レポート

第13回 リヨンビエンナーレ

文・写真:柴田直美

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パリからTGVで2時間、北ヨーロッパと地中海を結ぶ位置にあり、ソーヌ川とローヌ川の合流部を中心にローマ時代から栄え、現在はローヌ=アルプ地域圏の首都であるリヨン(フランス第2の都市)で第13回リヨン現代アートビエンナーレが9月 10日に始まった。「リヨンビエンナーレ」は、リヨン国際ダンスビエンナーレ(偶数年開催)とリヨン現代アートビエンナーレ(奇数年開催)が交互に行われ、2015年は現代アートビエンナーレの年である。1895年にシネマトグラフという動画撮影機を発明し、「映画の父」と呼ばれるリュミエール兄弟を生んだ街としても知られ、市内にはリュミエール研究所 (Institut Lumière)やリュミエール美術館(リュミエール社工場跡地)がある。

コンフリュアンス地区

主な会場は、かつて物流などの工業エリアであったコンフリュアンス地区にある、もとは砂糖の荷受け倉庫であったシュークリエール(La Sucrière)、第1回リヨン・ビエンナーレ(1995年)に合わせてレンゾ・ピアノが設計したリヨン現代美術館(Musée d'Art Contemporain de Lyon)に加え、昨年末に開館したローヌ川とソーヌ川の中州の先端にあるコープ・ヒンメルブラウが設計したコンフリュアンス博物館(Le musée des Confluences)の一部である。

第13回リヨンビエンナーレに向けて、ゲストキュレーターのラルフ・ルゴフ(ヘイワード・ギャラリ(英国、ロンドン)のディレクター)が掲げたテーマはLa vie moderne (The Modern Life)。28カ国から作家を招聘し、世界の様々な地域での現代カルチャーの矛盾を探っている。ルゴフ氏は、彼自身が大切にしている「鑑賞者が作品の半分を担っている」というマルセル・デュシャンの言葉のように、この世界的な均一化の時代の中で来場者がアーティストによる多面的な視点によって「La vie moderne」という概念について再考したり、想像したりすることを期待している。

ヨーロッパ最大級の都市中心部開発計画の1つであるコンフリュアンス地区の再整備(総面積150ヘクタール)は、トラムが延長されるなどインフラ整備も進み、雇用や人口の増加が見込まれている。またスマートグリッドも実施され、地区規模でのエネルギー管理を行うことになっている。第2期整備計画(2010〜2025年)の基本構想はヘルツォーグ・アンド・ド・ムロンが、ランドスケープデザインをミシェル・デヴィーニュが担当し、MVRDV、ジャコブ+マクファーレン、マッシミリアーノ・フクサス、隈研吾などによる建築が完成予定と、今後も目が離せないエリアである。

リヨン現代美術館

コンフリュアンス地区から旧市街を通ってテット・ドール公園までトラムなどで約40分程度。テット・ドール公園に面したリヨン現代美術館は、30年程前から整備されたCITE INTERNATIONALE(国際都市)エリアにある。コンベンションセンターや、住居、シネマコンプレックス、ホテルなどの複合施設であり、レンゾ・ピアノが手がけている。

ラ・トゥーレット修道院

同時開催展の会場のひとつとして、『Anish Kapoor chez Le Corbusier』と題して、アニッシュ・カプーアがラ・トゥーレット修道院で展示を行っている。リヨン市内の駅から約30分で最寄りのL'Arbresle駅。そこからひたすら坂を上り、エヴー村へ。看板が出ていて、ようやく着いたと思ってから、さらに高原をひたすら上る。ビエンナーレの他の会場を見た後の足にはかなりキツかったが、やはりタクシーではなく、自分の足で街から離れていく距離を実感したほうがいいのではと思った。時折、振り返って景色を楽しみ、また上る、を繰り返し、到着。

古都リヨンの新しいチャレンジ

リヨンの街の歴史は古く、紀元前にローマ帝国がフルヴィエールの丘に町をつくったのが始まりである。リヨンの顔ともいえるノートルダム大聖堂が建っているこの丘は、旧市街などと合わせてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されている。

ビエンナーレを見るために初めて訪れたリヨンだったが、パリからのTGVが到着するパルデュー駅周辺の再整備や、紀元前からの街の変遷(中心地が丘から旧市街地へ、そしてさらに拡大)を端々で感じることができ、丘からはグリッド状の新街区と入り組んだ旧市街地の差もはっきりと見て取れる。
夕食をとるために出た街中で見かけた「Cotelac」というブティックが、公式エコバッグのタグと同じだと気がついて入ったところ、彼らのファッションブランドの発祥はリヨン郊外の街であることに加え、ビエンナーレについての丁寧な説明を受けた。街中がビエンナーレ一色というわけではないが、さすがに回数を重ね、街に浸透している印象を受け、古都が新しいチャレンジをするときのモデルケースとしてはかなりうまく行っているように思った。もちろん美食の街と言われているように、食べ物のクオリティはおしなべて高いので、訪れる際には食事の時間は確保しておくのがオススメである。