の広告で躍動する佐藤オオキ氏が出迎えてくれた。ミラノデザインウィーク期間でもっともよく作品を目にする日本人デザイナーといえるnendoによる大規模な個展 「nendo works 2014-2015」がペルマネンテ美術館で行われた。100点以上の新作が発表され、デザイン関係者の中でも「必見」として話題にのぼった。

ルイ・ヴィトンがクラッシックな大邸宅パラッツオ・ボッコーニで行った展示は「Objects Nomades」。2012年から続いているこのコレクションは旅をテーマにし、持ち歩ける家具や旅道具などが中心となっている。今年新たに3人のデザイナーが加わり、9 人のデザイナーによる16の Objets Nomadesが展示された。また会期中にはシャルロット・ペリアンが1934年にデザインしたコンセプト・セカンドハウス「La Maison au bord de l’eau」(制作:Louis Vuitton)も展示された。

伝統工芸の現代的解釈

今年のミラノデザインアワード(会期中のもっとも優れた展示に与えられる賞)はアントニオ・マラスとセーニョ・イタリアーノがコラボレーションした“IL SENTIERO DEI NIDI DI RAGNO" に与えられた。アントニオ・マラスは故郷のサルデーニャ島に残る手作業の伝統文化を取り込んだコレクション、セーニョ・イタリアーノはイタリアの伝統的な職人技術によるプロダクトを扱うことで知られる。また、トリエンナーレ美術館で展示されていたConstantly and Changeは、洗練されたデザインの韓国の伝統工芸品を紹介。日本の伝統的工芸品産業振興協会も出展し、その後、2015年5月1日(金)~10月31日(土)の半年間、「ミラノ国際博覧会」に併せ、ポップアップショップ「伝統工芸 ミラノスクエア」を展開している。

番外編

アルマーニ・カーザが展示していたのは安藤忠雄氏が設計したテアトロ・アルマーニの中。
かつて出版社で雑誌を作っていたときに編集を担当した建築を目の当たりにするというのは感慨深い。

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