公益社団法人日本建築家協会長芦原太郎氏は、新国立競技場計画見直しに対する提言を発表した。
公益社団法人 日本建築家協会
会長 芦原太郎
新国立競技場設計見直しの提言
今般、新国立競技場を巡る問題が国民的議論となっています。
本年7 月7 日に有識者会議に報告された2,520 億円という総工事費については、各種世論調査においてもあまりに高額なため見直すべきだとの意見が大半を占める結果となっており、7 月15 日に政府が設計見直しの方向を打ち出したことは時機を得た決断であると考えます。
コンペ当選案とそれを基にした基本設計及び実施設計は予算を大きく超過したため採用できないとして白紙に戻し、プロポーザルで選ばれた現設計チームを継続させることが見直しを早期に実現させるために最善なことだと考えます。その場合、ザハのコンペ案は白紙に戻すことになりますが、監修者として選ばれたザハの事務所自体は、本人の意向次第では設計チームに残す可能性もあります。
工事費削減の制約となる設計条件を見直すことで、1,625 億円の予算内で十分立派なナショナルスタジアムを造ることが可能だと考えます。また現設計チームを継続させることで、2020 年オリンピックパラリンピック大会は当然のこととして、2019 年ラグビーワールドカップに間に合わせることも計画内容次第で可能だと考えます。
現設計チーム内にはECI 方式により施工会社も含まれており、再設計に当たってはそのノウハウを発揮できるようにすることが順当です。もっとも工事発注に当たっては、工事予定者の立場は外して改めて複数の施工会社による競争入札とすることで、価格の透明性を確保して国民への説明責任を果たせるようにすることのメリットが考えられます。また入札時に、減額案と工期短縮の提案を求めることで、更に広く施工会社の英知を結集することも可能になります。
この大きな転換のもとにナショナルスタジアムを立派に完成させるためには、今回の反省を踏まえて発注責任者と設計責任者がしっかりとしたリーダーシップを発揮できるようにすることと、国民に向けたわかり易い情報公開が不可欠です。
今月末のIOC 総会で、誘致の際プレゼンテーションを行った安倍首相自らが設計内容の変更を世界に向けて説明すれば、国際的信用を失墜させることもないと考えます。また国内においても、更に強力な政府トップによるリーダーシップが求められます。
計画内容、工事費、工期が複雑に絡まったナショナルスタジアム造りにおいて、市民、政府、建築界が一丸となって今般の事態に対応すれば、次世代に誇れる結果を出せると確信いたします。
本会では第三者の専門家団体として、設計条件の見直しによる事業費の大幅な削減案の作成や市民に対する情報の整理と公開など、今後の具体的進行に当たって全面的な支援と協力を惜しまない所存です。
以上
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