トップバナー

結果発表

カナダ林産業審議会( www.cofi.or.jp )主催の「COFI木造建築デザインアワード」(Big & Tall Wood Challenge)は、健全な木材の利用促進と木造建築の発展と普及促進のため、主たる構造が木造である建築物であれば、使用木材が国内、国外産を問わない上に、木造工法についても応募制限を設けない、まさにオープンに木造建築物を評価するアワードです。第5回目となる今回は、4層階以上で主たる構造が木造の建築物を対象とした「中層木造部門」と、3層以下で1,000㎡以上の主たる構造が木造の建築物を対象とした「大型木造部門」の2部門で作品審査を行い、審査委員による厳正な審査の結果、「中層木造部門」4作品、「大型木造部門」4作品の計8作品が優秀作品として選ばれました。

中層木造部門 入賞作品

ANGULAR HOUSE
所在地|東京都品川区

施主 株式会社ベルーツ
設計 腰越耕太建築設計事務所
構造 田中哲也建築構造計画
施工 渡辺富工務店
用途 共同住宅

使用木材:ヒノキ、ベイマツ、スギ
構  造:軸組
階  数:4階建
竣  工:2022年3月
敷地面積:105.90㎡
建築面積:74.39㎡
延床面積:284.31㎡

審査講評 腰原 幹雄

4階建ての共同住宅。中層木造になると、高さ制限、日影規制、斜線などさまざまな条件が付加される。この建物では、規制にあわせて切断された面が4階屋根、3階壁まで影響する自由な角度の面が生じている。規則的な構造でも変化する構造でも追従可能で、自由度の高い構造計画ができる軸組構法の利点を活かした計画。

新田楽生苑
所在地|東京都足立区

施主 社会福祉法人新生福祉会
設計 株式会社メドックス
構造 株式会社日本システム設計
施工 三井ホーム株式会社
用途 特別養護老人ホーム

使用木材:SPF、集成材、合板、構造用合板
構  造:2X4(1階RC、2-5階木造)
階  数:5階建
竣  工:2022年8月
敷地面積:4,649.59㎡
建築面積:2,180.03㎡
延床面積:7,826.76㎡

審査講評 腰原 幹雄

4階建ての特別養護老人ホーム。従来の木造建築とは異なる四角い箱状の建物、こうしたシンプルなファサードは、これからの中層木造建築のイメージのひとつの選択肢となるだろう。これからの都市型の中層木造建築の提案として、木材を多用しながら敢えて木造らしさを消した2x4工法ならではの挑戦である。

Port Plus
所在地|神奈川県横浜市

施主 株式会社大林組
設計 株式会社大林組
構造 株式会社大林組
施工 株式会社大林組
用途 研修所

使用木材:LVL、カラマツ、CLT、スギ、スクピラ、パイン
構  造:その他
階  数:11階建
竣  工:2022年3月
敷地面積:563.28㎡
建築面積:397.58㎡
延床面積:3,502.87㎡

審査講評 東 利恵

中層木造の建築では、構造の木部を表しすることが難しかったが、この建物では、鋼板などを用いずに木構造だけでの耐火性能をあげ、木のグリッドの内部空間を実現している。また、この木部の構造を覆ったショーケースのようなダブルスキンのカーテンウォールの繊細なデザインの美しさも評価したい。

東京藝術大学国際交流棟 Hisao&Hiroko TAKIPLAZA
所在地|東京都台東区

施主 国立大学法人東京芸術大学
設計 東京藝術大学キャンパスグランド推進室・施設課、
隈研吾建築都市設計事務所、
前田建設工業株式会社一級建築士事務所
構造 前田建設工業株式会社一級建築士事務所
施工 前田建設工業東京建築支店
用途 大学

使用木材:(集成材)欧州赤松・唐松、ベイマツ、スギ、NLT(SPF)
構  造:軸組
階  数:5階建
竣  工:2022年11月
敷地面積:31,799.06㎡
建築面積:373.24㎡
延床面積:1,483.54㎡

審査講評 原田 真宏

緑豊かな上野公園に隣接する大学交流施設を木造と鉄骨造の混構造で実現した作品。無理に純木造を狙うのではなく、木造の他の構造形式への高い適合性を積極的に活かしている点は、大規模木造の普及への実質的な道筋を提示し、拡大している。軽量な木造部分は構造上の合理性から上層階としているが、この高さは上野の森の高木の葉をつけた樹幹部分に対峙するレベルであり、木質の内装から緑を愛でる空間体験も心地よさそうである。

大型木造部門 入賞作品

昭和学院小学校 ウエスト館
所在地|千葉県市川市

施主 学校法人昭和学院
設計 株式会社日建設計|Nikken Wood Lab
構造 株式会社日建設計
施工 大成建設株式会社千葉支店
用途 小学校

使用木材:CLT(スギ)、集成材(ヒノキ)
構  造:CLT
階  数:2階建
竣  工:2021年11月
敷地面積:10,539.29㎡
建築面積:783.54㎡
延床面積:1,467.84㎡

審査講評 原田 真宏

小学校建築に大々的にCLTを活用した取り組み。特に教室平面がほぼ正方形に近い特徴を活かして、CLT版を軸を直行するように二枚重ねにすることで構造的に合理的なフラットスラブを形成し、梁型が出ず天井高のある伸びやかな学習空間を作り出している。防音性能や振動特性などのデータも採取を続けており、この後公開されるとのことで、データが不足しがちなCLT建造物の発展に寄与することも評価した。

常陸太田市立水府小・中学校
所在地|茨城県常陸太田市

施主 常陸太田市
設計 岡田新一設計 +
柴建築設計事務所建築関連業務共同企業体
構造 織本構造設計(校舎)
山田憲明構造設計事務所(屋内運動場)
施工 りんかい日産・小池特定建設工事共同企業体(校舎)
日立土木・小池特定建設工事共同企業体(屋内運動場)
用途 小中一貫校

使用木材:ハイブリット集成材(スギ+ヒノキ)、スギ、集成材(スギ)
構  造:その他
階  数:2階建
竣  工:2021年3月
敷地面積:37,767㎡
建築面積:4,147㎡
延床面積:5,994㎡

審査講評 腰原 幹雄

2階建ての大規模な木造校舎を別棟解釈により製材で計画。RC造による耐火構造のコアと鉄骨造による渡り廊下で木造ユニットを結びながら象徴的な中庭を囲むように建物群が配置されている。切妻屋根の木造ユニットと耐火構造ユニットの連続による南側のファサードも特徴的。一般的な技術の組み合わせながら変化にとんだ建物構成が見事。

流山市立おおぐろの森中学校
所在地|千葉県流山市

施主 流山市
設計 株式会社日本設計
構造 株式会社日本設計
施工 株式会社奥村組
用途 学校

使用木材:スギ、LVL(カラマツ)、CLT(ヒノキ)、合板
構  造:軸組
階  数:3階建
竣  工:2022年3月
敷地面積:26,733.69㎡
建築面積:7,909.35㎡
延床面積:14,568.34㎡

審査講評 原田 真宏

8000平方メートル近い床面積を持ち、階数も3層と、規模の大きな中学校建築を木造で実現しているが、ここで用いられている構造・構法的な解決法や、法律の適用手法はほとんど網羅的といってよく、今後の大規模木造校舎を実施する際の、有効なカタログとなり得る。木造化による軽量化によって基礎が軽減され、地中内水脈を保全し隣接する蛍生息池を保護した点も木造化の利点を活用しており高く評価した。

木曽町役場
所在地|長野県木曽町

施主 木曽町
設計 株式会社千田建築設計
構造 有限会社金箱構造設計事務所
施工 岡谷・松本土建・正澤・開田 特定建設工事共同企業体
用途 庁舎、防災センター

使用木材:ヒノキ、サワラ、カラマツ
構  造:軸組
階  数:1階建
竣  工:2021年12月
敷地面積:17,527.71㎡
建築面積:3,445.9㎡
延床面積:3,323.88㎡

審査講評 東 利恵

大規模の木構造が町の役場としての規模感をうまく作り出している。大仰に見えない構造やスケール感が平屋の大屋根空間の下で役場と住人のコミュニケーションの距離感を近づけているように見える。また、檜で知られる木曽の林業をアピールする意味でも評価される建物である。