課題:ガラス質を曖昧に組み立てる
ガラス質の特徴は、透明であっても半透明であっても、両側ともお互いの気配は感じるが行き来することはできないことである。ガラスブロックやグラソアは、視線は遮るが光は通す。ファイアライトは視覚的にはつながるが、炎は遮断する。ガラス質はその両側の存在を遮断しながらつなげているといえる。それは曖昧さの特性のひとつである。日本電気硝子の製品は、そうした特性を発揮させる可能性を秘めている。
建築は明確さを求めるため、「曖昧」であることは避けがちである。しかし表現の手法として「曖昧」を使えば、それによってつくられる建築空間をより豊かにすることができる。
「ガラス質を曖昧に組み立てる」ということは、より豊かな空間を生み出すため、明確な材料であるガラス質を使って曖昧に表現をすることである。材料や技術としては明快であっても、建築表現としては曖昧になるようにガラス質を使うことを、今回の課題では求めているのである。
また、曖昧に組み立てられたガラス質は、生活にどのような影響をもたらすか、ということも考えたい。曖昧なガラス質が建築に挿入されることによって、いままでになかったどのような生活が可能になるであろうか。またそのため、「曖昧」という感覚をどのように空間化したらよいか思案し、提案して欲しい。
日本電気硝子の製品には、「曖昧」を建築に表現することができる可能性が秘められている。その可能性を引き出すにはどうしたらよいであろうか。
「曖昧」という言葉を広く自由に解釈し、型にはまらない表現を求めたい。
審査委員長:隈 研吾