三重県伊賀市の中心部にある小さな土産物店。
店内には忍者や伝統工芸の組紐など、地域にちなんだものをモチーフにしてデザインされた土産物が並ぶ。
この店の向かいには坂倉準三設計の旧伊賀市庁舎が建っている。今後この建物は複合施設として再生される予定で、変わりゆく様子を見守る場所にこの店は位置する。
訪れる人がこの場所性を感じ取れるように、大きな鏡を設置した。姿見としての役割と同時に、外の風景を店内に取り込んでいる。中に足を踏み入れると鏡に溢れる風景と対峙し、外に居るときよりも鮮明にこの場所の空気を感じる。
中央には組紐の作業台が鎮座する。組紐創業の地に眠っていたものを譲り受け、ガラスの天板を載せてディスプレイ台に転用した。 またファサードの建具は近くの空き家にあったものを加工した。
この地域で長く使われたものが空間を彩り、建築を場所になじませている。
場所と対峙する建築の構えについて思いを巡らせた。
■建築概要
構造:鉄骨造(テナント工事)
工事種別:リノベーション
設計:きりん 武保学
施工:ドリームリフォーム株式会社 北出聡
竣工:2021年3月
床面積:18.16㎡
照明製作:Bowl Pond Platz 上田安伸
写真:山内紀人
■経歴
武保 学
- 2013
- きりん設立
- 2017
- 拠点を三重県伊賀市に移し、地元の素材・職人・技術によって人と自然・人と時間・人と人の関係性づくりを実践している