敷地は、別荘地の比較的車の通りが多い道路の角地に位置する。
建主がこの土地に巡り合った時に、敷地に元あった古屋は取り除かれていたが、元の持ち主が長年かけて育んだ、庭の樹木や植物、門柱などをそのまま継承することで、古くからの景観が変わらないように心掛けた。
元の建物があった位置に、ややひしゃげた六角形の小屋を建てた。周りに対して圧迫感なく、内部からは周辺の緑を余すことなく享受できる。
料理が趣味のご夫婦が、日常の多忙な仕事を離れて自然の中でゆっくり食事を楽しんだり、客人をもてなしたり、くつろぐための場所である。
1階の個室は、テラス、森の庭に繋がる。2階のワンルームの居間食堂キッチンは、通りに面した大開口の奥にフレームの壁を設えることで、通りに対してのプライバシーを守りつつ、外の緑や動きを感じられるようになっている。
また、六角形の方形の内部に天井を部分的に二重に架けることで、暗くなりがちな建物中央部に、反射板によって光をリバウンドさせて、光で包まれるような居場所をつくった。天気がよい時には、真っ白く塗った天井に、外の緑や室内の床の赤味が、天井板の間に入り反射して映り込み、複雑な色彩の陰影が入り交じって現れる。
森の光で祝福されたその中心が、入れ子のキッチンの小屋になっている。
■建築概要
所在地:長野県軽井沢町
主要用途:別荘
家族構成:夫婦
設計−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
設計者事務所名:セルスペース
担当/早草 睦惠 廣瀬 貴之
構造:MID研究所 担当/加藤 征寛 吉村 貴司
施工−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
会社名:津久井工務店 担当/小針秀喜 戸塚亮
設備:アクアテック 担当/上原 聡
電気:小野里電気 担当/谷 富夫
木工事:大工 津久井工務店 担当/林祥平
左官工事:永井工業 担当/剣持正之
家具工事:ハルナ工芸 担当/松本貴宏
塗装工事:田村塗装店 担当/鈴木功一
構造・構法−−−−−−−−−−−−−−−−−
主体構造・構法:木造軸組構法
基礎:直接基礎
■経歴
早草 睦惠
- 1963
- 東京都生まれ
- 1986
- 東京大学工学部建築学科卒業
- 1986~88
- 岡設計
- 1988~91
- 日本設計
- 1991
- セルスペース設立
現在、お茶の水女子大学非常勤 講師
■受賞
- 2002
- 「元麻布の家」(本誌0205)
グッドデザイン賞 受賞 - 2006
- 「襲の家」(本誌0407)でAmerican Wood Design Awards 2006 Honor Awards
- 2011
- 台湾 新北市現代美術館国際設計競技 Merit Award
- 2015
- 「揚羽の家」(本誌1511)で中部建築賞 受賞
- 2019
- 「L型キャンチレバーの家」(本誌1809)で
モダンリビング大賞 受賞
セルスペース
〒146-0085 東京都大田区久が原3-12-3
tel. 03-5748-1011 fax. 03-5748-1012
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