世界の建築は今 No.126

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

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最終更新 2016/04/01 10:00

The New Arnhem Central Station (Arnhem, The Netherlands)

新アーネム中央駅(オランダ、アーネム)

Design: UN Studio (Ben van Berkel & Caroline Bos)
設計:UN スタジオ(ベン・ファン・ベルケル & キャロライン・ボス)


驚異的なトゥイスティング・ウォール・ストラクチュア

「新アーネム中央駅」の完成は、ロッテルダム、デルフト、ハーグ、ブレダ、ユトレヒトなどの駅と同様、オランダ国内駅のアップグレード計画の一環として生まれたものである。1996年にUNスタジオがマスタープランを手掛け始めてから優に20年という長期スパンのプロジェクトになった。

UNスタジオは2000年に乗換駅の最初のスケッチを提案。その後乗り換え客の流れと乗り換え形式に対する徹底的な調査により、新ターミナルは拡張して”トランスファー・マシーン”となるべきことを提案。それは21世紀の旅行におけるトラベル・デマンドの必要性に合った公共輸送の全領域をカバーするものであった。

構造エンジニアのアラップと協働して無柱の駅舎空間を生み出し、人々が直感的に利用できるような建築表現を生み出した。「新アーネム中央駅」は国際的、国内的、地域的レベルで利用されるステーション機能をもち、乗降客が都市間を直感的かつ容易に移動できるようにデザインされている。

UNスタジオのベン・ファン・ベルケルは「新アーネム中央駅」はもはや単なる駅ではなく、それはトランスファー・ハブである。われわれは新駅のデザインに新しく決定的な推進力を与えるために、すでにそこで起きている活動や人々の流れに対応した単なるデザインでなく、新しいトランスファー・ターミナルの拡大した建築は人々がいかにそれを使用し、建物を動き回るかにあるという。

アーネム市特有の自然の勾配をもつランドスケープをインテグレートさせて、UNスタジオはこのトランスファー・ターミナルを、地下2階から地上4階まで積層化された多機能空間をもつ実用的・流動的ランドスケープ駅舎と考えた。キー・スペースは、5,355㎡のメインとなるトランスファー・ホールであり、その屋根はダイナミックにうねるルーフ・フォームをもっている。

延床面積21,750㎡のトランスファー・ターミナルは、フロント・トゥイストと呼ばれるドラマティックな捩れ構造の壁柱をもち、それによってトランスファー・ホール内に60mものフリー・スパンの空間を生み出している。位相幾何学でいう表裏が一体となった”クラインの壺”にヒントを得て、UNスタジオはターミナルの内外部空間の境界を曖昧にすることを目指し、アーバン・ランドスケープをトランスファー・ホールの内部へと導入している。そこでは天井、壁、床など全てを互いにシームレスに連続させる捩じれコラム(トゥイスティング・ウォール・ストラクチュア)という前代未聞の驚異的なデザインがなされている。

屋根と捩れコラムの構造は、伝統的な工法と材料をやめたことで可能になった。当初から駅舎用に意図された手法で非常に軽いコンクリートを使用し、かつて試みられたことのないスケールで造船技術を導入して建設された。

この捩れコラムは、トランスファー・ホール1階の床が徐々に隆起し始め、それが曲面壁の壁柱のようにくねりながら立ち上がり、その一部は枝分かれして2階レベルのスロープの床になる。メインの幹部分はさらに曲面を描きながら上昇して2階の屋根スラブを構成。有機的なトップライト部分を開口しながら傾斜する2階の屋根スラブとなる。

この新しいターミナルは商業エリアと会議センターを含み、近隣のオフィス・プラザ、シティ・センター、地下駐車場、およびソンスビーク公園へとリンクするマルチ・ファンクショナルな駅舎だ。アーネム中央駅周辺エリアは、160,000㎡におよぶオフィス、ショップ、シネマなどの一大コンプレックスとなった。

「新アーネム中央駅」はアーバン・リニューアルと経済発展の触媒として機能すべきことが望まれている。1950年代の駅に取って代わった新駅は、2020年には日々の乗降客を11万人へと増やして経済成長を助長させることが目論まれている。


[図 面]

 

[建築家]

■UNスタジオ略歴


ベン・ファン・ベルケル
Courtesy of UN Studio

ベン・ファン・ベルケル/Ben van Berkel
1957年 オランダのユトレヒト生まれ。
1982年 アムステルダム・リートフェルト・アカデミー卒業。
1983年 アイリーン・グレイ賞
1987年 ロンドンのAAスクール卒業(ザハ・ハディドに学ぶ)。
1987-88年 チューリヒのサンティヤゴ・カラトラヴァ事務所勤務。
1988年 アムステルダムにキャロライン・ボスとファン・ベルケル&ボス建築事務所開設。
1997年 ドイツ建築家教会名誉会員
1998年 ふたりでUNスタジオを別途設立。
2003年 1822美術賞
2007年 チャールズ・ジェンクス賞
2013年 AIA名誉会員

 


キャロライン・ボス
Courtesy of UN Studio

キャロライン・ボス/Caroline Bos
1959年 オランダのロッテルダム生まれ。ロンドンのバーベック・カレッジで美術史を専攻。
1988年 アムステルダムにベン・ファン・ベルケルのファン・ベルケル&ボス建築事務所開設。
1998年 ふたりでUNスタジオを別途設立。
2012年 メルボルン大学名誉教授

 
■代表作

主な作品に、カルボウ・オフィス、PEMU変電所、ピエトハイン・トンネル・ビル、エラスムス・ブリッジ、メビウス・ハウス、ヘット・ファルコフ美術館、エレクトリカル・サブステーション、イッセルシュタイン市庁舎、リビング・トモロウ、ニュートロン磁気共振施設、オフィス・ラデファンス、メルセデス・ベンツ博物館、プリンス・クラウス・ブリッジ、ヴィラ NM、アゴラ・シアター、スター・プレイス、デ・ストゥープ劇場、ライト・ハウス、青島園芸世界博覧会会場、新アーネム中央駅などがある。

Photos & Material: Courtesy of UN Studio