審査総評
北陸の地方都市・福井から発した民間企業主催の工場新築コンペであるが、応募期間中に問い合わせが多々あって大いに期待したところ、全国各地の学生や建築士の若い皆様から、エネルギッシュで質の高い多様な作品が集まってきた。応募してくださった皆様にこころからのお礼をはじめに申し上げたい。
5名の審査会では、予備審査・1次審査・2次審査の3段階による選考手順で進められた。応募者によるプレゼンテーションを行わず、応募図面1枚のみで選考することの難しさを審査開始前から想定していたものの、5名の審査員が真摯な議論を丁寧に十分尽くすことで異なる見方や意見、価値観を共有しつつ、新たな気付きや理解を相互で深く確認しながら、全員が納得できる審査の進行であったことは間違いない。
まず予備審査では、応募要項のデザイン条件を踏まえた内容であるかの視点で審査を行った。条件の受け止め方は一つ一つの作品で異なるものの、新たな工場建築の提案内容の差はかなり明瞭であり、最初の審査を通過できない作品の判断は比較的スムーズに決定した。
続く1次審査では、作品内容に踏み込んでコンセプトとオリジナリティ、デザイン完成度の3つの視点から審査を行った。審査員5人がそれぞれの見方や評価を述べ合い、その相違点はかなり際立った。通常の工場建築の無機質な作業空間等を緑・自然やアトリウム、有機的な空間構成を建物全体に取り入れ、かつ金属メーカーの特性や福井の風土性も考慮した外観デザインをもつ新たな工場建築とは何かをめぐって、真摯で丁寧な議論が幾度も重ねられた結果、ようやく5点の作品に絞り込むことが出来た。
最後の2次審査では、これまでの審査を経て選出された5点の作品を対象にして、実務設計での具体的な実現性の視点から、風雪・地域性と遮熱・断熱、メンテナンス、トータルコストの4点から受賞の順位付けを踏まえた最終審査に入った。審査員5名による議論は、この間の審査過程から相互の相違点以上に合意の方向性へ徐々に進み、最優秀賞候補の2点が慎重に絞り込まれるに至った。そして再度一つ一つの審査項目を問い直し、相互に丁寧に確認し合った上で、審査員5人が納得する結果として最優秀賞1点と優秀賞1点、奨励賞3点が決定した。
地方発信の一民間企業コンペ企画は、これまでも数少ないだけに当地域における貴重な機会となったが、主催者側をはじめ、地元の発展に寄与することを切望したい。
審査委員(左から)
- 高澤 徹/株式会社木村建築事務所 一級建築士
- 山内 隆嗣(審査委員長)/ヤマウチマテックスHD株式会社 代表取締役
- 市川 秀和/福井工業大学 建築土木工学科 教授
- 酒井 正俊/株式会社三木組 福井支店長
- 川端 秀和/株式会社hplus 一級建築士




