結果発表

カナダ林産業審議会( www.cofi.or.jp )主催の「COFI木造建築デザインアワード」(Big & Tall Wood Challenge)は、木造利用の促進と木造建築の発展と促進普及のため、主たる構造が木造である建築物であれば、使用木材が国内、国外産を問わない上に、木造工法についても応募制限を設けない、まさにオープンに木造建築物を評価するアワードです。第4回目となる今回は、4層階以上で主たる構造の木造建築を対象とした「中層木造部門」と、3層以下で1,000㎡以上の主たる構造が木造建築を対象とした「大型木造部門」の2部門で作品審査を行い,審査委員による厳正な審査の結果、「中層木造部門」4作品、「大型木造部門」4作品の計8作品が優秀作品として選ばれました。

中型木造部門 入賞作品

中央区日本橋3丁目プロジェクト(Mid Rise Wood Building in Tokyo)
所在地|東京都中央区

施主 株式会社けやき弥
設計 スターツCAM株式会社
構造 スターツCAM株式会社 免制震構造研究所
En.Wood
施工 スターツCAM株式会社
主要用途 飲食店、倉庫業を営まない倉庫

使用木材:構造壁 MPW-D、構造用合板、TJI、LSL、PSL、面材:OSB、構造用合板
構  造:2×4工法
階  高:4階建
竣  工:2021年8月
敷地面積:42.21㎡
建築面積:31.67㎡
延床面積:126.68㎡

審査講評 原田 真宏

日本橋の両側に隣棟が迫る間口4.5mの狭小地が敷地である。4階程度のボリュームが必要な今回のような場合、従来であればRC造やS造が選択されるが、足場の設置や外壁仕上げのための敷地境界からの離れ等を考えると非効率である。そこでここでは、足場の不要な2X4のパネル構法として、敷地中心から外側に向けて構造パネルを立ち上げるように設置することで、敷地からの外壁離れを最小化し、敷地を最大限効率的に活用することを可能としている。木造系小規模工務店に4階建小規模ビルの施工受注の道を拓き、かつ都市部狭小敷地での新しい合理的な構法を提示する先進例として高く評価した。

MOCXION INAGI(モクシオン稲城)
所在地|東京都稲城市

施主 三井ホーム株式会社
設計 三井ホーム株式会社
構造 株式会社COSM建築設計事務所
有限会社ろふと
施工 三井ホーム株式会社
躯体パネル
製造
三井ホームコンポーネント株式会社
主要用途 共同住宅

使用木材:構造壁(2階~5階)SPF、ベイマツ、ハードパイン、 カラマツ、合板、木質ボード
構  造:1階 RC造、2階~5階 2X4エ法
階  高:5階建
竣  工:2021年11月
敷地面積:1,499㎡
建築面積:875㎡
延床面積:3,738㎡

審査講評 腰原 幹雄

1時間耐火で可能な上層4層は、木造建築の得意分野となってきている。建物用途、規模を絞ってこれまで蓄積してきた技術を統合することができれば経済性の面でも他構造との競争も十分に可能である。集合住宅において、構造として高強度のツーバイフォー耐力壁とタイダウンシステム、防耐火として石膏ボードによる被覆、普及しやすい技術を用いた上で、内部空間で木材を造作材として用いている。木造マンションという新たなカテゴリーが生み出された。

髙惣木エビル
所在地|宮城県仙台市

施主 髙惣合同会社
設計 株式会社シェルター
構造 株式会社シェルター
施工 株式会社シェルター
主要用途 店舗、事務所、住居

使用木材:杉製材、檜製材
構  造:接合金物工法「KES構法」
階  高:7階建
竣  工:2021年2月
敷地面積:245.58㎡
建築面積:188.83㎡
延床面積:1,131.25㎡

審査講評 腰原 幹雄

木造7階建てビル。中層木造建築の技術向上は、高さへの挑戦でもあり、木造軸組工法による7階建27.38mは現在の到達点である。多くの工法、木質材料の中から、製材による束ね柱、合わせ梁による軸組工法を選択して実現している。ここまで規模が大きくなると、徐々に集成材やLVLなど高強度の木質材料の活用に向かっていきがちであるが、今後も製材の活用の限界にチャレンジするとともに、木造建築空間のデザインによる魅力の創出を期待したい。

ファミリーホスピス京都北山
所在地|京都府京都市

施主 日本ホスピスホールディングス株式会社
設計 株式会社リヴー級建築士事務所
株式会社現代建築研究所
構造 株式会社梓川設計
施工 株式会社リヴ
主要用途 福祉施設

使用木材:SPF、集成材LVL、スギ
構  造:2X4エ法
階  高:4階建
竣  工:2021年5月
敷地面積:830.28㎡
建築面積:468.22㎡
延床面積:1,776.44㎡

審査講評 腰原 幹雄

中層木造建築のひとつのカテゴリーとして確立された感のある4階建て福祉施設。シンプルな勾配屋根とサイディングによる外観と木質化された親しみやすい内部空間としてうまくまとめられているが、欲をいえば木造の魅力を街並に発信できる特徴的な外装への挑戦も期待したい。この規模の中層木造が普通に建設できるようになりつつあることを示す好例である。

大型木造部門 入賞作品

桐朋学園宗次ホール
所在地|東京都調布市

施主 学校法人桐朋学園
設計 基本設計:隈研吾建築都市設計事務所
音響設計:唐沢誠建築音響設計事務所
実施設計:前田建設工業・住友林業共同企業体
構造 基本設計:ホルツストラ
実施設計:前田建設工業・住友林業共同企業体
施工 前田建設工業・住友林業共同企業体
主要用途 大学

使用木材:CLT、アカマツ、カラマツ、構造用合板
構  造:軸組工法
階  高:3階建
竣  工:2021年3月
敷地面積:41,341.37㎡
建築面積:1,340.02㎡
延床面積:2,392.59㎡

審査講評 原田 真宏

音楽ホールと講義室棟の複合建築を、耐火上別棟の考え方を用いて木造で実現したプロジェクト。特に準耐火建築物とすることで、CLT面を空間に現しとしたホール棟に優れた特徴がある。集成材が並列する梁をCLTと構造用合板で上下から挟み込むことで、組み立て梁状の折板架構とすることで大空間をスパンさせているが、その折板形状は構造だけでなく、一種の音の反射板としても機能し、ホール建築としての音響的な効果を上げている。また、燃え代設計によって不燃薬剤等を用いず済んでいるため、素地の木面が空間を覆っているが、これも木製楽器のような優れた音響上の効果を生み出しているようである。優れた空間性と共に、構造と音環境が新しい木構法によって同時に解決されており、これからのホール建築に新しい方向性を示すプロジェクトと言え、高く評価した。

星野リゾート BEB5軽井沢
所在地|長野県北佐久郡軽井沢町

施主 株式会社星野リゾート
設計 佐々木達郎建築設計事務所
構造 KAP
施工 竹花工業株式会社
主要用途 宿泊施設

使用木材:ベイマツ、ベイツガ、スギ
構  造:軸組工法
階  高:2階建
竣  工:2019年2月
敷地面積:5,311.38㎡
建築面積:1,444.28 ㎡
延床面積:2,828.18㎡

審査講評 東 利恵

地盤の状況に合わせて建物の軽量化を図り、遮音性能を検証し十分な性能をあげ、CO₂削減という目標を掲げた大規模木造のホテルである。その上に、中庭を囲い込むように内外にゲストの居場所を作り出し、客室はやぐら上部の寝台とその下のリビングと限られた面積の中で両立させ、ホテルとしての魅力あるデザインをおこなっていることを評価したい。

日立建機株式会社土浦工場事務管理棟
所在地|茨城県土浦市

施主 日立建機株式会社
設計 株式会社日立建設設計
構造 株式会社日立建設設計
施工 東急建設株式会社
主要用途 事務所

使用木材:ベイマツ、アカマツ、ホワイトウッド
構  造:軸組工法
階  高:2階建
竣  工:2021年2月
敷地面積:466,269.25㎡
建築面積:3,039.49㎡
延床面積:5,468.01㎡

審査講評 東 利恵

工場内の事務所棟だが、軟弱地盤のための建築の軽量化、CO₂削減としいう視点から鉄骨造から木造に変更した計画とのこと。工場のような無柱である必要がないため、結果として木の柱や梁スケール感が執務室としての魅力になり、機能と空間に合わせて整理された区画の細やかな平面計画がなされ、質の高いデザインとなっている。

流山市立おおぐろの森小学校
所在地|千葉県流山市

施主 流山市
設計 株式会社日本設計
構造 株式会社日本設計
施工 松井建設株式会社
主要用途 小学校、児童福祉施設等(学童クラブ)

使用木材:WOOD ALC(スギ集成材)、LVL(スギ)、LVL(カラマツ)、LVL(スプルース)
構  造:軸組工法+一部RC造
階  高:3階建
竣  工:2021年3月
敷地面積:21,271.39㎡
建築面積:5,648.88㎡
延床面積:12,423.75㎡

審査講評 原田 真宏

千葉県流山の12000㎡を超える大規模小学校の計画。流山おおたかの森やおおぐろの森といった周辺地域の環境的な特性から、教室から体育館までを含めて全面的に木造とすることが選択されている。さまざまなLVL材を主要な構造材とし、3000㎡を単位にRC構造を挟むことで防・耐火上区画しながら、ここに構造的に水平力を負担させる形式は、トラスアーチ架構とすることで特別な大断面集成材などを用いずに大スパンを架構した体育館と合わせて、これからの木造学校建築のひとつの雛形として成立しており、一プロジェクトを超えた普及効果としても価値があり、高く評価した。