世界の建築は今 No.129

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

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最終更新 2016/07/01 16:00

Prada Foundation Campus (Italy, Milano)

プラダ財団キャンパス(イタリア、ミラノ)

Design: Rem Koolhaas/OMA
設計:レム・コールハース/ OMA


今建築デザインではリノべーションの時代といわれている。過去の建築財産を継承し、同時代の傾向や要求を巧みに反映させたデザインが流行っている。OMAが担当したミラノの「プラダ財団キャンパス」もそのひとつだ。

プラダ・ファッション帝国を築いたプラダ夫人とパトリツィオ・ベルテッリ氏夫妻は、15年ほど前からOMAに頼んでハイ・プロファイルなプラダ・ストアを世界中につくってきた。その間夫妻は数々の美術品を収集し、プラダ財団はそれらをミラノ近郊のそこかしこで展示してきた。2008年彼らは美術コレクションの永久的な展示スペースをミラノにつくることを決定し、 その計画をOMAに持ち込んだ。

ミラノ・ダウンタウンの南側にあるラルゴ・イサルコ地区。「プラダ財団キャンパス」は100年前のジン蒸留所で、倉庫、研究所、醸造サイロなどの既存建物7棟と、新築建物3棟からなっている。それら3棟はプラダ・コレクションを企画展示する美術館、シネマで変形可能なマルチメディア・オーディトリアム、そして財団のコレクションを展示する10階建てのタワー(2015年5月当時工事中)だ。

3.3エーカーをカバーするOMAのプロジェクトは、既存の低い建物が敷地を囲み、ギャラリーと同時にイベント・スペースやオフィスを含んでいる。もうひとつのペリメーター部分にあるビルには、映画監督のウェス・アンダーソンがデザインしたカフェがある。

ペリメーター部分の建築の間にはふたつの大きな建築がある。 ひとつは大きなガラス壁面をもつ「ポディウム」と呼ばれるギャラリーがある。そのシンプルなつくりは正にミース的スペースだ。内壁にはアルミニウム・フォーム(泡)が使用されており、そのバブル・パターンがユニバーサル・スペース的な広い空間にアクセントを添えている。

その他の新しい空間は200席のオーディトリアムだ。これをコールハースは部分的にスタッコ仕上げとし古くからそこにあったように見せかけている。しかしこれは内外ともハイテク仕様だ。ステンレス・スティールを鏡面仕上げにした長い壁面がガレージ・ドアのように昇降する。それによりインドアの演劇的イベントが星の下でできるようになっている。

コンプレックスの中心部に一部既存のタワーがあり、これをコールハースは隅々まで全身ずぶ濡れになるほど金色に塗っている。竪樋からマリオンまで徹底したゴールド・タワーだ。彼に言わせると、敷地周辺のオーラを拡散させるには、ゴールドは驚異的な効果を発揮するという。それが光を反射する方法で、われわれが期待もしないような利益をもたらす。

話題の「CCTV」が完成し、2014年ヴェニス建築ビエンナーレのディレクターを務めたレム・コールハースは、当時今までやってきた常に斬新な建築デザインを追求することに飽きてきたことを吐露した。そして「プラダ財団キャンパス」の仕事は単なるリノベーションのようなプロジェクトであると定義している。

昨年5月の「プラダ財団キャンパス」オープニングにおけるプレス・カンファレンスで、コールハースは「過去20年間建築デザインは余りにも個人的な表現そのものであった」という。おそらくクライアントであるプラダ夫人の手前で気を使ったのかもしれないが、「ここプラダにおいて、自分はほとんど裏方として働き、新旧の建築群をシームレスな融合体としてクリエートすることを心掛けた」だけという。

また「プラダ財団は保存プロジェクトではないし、といって新しい建築プロジェエクトでもない。通常それらふたつの条件は分離されたものとして考えられている。しかしここでは永続的なインタラクション的状況の中で、両者は互いに対峙しつつひとつのイメージへと凝結するのではなく、また一方が他者を支配することでもない。つまり「プラダ」は両者のフラグメンツ(断片)のアンサンブル(総体)を提示している」。

近年コールハースはしきりに歴史的保存について語る。というのは世界には非常に多くの歴史的リノベーション・プロジェクトがある。他方建築家として絶え間無く新しい形を創造し続ける必要から解放されたい希望がある。この両者間の見事な融合は「プラダ財団キャンパス」でひとつのマニフェストになった。


[図 面]

 

[建築家]

■レム・コールハース略歴


©Synectics

1944年 オランダ、ロッテルダム生まれ
1965-72年 ロンドンのAAスクール在籍
1972-73年 コーネル大学で建築を学ぶ
1975年 ロンドンにOMA設立
1978年 『錯乱のニューヨーク』発行
1992年 日本建築学会賞
1995年 『S,M,L,XL』発行
2000年 プリツカー賞
2003年 世界文化賞
2004年 RIBAゴールドメダル
2010年 ヴェニス・ビエンナーレ金獅子賞
現在 OMAおよびAMOを主宰・統括。

 
■代表作

OMAの主な作品に、オランダ・ダンス・シアター、ネクサスワールド・レム・コールハース棟、ヴィラ・ダラヴァ、クンストハル、コングレクスポ、エデュカトリアム、ボルドーの家、在ベルリン・オランダ大使館、IITマコーミック・トリビューン・キャンパス・センター、ソウル大学校美術館、プラダ・ニューヨーク・エピセンター、プラダ・ロサンゼルス・エピセンター、シアトル中央図書館、カーサ・ダ・ムジカ、イウム・サムスン美術館新館、サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン、中国中央電視台本部ビル(CCTV)、コーネル大学ミルスタイン・ホール、ロスチャイルド銀行、マギーズ・ガートナベル、コーチ表参道フラグシップ・ストア、ガレージ・ゴーリキー・パーク、深圳証券取引所、インターレース、デ・ロッテルダム、プラダ財団キャンパスなど多数。

Portrait:©Synectics / Material : Courtesy of OMA