インタビュー No.000

共生の思想の実践へ

黒川紀章氏 インタビュー


- 再生時間:10分20秒 -

(インタビュー:馬場 璋造氏)

馬場

今日は黒川さんが東京都知事選に立候補したと聞いて、私も大変驚いたんですけれども、建築界の人たちもみんな驚いたと思います。ただ外国では、建築家が大統領になったり市長になることはいくらでもあることです。そういうことを含めて、今日は、黒川さんが立候補を考えるようになられたところと、これからどのようなことをされようとしているかをお聞かせいただきたいと思います。

黒川

ちょうど今、馬場さんがこられる直前に、ある新聞と週刊誌とテレビにマニフェストを渡したところで、これから各社に渡すところです。このマニフェストが各メディアに出て、そこから反応がまたあるだろうと思っています。それを少しご説明しようと思います。
私の本に、1960年からの共生の思想と、100冊目の本「都市革命」があります。
もし、「都市革命」を読んだ人でしたら、「あ、黒川は立候補するんだな」と分かったと思います。そういう風に書いてあります。このときは反石原とは書いてなく、小泉構造改革批判です。小泉・石原一体ですから。東京は、このままでは生き残れないぞと書いています。都市革命は、共生の思想から始まった蓄積ですね。私にとっては、言ってみると50年間かけて公約を書いてきた、マニフェストを書いてきたといえます。昨日入手したんですが、今議会で議論している予算書に対して筆を入れ、計算しなおして、どこに間違いがあるのかチェックして、都の隠し借金がたくさん見つかった。それを全部暴露しようと思っています。
それは自分ひとりでコンピュータを使って、昨日徹夜で一晩でしたんです。それが一番具体的な石原都政の問題点で、東京の街づくりの問題点ということになると思うんです。
端的に分かりやすく言いますと、ひとつは石原さんは何回も都知事選挙に出ているんです。けれども、一回目は落ちている。落ちたときの選挙は僕が選対本部長だったんです。黒川事務所が選対本部でした。ですからお互いそういう仲で、そのときは意見はかなり一致していたんですが、次に当選したときに始めて会ったのは国会で会ったんですね。首都移転問題特別委員会。石原さんは当選して1週間目。ぼくと浅野知事は首都移転推進派。石原さんは首都移転反対派としてです。
議論を4時間やったんですね。圧倒的に、99%打ち負かしました。その時から「黒川とは絶交だ」と、はっきりいっているんです。そして「都の仕事はさせない」と。
ぼくが「ぼくにさせる仕事があるの?お金があるの?」って反論して笑って別れたのを覚えていますけど。ただ自由社会研をつくったメンバーで、40年来、竹下、宮沢から始まって7人の総理を一緒にサポートしていますから、同志ですよね。いまでも朝食会をやっています。でも今では、はっきり違います。石原さんの都政・東京の街づくりは首都機能を移転しないで東京一極集中でやるんだという考え方です。都市機能を移転して、地方と東京の共生をつくり出すべきだ。移転した跡地が種地になり、グリーンができる。あるいはそこに低所得者の住宅ができるじゃないか。だから、そういう意味で首都移転・首都機能の移転を考えている。だからといって東京がだめになるわけでなく、もっと発展する。というところを、なぜ石原さんは分からないのか?オリンピックがそれに絡んでくるわけで、オリンピックをやれば、石原さんはまさに東京の一極集中をもっと強化できると考えている。僕は東京の一極集中はバブルを起こし、東京だけの地価が上昇している。それは反対だと。そのためにオリンピックをやるのは反対だというんです。東京からの首都機能の移転とオリンピックの中止というのが、東京の将来に関する僕の今回のマニフェストの一番軸になっています。

馬場

多分これも建築界の皆さんは気になると思うんですが、選挙運動はどういう形でやるのですか。

黒川

今メールでの支持者が3万人を超えているんですよね。勝手連がメールでどんどんやっている。そういう人たちもう3万人がすでに選挙活動をはじめているんですよ。これは僕が出馬表明をして10日目ですからね。これからどういうことになるのか。これが30万人になったらどういう風にそれを組織するのか。勝手連だから勝手にやっていただきましょう。それが一番の重要な選挙運動になるでしょうね。

馬場

選挙宣伝カーに乗って、走り回るというのも?

黒川

いや、それも、走り回ることはしないけれども、たとえば選挙演説会というのをやるでしょうね。

馬場

東京をより良くする、日本をより良くするために、専門家として今言わなくてはいけないことがあるとお考えですか。

黒川

いえ、私は評論家じゃないですからそうじゃないですよ。やっぱり3万人、今日(3月2日)で3万人。たぶん投票日までに何十万人という人達が、これから僕の思想を実現するために一緒にやっていくんですから。だからこれは大きな運動ですよね、メタボリズムどころじゃない。いよいよ共生の思想の実現版がライフワークとしてスタートする。何十万の人達と一緒に。理想的な姿ですね。
※ マニフェスト参照

馬場

確かにこんな大きな都市になった場合、マニフェストに書いてあるとおり、区を市のレベルにしてもっと自主性を持たせる。これは当然、日本の全体の地域の自主性を持たせることにつながっていくんですね。
また大学の国際的な連携がうたわれています。

黒川

東大が民間の独立法人になったでしょ。僕は今度国際東京大学をつくるんです。今の東大はインターナショナルじゃないから。英語で講義する。
このマニフェストひとつひとつ具体的でしょ、東京都庁を売るのも。売る以外に保存する方法はない。

馬場

建築界に活を入れようとする気持ちがあるのですか。

黒川

そうじゃなくて、僕が建築家として出馬するって、みんな思ってるじゃない?だけど僕は完全に建築界を超えた問題に挑戦してきているから。考えていることも言ってることも。

馬場

そうですね。

黒川

だから二重のショックじゃないですか?

馬場

もうひとつ聞いてもいいですか。黒川さんが立候補した、一番大きい原因は共生の思想を実践にうつしていきたい、というのが都知事選出馬ということですか?

黒川

共生の思想はライフワークですね。本だけじゃやっぱり影響力は足りない、だったら首相より都知事のほうがライフワークとして実際にやりやすい。それと建築家を引っ張れるよね。もちろん安藤も使うけれども、次の世代を全部動員しようと思っている。そういうことは僕が知事になるとできることですから。

馬場

半世紀にわたる共生思想を始めてパブリックに問うということが、一番の立候補の理由ですね?

黒川

そうそう。

(2007年3月2日 於:黒川紀章建築都市設計事務所)

《共生の思想》

人間、民族、国家に限らず、異なる思想、信条、価値観を有しながら相手を理解し、そのまま共に生きていこうという思想。近代社会を支配した二元論から脱皮し、多様な価値観の並立を目指す。仏教の共生(ともいき)にその源がある。