世界の建築は今 No.108

淵上正幸(Masayuki Fuchigami / 建築ジャーナリスト)

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最終更新 2014/10/06 13:07

Shenzhen Bao'an International Airport (Shenzhen, Guangdong, China)

深圳宝安国際空港(中国、広東省、深圳市)

Design : Massimiliano Fuksas + Doriana Fuksas
設計:マッシミリアーノ・フクサス+ドリアナ・フクサス


アモルファスな生物形態を暗示する巨大空港

深圳宝安国際空港は、中華人民共和国・広東省深圳市に位置する国際空港である。2008年に国際コンペが開催され、ファイナリストとして、マッシミリアーノ・フクサスをはじめ、FAO(英)、フォスター&パートナーズ(英)、フォン・ゲルカン、マルグ&パートナーズ(独)、黒川紀章、ライザー+梅本(米)の6社が残り、2008年にフクサス・チームが勝利した。100万㎡もある「ミラノ見本市会場」など、フクサスは近年巨大プロジェクトの名手として国際的評価が高まっている。

ターミナル3は宝安空港の拡張工事で、広さ500,000㎡というスーパー空港だ。その長大なフォルムは、姿を変えるという巨大なオニイトマキエイに似た生物形態を喚起する。フクサスのコンセプトはその形態をさらに鳥へと変形させ、フライトへの期待感や高揚感の楽しみをシンボライズしている。

約1.5kmにもおよぶ長いトンネル形状の空間は、風によって形態化された造形のように見える。有機的スカルプチュアのごときイメージを想起させる屋根形態は、高低差を繰り返す自然のランドスケープにも似ている。これは数年前にフクサスがデザインした「ミラノ見本市会場」の主軸を覆うガラス屋根のルーフ・ランドスケープに似ている。種々の起伏や陥没を繰り返すトポロジカルなフォルムだった。

ストラクチュア全体を包むシンボリックなエレメントは、内外部を被覆するダブル・スキンだ。ハニカム・パターンをモチーフにした6角形の開口部が連続する。ダブル・レイヤーとはいえ、スキンは自然光を透過させ、内部空間に光効果を創出する。クラディングは気胞形をしたメタルで覆われている。

旅客は大きなターミナル3のテール部分の下部に位置するエントランスからアクセスする。幅の広いターミナル・ベイはカテドラルの内部空間のように、白い円錐形の支持コラム群が天井まで立ち上がっている。1階にあるターミナル・スクエアから、バッゲージ・クレーム、出発ラウンジ、到着ラウンジ、商業施設、オフィス等へアクセスできる。

出発エリアにはチェックイン・デスク、エアライン・インフォ・ポインツ、ヘルプ・デスクがある。2層および3層吹抜けの出発エリアは、内部の多層レベル相互間を視覚的につないでおり、さらに自然光の通路を構成している。チェックイン後、国際線、国内線の旅客は垂直的に拡散して各自のゲートへと向かう。

3層となったコンコースは空港のキー・エリアだ。各レベルは3つの独立したファンクションに分割されている。出発、到着、サービスの各エリアだ。そのチューブ状の形態は、動きのアイディアを追求した結果である。クロスと呼ばれる交差点では、コンコースの3つのレベルが垂直的にコネクトされ、フルハイトのヴォイド空間を生み出している。ここでは最高レベルを透過した自然光がが、最下位レベルに設けられたウエイティング・ルームへと到達している。

ハニカム・モチーフはインテリア・デザインとしても展開されている。互いに向き合うボックス化されたショップは、スケールアップした気胞デザインとして再生され、コンコースに沿って異なるアーティキュレーションで繰り返されている。

インターネット・ポイント、チェックイン、セキュリティ・チェックイン、ゲート、パスポート・チェック・エリアなどに配されたフクサスのデザインは、インテリア・スキンのハニカム・モチーフを反映させたもので、落ち着いたデザインとなっている。だが各所に設けられた巨大な白い樹木のようなエアコン装置は、自然からのインスピレーションで生まれたアモルファスな形態で正にフクサスの面目躍如といったデザインだ。


[図 面]

 

[建築家]


©Maurizio Marcato
■マッシミリアーノ・フクサス略歴
1944年 イタリア、ローマ生まれ
1969年 ローマのラ・サピエンツァ大学建築学科卒業
1969-88年 アンナ・マリア・サッコーニと協働で事務所を開設。数々のプロジェクトを完成させ、イタリアおよびフランスで知られるようなり、パリにもオフィスを開設
1989-93年 フランス・アカデミー会員
1999年 フランス建築グランプリ受賞
2000年 フランス文芸賞受賞
第7回ヴェニス・ビエンナーレ2000建築部門のディレクターを務める
2002年 アメリカ建築家協会名誉会員
2003年 ソフィア国際建築アカデミー名誉会員
2006年 RIBA名誉会員受賞
2007年 ヨーロッパ・ショッピング・センター賞受賞
2009年 ミラノ・トリエンナーレ金賞受賞
2011年 イグナチオ・シローネ国際文化賞
2012年 ウォールペイパー賞
2014年 アーキタイザーA+Award賞
 
■ドリアナ・フクサス略歴
ローマ生まれ
1979年 ローマのラ・サピエンツァ大学で近代・現代建築史学科を卒業。さらに同大学建築学科へ進む。その後パリの建築専門学校(ESA)を卒業
1985年 マッシミリアーノ・フクサスと協働
1997年 フクサス・デザインを統括
2000年 第7回ヴェニス・ビエンナーレ2000建築部門のキュレーターを務める
2009年 ミラノ・トリエンナーレ金賞受賞
2011年 イグナチオ・シローネ国際文化賞
2012年 ウォールペイパー賞
2014年 アーキタイザーA+Award賞
 
■代表作

主な作品に、スポーツ・コンプレックス+パーキング、グラフィッティ・ミュージアム、ミシェル・ド・モンテーニュ大学アート・ハウス、ウィーン・ツイン・タワーズ、ナルディーニ・リサーチ&マルチメディアセンター、ユーロパーク1、ユーロパーク2、ミラノ見本市会場、アルマーニ銀座、ストラスブール・ゼニス・コンサートホール、ペレス平和センター、アルマーニ4番街、ミッツァイル商業コンプレックス、サンジャコモ教区コンプレックス、パラティーノ・センター、リヨン・コンフルエンス、フランス国立アーカイブ、ビジネス・ガーデン・ワルシャワ・ホテル、深セン国際空港第3ターミナルなど多数。

Material : Courtesy of Massimiliano Fuksas Architetto