最終更新 2019/03/28 16:45
台湾第2の都市高雄市は人口300万人の、台湾南部に位置する亜熱帯地域。世界でも有数の規模を誇る港湾都市で、台風、高温多湿、多雨、地震の自然災害のハンディも多い。新しい延床面積140,000㎡のパフォーマンス・コンプレックスは、これらの極端な自然現象に対処しなければならなかった。
敷地は高雄市中心部にある65ヘクタールほどの軍事基地跡地で、同市の中央公園になる予定であった。メカノーのフランシーヌ・ホウベン女史が2006年に初めて訪れた当時は、フェンスで囲まれた基地跡には野犬が多数生息し、バンヤン・ツリーが大きな葉を広げていたという。大きな日陰を生み出すバンヤン・ツリーに想を得て、「国立高雄芸術センター」の低くワイドなルーフ・フォームが決定された。
メカノーはバンヤン・ツリーのアイディアから、フォーマルやインフォーマルなパフォーマンス空間が創造できるかどうかを模索。公共建築の良さは公共スペースの善し悪しに関わるのは、彼らが設計した「バーミンガム図書館」のサンクン・アンフィシアターや、「レリダ・シアター」におけるキャンティレバー下のアーバン・ステージからも、経験的に理解していた。「国立高雄芸術センター」を含むこれら3つの建物は、形態こそ違うものの共通事項がひとつあった。それは個々のロケーション、個々の文化、個々の気候風土の3者が見事に融合していることであった。
長さ225m、幅160mの「国立高雄芸術センター」は、俯瞰すると巨大で大きくうねる屋根が、エイのヒレのような躍動感見せて迫力がある。屋根が一部地上に接するところがあるが、これはアンフィシアターの観覧席となっている。矩形プランの建物の4つのコーナー部分のスラブは空中に浮き上がり、南側コーナーと西側コーナーは地上部分が開放されて、内部に自由に入れるようになっている。このダイナミックなフォルムにより近隣公園に連続している。
外部公園の延長がそのまま内部に進入するようなデザインは、来館者をスムースに内部に引き込み、巨大なエントランス・スペースとなるバンヤン・プラザへと誘引する圧巻の迫力だ。ここでは種々のイベントが開催され、近隣コミュニティの住民のみならず、遠来のビジターもイベントに共同参加することができる。
バンヤン・プラザを覆う23,000㎡という広大な屋根を覆うのは、1,520トンもあるステール・スキン。内部のメイン機能であるオペラハウス、コンサートホール、プレイ・ハウス、リサイタル・ホールが4つの太い“幹”を形成し、巨大な屋根スラブを支持している。これは公園のランドスケープに連続する、地上面より5mの高さに立ち上がったトポグラフィーを形成している。
建物の中央部に位置するオペラハウスは、馬蹄形式の2,236席をもつ最大のホールで、赤と黒のカラー・スキームでまとめられている。観客は種々の外国語でオペラを楽しむこともできる。コンサートホールは1,981席をもつヴィニヤード形式のホール。キャンティレバーのバルコニー席をやめているため、天井からの反響を十分楽しむことができる。プレイ・ハウスは1,210席の実験劇場で、さらに中国オペラを上演できるホールだ。リサイタル・ホールは434席となっている。
台湾における数々のパフォーマンス・アートを楽しめる「国立高雄芸術センター」は、装備も超一流だ。そのひとつであるパイプ・オルガンは、ドイツのオルゲルバウ・クライス社製のダブル・オルガンで、9,085本ものパイプを使用している。シンフォニー・オルガンが7,169本、エコー・オルガンが1,916本で、1882年に創設された同社の歴史の中で最大のオルガンだという。
台湾南部の高雄市は、数々の著名な建築があることでも知られている。曰く伊東豊雄デザインの「高雄ナショナル・スタジアム」を筆頭に、ロジャース・スターク・ハーバーの「中央公園地下鉄駅」、UNスタジオの「大立精品デパート」、高松伸の「美麗島駅」など。そこにルーキーとしては巨大な芸術センターが仲間入りし、高雄市の芸術風土を更なる高みへと牽引し始めた。
(Photo by Marco van Rijt)
https://www.mecanoo.nl/
Photos by Iwan Baan, NAARO, Ethan Lee, Shawn Liu and National Kaohsiung Center for Arts
Photos and Material: Courtesy of Mecanoo
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