地域に根差していた畳屋を雑貨店へと変える改修計画である。
元畳屋の混沌とした室内を「記憶として残すべきモノ」と「雑貨店の雰囲気にあわないため撤去するモノ」という評価軸にのせて、区別していった。
施主と私たちの判断は概ね一致していたが、天井のトラス周りの古い配管については意見が分かれた。私たちはそれを建物の記憶として残していいと思ったが、施主は記憶と捉えるには汚すぎると判断した。
施主の意見を尊重し配管を撤去することもできるが、コストが余分にかかる。「布は安く仕入れられる」という提案を施主から受け、これを天井材にすることを決めた。布は一見軽やかだが、ともすると弱々しくチープに見えなくもないため、シンメトリーという強い形式を持ち込むことで、両者の強弱の中和を図った。
シンメトリーで誂えた布の、隙間から見え隠れするトラスや配管が、建物の記憶として見え隠れし、弱くも強くもある不思議な空間になったかと思う。
■建築概要
所在地:東京都渋谷区本町2-39-17
内装設計:工藤浩平建築設計事務所
内装施工:(株)住建トレーディング東京支店
施工面積:149㎡(1階120㎡+ロフト29㎡)
工事期間:2021年4月~2021年6月
写真撮影:楠瀬友将
■経歴
工藤 浩平
- 1984
- 秋田県生まれ
- 2005
- 国立秋田高専卒業
- 2008
- 東京電機大学卒業
- 2011
- 東京藝術大学大学院修了
- 2012-2017
- SANAA(妹島和世+西沢立衛)勤務
- 2017
- 工藤浩平建築設計事務所設立
東京電機大学、東京理科大学、多摩美術大学、非常勤講師
■受賞歴
- 2019
- 日本空間デザイン大賞 2019 住空間部門 銅賞 東松山の家
- 2020
- 日本建築美術工芸協会 第30回AACA賞 入選 プラス薬局みさと店
- 2021
- 第35回秋田の住宅コンクール 最優秀賞 (秋田県知事賞)楢山の別邸
- 2022
- JIA東北住宅大賞 住宅賞 楢山の別邸
- 2022
- 日本建築学会作品選集新人賞 プラス薬局みさと店
■出版
「KJ 2022年4月号」特集 工藤浩平建築設計事務所
(出版:株式会社KJ)
工藤浩平建築設計事務所
http://www.koheykudo.com/