- 再生時間:16分15秒 -
(インタビュー:寺松 康裕氏)
寺松
先日、品川のキャノンのギャラリーで、日本建築写真家協会による写真展「銀座ジャック」が行なわれましたが、どのような経緯であのような企画を考えられたのでしょうか?
小川
もう10年以上前から、1人1作という形で、60人限定でフジフォトサロンで写真展で光と空間という展示会を2年に1回づつやっていて、それが6回続いて。それで「みんなでなんか同じテーマで撮る作業がない、そういう写真展ができないか」っていう話になって。建築写真家協会ができて5周年ということもあって、5周年の記念として、みんなで共同で何か撮れることはないか、っていう話になってね。建築写真を撮ってる人間はドキュメンタリーなんて撮れないから、やっぱり建築を撮ろうと。「単純に建築撮るんだったら最初は銀座だろう」みたいな感じになって、単純にそれは銀座の歩行者天国もあるし、電柱もないし、電線もないから。特に今、ヨーロッパ、アメリカのブランドものが入ってきて、新しいビルリニューアルしたり、新しいビルができたりして、結構建築家もかんでるから、そういう意味では「銀座をみんなで撮ろうか」っていう。
寺松
確かに建築家も関わって、それで随分銀座の風景も変わりましたよね。
小川
うん。変わってるよね。それを「大型カメラで撮ろう」っていうのが発想。「いつも使っているビューカメラで撮ろう」っていう。そっから「銀座を撮ろう」っていうことになって。いきさつはそういういきさつでね。実際テストやってみると、もう普通に仰ってたんだでは届かないっていうか仰れない、銀座が高層化されてて、最終的にはビューカメラで大変お世話になったんだけれども、まぁそういういきさつで「みんなで共同作業をしよう」っていうのが発想ね、まず。まぁでもやってみて、もうデジタルがなかったらできなかった、まさに。ビューカメラを使っても仰れないんで全部上向きに皆撮っといて広角使って、コダックのフイルムを使用して、レンズも共通の47ミリ。まぁカメラはみんな違うけども、それからカメラの高さを揃えて、仰角も揃えて、それで露出も揃えて、まぁ20分くらいの間に一斉にこう撮って。ネガからデジタル化してね、データで後はいじったの。
寺松
ネガ撮りをして、それをパソコンに取り込んで・・・
小川
そうそう。
昼間はそれでできて、夜は今度長時間露光すると人間動いちゃうんで夜はもう最初からデジタルで撮ろうっていう。ところがデジタルを持っている人間がいないんで、銀座のキャノンに飛び込んで「カメラを貸してくれ」とかね、カメラ3台借りて、あとはたまたま持ってる人間が持って来いみたいな。
寺松
それで出来上がった展示されたものを拝見しましたが、なんか今までありそうでない写真を見たなぁっていう、そういう感動がありましたね。普段、見ているはずなんですけども、ああいう感じではやっぱり見れないわけですから、なかなかその非常に見慣れたものであるはずのものが目新しく感じたし、おもしろい写真だったと思います。
小川
要するに1丁目から8丁目を全部繋げたからね、あれがなかなかね。見に来てくれたプロの写真家にしても雑誌の編集者の皆さんでも、1件をモニュメントとして撮って、その左右を繋げたっていうのはあるけれども、これだけやったことはないな、みたいなね。それはなかなか我々も飾ってみるとね、「あ、結構頑張ったな」っていう感じがしてね。
結果的にあれは多分歴史に残るっていうか、何年何月のものとしてね、そういうある程度モニュメント性はあったのかなぁっていう感じはするね。
寺松
建築写真家協会の今後の活動として何か具体的に考えていらっしゃいますでしょうか?
小川
また5年に1回くらい何かイベントやりたいなぁっていう、ああいう銀座ジャックみたいなね。で、とりあえずは「今度銀座昼間と夜、逆さまににしてもう1回やろうよ」っていう。
寺松
通りを?
小川
通りを。でそれは銀座の商店の連合会なんかの人も「あったらいいんじゃないかなぁ」みたいなね。そんな話があるので、とりあえず具体的っていうか、案にあがっているのは今それくらい。で、それとやっぱり協会として今一番のネックは多分これから話でるかもしれないけど、デジタル。デジタルに関する著作権、その辺が一番のネックです。会うたびにみんなその話をしている。
寺松
著作権の問題ですね、写真の。最近デジタル化が進むと、そうするとその情報がある意味フリーハンドで流れていく可能性があるわけですね。建築の写真というのは、特に著作権がどのように今後なっていくのか、どんなことを感じられているのかということをお話いただきたいと思います。
小川
はい。さっきもチラっと出た、建築写真家っていうのは依頼されて撮ることが多いんでね、だからその依頼主に対してね、著作権を「写真の著作権は著作権法ではこうなっています」っていう形で、大上段に振りかざして出来ない側面があるわけ。それはまぁその依頼がなければ上がりもゼロになっちゃうんだし、かといってね、「あなた自由にやっていいよ」っていうのはちょっと言いにくいところがあって、今個人的に僕はどうしてるかっていうと、一応写真を撮って、たまたまここにあるけど、一応こういうキャビネのプリントにしてね、これをナンバーリングして設計者に渡しているわけ。プリントとしてね。で、この内の必要なものをデータ化してくれっていう時には、普通は1点5000円くらい入力料をもらってる。で、それを10枚だったら5枚買いますよ、みたいなね。それは「あんたが使う時にはいい」と。「設計者とそれからクライアントが欲しいって言ったらクライアントが使う分にはいい」施主とね。それから設計者とクライアントと工務店が使うときにはとにかく「5000円で僕は作ってあげます」ただそれを他の出版社に使用料というときはまた全く別なので「それをコピーとって渡さないでくれ」とかね。そういうのはいろいろ能書きをいろいろ書いて「こういうことでお願いします」というのはやっている。ただしそれは相手の良識に基づいて動いてることなので、コピーをとって配られたらもうそれっきりになっちゃう。で、まだ建築写真の世界はデジタル化が比較的遅れているので、まだ良いんですよ。一般の今、日本写真家協会なんかも、そこの仕事の人たちは、ほとんどもう99%デジカメなんですよ、仕事が。だからデータで渡すのが当たり前なの。データで渡すのが。それはね、もうね頑張って彼らにしてもやっぱり大上段ですっぱねるわけにもいかないから、ほんとにケースバイケースで、何枚か渡して全体としてデータ料として「5万ください」とか「15万ください」とか、ケースバイケースでここでやっていて。写真の著作権なんかでもね、その電子化されたものの明文っていうのがまだ無いんですよ。実態に遅れて法律って出来てくるから、だからまだね、著作権法にデータ化されたものはどうこうっていうのはね、全然記述がない。今写真家協会でもそれ動いている。
寺松
もともとその、今やっぱりポジで渡すっていうのが多いのですか?
小川
基本的には僕はもうネガポジは自分で持ってる。で紙焼で渡して、で印刷原稿の時も最近「プリントでくれ」っていう人が多いんですよ。出版社なんかも。だから僕はポジで渡す。刷りが悪いんでペーパーは。でどうしてもやっぱりミックス稿なんか色の出ないやつはプリントして渡すこともあるけども、基本的にポジで渡すよね。あのー、それから今デジタル化っていうのは絶対避けられないから、それはだけど著作権版権使用とそういうことで写真家の権利を曖昧にしとくわけにはいかないんで。で今建築家写真協会で集まるとみんなその話をしてる。「小川さんどうしてるの」っていう。でみんなね、やっぱりクライアントとの繋がりがあるんでね、うん、その辺がね難しいんでね。
寺松
一概には言えないのでしょうね。
小川
一概には言えない。
寺松
条件がそれぞれありますからね。
じゃあ今の時点ではまだその写真家協会として共通のラインっていうか、それはない訳ですか?
小川
うん、あのね共通のラインは無いけどもニュースとか、こないだの総会なんかもそうだし、僕はニュースに毎回書いてるんだけど、とにかく1点いくら、少なくとも1点5000円くらいの入力料、その作業料、そのチャージをね「請求してくれ」って言うの、「請求しようじゃないか」って。で力関係で5000円請求出来なかったら「3000円でもいいじゃないか、とにかくゼロはダメだ」と。でその納めたものに関してはその工務店とか設計者とか限定してね、「ここはいいんですよ」っていう感じでやらないと、そのデータをそのまま出版社に流れちゃうんで。
これからの課題なんだけれども、そういくのかどうかね。デジタルが非常にイージーになっちゃってるから、だからむしろフイルムの時の方がデュープを渡さないとか、あったけどね。
寺松
そうですね。
小川
あったけどね。
寺松
コントロールできましたもんね。
小川
できたからね。
これからね、そういう著作権、知的なことは、文化的に上がっていくのかどうかね、その辺はむしろね、落ちていくんじゃないかっていう、そっちの危惧のが大きいね。
寺松
まぁ、ある人によると、それはもう時代の流れでデジタルにすれば、当然その流れてしまう。ただその著作権の最初の発生する段階である程度ちゃんと確立しておかないと、その後のことで、後でフォローしていくっていうのは、基本的に無理じゃないかってなことを言われる方もいらっしゃいますよね。
小川
あのー、多分そう思う。今もうデータ出すっていうことは極端なことを言うと世界中からそれデータ取れるわけ。だからそれいちいちね「俺の写真がフランスのどっかで使った」とかね、追求できないから、だから出す時にきちんとフィーしとかないと、あのー、それはね、中にはね「こうやってPRして使ってくれればいいんだ」っていう人がいないわけではない。
で、「とんでもないところで何かのパンフレットで俺の写真見たんだよ」って言って喜んでる人もいるしね。「それちゃんと請求してよ」って言うと「いや、こんなの請求できないよ。」って。「こんなボケた小さい写真を」って。だけどそれは使ってもらって有難いっていうね。まぁそれも一面あるんだけどね。そういう人もいるからね。だから一概にね、あのークライアントと写真家の関係、つまり出版社と写真家の関係もいろんな温度差があるんでね、個人的に。だから一概に文章で「こうします」って言っても、設計料みたいなもんでさ。なかなかこう一括りが出来ないんだよね。だけどこれから一番大事だと思うよ、それは。うーん。
寺松
建築写真を撮るっていうコツみたいなものはありますか。最近、多くの人が日常的に持ち歩いているコンパクトカメラのようなものでも、やっぱりそのおさえどころといいますか、写真のおさえどことみたいなところを、少しお話いただけないでしょうか。
小川
あー、あのねやっぱり建築家の発想っていうのは、まず立面にしてもね、図面でこう作っていく、図面でこう作って何が綺麗かってやっぱりね、エレベーションが綺麗なの、基本的に。中も外も基本的にはね。建築家はそういう発想で多分図面化されてくだろうと思うんで、だからやっぱりセンターでエレベーションを撮るっていうのがまず基本だね。僕らもエレベーションを撮ってから、ちょっとふったやつを撮ろうかってやってるから、あのーやっぱり結果が写真を撮るときいろんなハードとソフトがあってね、まずソフトの話をするとね、「この写真を誰に見せるか」っていうのを想定することね。「これを家族に見せたいんだ」、あるいは「友達に見せたい」、誰でもいいからそういう発想をまずして、例えば特に外国なんか行った時にね、これ時間がない時に「この写真を誰に見せようかなぁ、よしじゃー帰って女房に見せよう」、女房でも友達でもいいから、そういう発想を持って、そうすると「全景っていうのはここから見たら一番綺麗だから全景はこれだよな」。で全景ばかり撮ってもしょうがないから、「じゃあ窓の収まりはどうなってるのか、あるいはエントランスの扉はどうなってるのか」って、ずーっと寄ってそこを1枚撮ろう。で中に入ってエントランスホール綺麗だったら、まずそれをここから撮ったら全体がわかる、あんまりふっちゃうとプロポーションが変わっちゃうから、正面から正面からねらいながら「誰かに説明しようかなぁ」と思って撮ると、そこそこのカットが撮れてくる。でやっぱりソフトはそういう意味だけど、ハードやっぱりそれはもう正面から撮るのが一番綺麗だろう、よほどのことがない限りね。まぁでもカメラを構えた時に自分の影が前に見えるときは光ダメなんですよ。自分の影がこう見えてる時はね。だから左右に影がいってる時はそこそこ面白いかもしれないけども。
寺松
まぁ基本的なことですけども、それがなかなかあれですよね。大変なことですよね。
小川
うん。うん。まーあのソフトの面では「誰に見せたいか」っていうね。ハードはやっぱりもう正面から、建築家はやっぱりパースついた図面からはなかなか図面書かないだろうと、正面から絶対スケッチし出すだろうからね。だからそんなこと気をつけた方がいいなっていう感じはするよね。
(2007年7月24日 於:小川泰祐写真事務所)
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