最終更新 2017/12/26 18:30
前回は、イタリアの建築家、ステファノ・ボエリによる「ヴァーティカル・フォレスト」という、ミラノの都心に立つ2棟の高層マンションで、無数の樹木や低木を植え込んだ「垂直の森」と呼ばれる作品を紹介した。今回は高架の緑の公園が、ソウルの都心を水平に延びて行くという相反するジオメトリーをもつ作品である。
何と言っても「ソウル・スカイ・ガーデンズ」の素晴らしさは、単なる高架通路ではなく、まずソウル市民に自然との接点をつくったことであり、また歴史的なソウル駅や南大門の驚異的な姿を視覚的に体験できることだ。それは教育的なアボレイタム(植物園)であり、未来の植物の保育園ともなっている。
MVR DVは当初考えた。いかにして1970年代の高速道路を、「スカイ・ガーデンへと転換するとができるか?いかにしてソウル中心部を毎日往来している多数の人々の、日常生活を変えることができるか?いかにして植物のバイオダイバーシティをもつユニークな公園を、ソウルの中心部につくることができるか?
ソウル中央駅横の新しく歩行者天国となった高架通路は、都市をよりグリーンに、より親しみやすく、より魅力的にする次2015年5月から始まったこのプロジェクトは、長さ936m高さ16mのスティール製の高架通路を公園に変えるもので、そこには韓国の植物多様性のマトリックスをはめ込むというものであった。
当初からMVRDVは、ソウルの都市中心部のイメージを変えるために、このインフラストラクチャー・エレメントをグリーンのシンボルに変えたいというニーズを 背負っていた。ソウル市当局、ローカルNGO、ランドスケープ・チーム、シティ・アドバイザーの協力を得て、全くアーバンな状況の中へ最大の植物多様性を盛り込んだ。
公園にはカフェをはじめ、ショップ、展示空間、造園師パビリオン、トランポリン、足湯、ステージ、子供劇場、7017メモリアル兼インフォメーション・センターなど、16個の小さなパビリオンが配されている。楽しいアクティヴィティに満ちた公園により、文化的商業的レベルで都市を補強することにより、利用者の体験的喜びはさらに高まる。多数の階段、エレベータ、ブリッジ、エスカレーターが都市と公園をつなぎ、さらに近辺の都市組織とつながる。
公園はソウルの中心部にできたプラント・ヴィレッジ(植物村)だ。それは常にランドスケープが変わっていく楽しい公園だ。ここは公園にある植物としては、韓国ではもっとも種類が多く、52科の樹木、低木、草花が大小ある645個の植木鉢に展開されている。実際には160種類で24,000本の植物が植え込まれている。
リニアな「ソウル・スカイ・ガーデンズ」は、実際はそれ独自のレイアウト、香り、カラー、特徴をもつ小さな庭の連続体としてデザインされている。季節によりそのランドスケープは変化し、秋に明るい紅葉をするカエデ科、春の桜やシャクナゲ、冬でも常緑の針葉樹、そして夏に実をもつ樹木など、そのバラエティは素晴らしい。特にハイライトとなっているのは、ふたつある大きな広場だ。ローザ広場ではコンサートやパフォーマンスを見学でき、マグノリア広場にはアウトドア・ステージやカフェが楽しめる。
スイレン科エリアには、巨大な水連の池があり、またフォトジェニックなイチョウの木も必見である。食用のベリー類やフルーツ樹木や、ベンケイソウ科の多肉多汁植物も「スカイ・ガーデンズ」全域に渡って植え込まれる予定だ。 また季節ごとの変化を高めるために、800個以上の樹木鉢を追加する用意があるようだ。植え込まれた植物は東側から西側へと植物名を分かりやすくするために、オープンエア・エンサイクロペディアのように、アルファベット順に並べられている。
今後「ソウル・スカイ・ガーデンズ」は、近隣エリアに向けてよりグリーンで親しみやすい歩行者エリアを拡張していく戦略だ。曰く歩行者専用通路、グリーン広場、ポケット・ガーデンズ、グリーン・アレイ(路地)、グリーン・ルーフ、グリーン・パーキング、グリーン・テラスなどを増やし、「ソウル・スカイ・ガーデンズ」のサテライト効果を発揮していくという。ソウルはますますきれいになっていく。
Portrait: ©Jasper Zwartjes
1991年 | ヴィニー・マース、ヤコブ・ファン・ライス、ナタリー・デ・フリスによってオランダのロッテルダムに設立 |
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1997年 | デュドック賞 |
2002年 | NAi賞 |
2005年 | コペンハーゲン市建築賞 |
2011年 | RIBA マンサー・メダル |
2012年 | オランダ木造賞 |
2013年 | レッド・ドット・デザイン賞 |
2014年 | オランダ・ガラス賞 |
2015年 | ロッテルダム建築賞、ノルウェー・スティール建築賞 |
2016年 | オランダ・デザイン賞、香港デザイン賞 |
2017年 | アイコニック賞、ドイツ・デザイン賞2018 |
1959年 | オランダ、スフェンデル生まれ |
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1978-83年 | RHSTLボスコープでランドスケープを学ぶ |
1990年 | デルフト工科大学卒業。ナイロビのユネスコ、カウバー・コンパニオン、OMA勤務 |
1964年 | オランダ、アムステルダム生まれ |
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1983-90年 | デンハーグ自由アカデミー、デルフト工科大学学ぶ。ラペーニャ&トーレス、ファン・ベルケル&ボス、OMA勤務 |
1965年 | オランダ、アッピンゲダム生まれ |
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1990年 | デルフト工科大学卒業。ラペーニャ&トーレス、ファン・ベルケル&ボス、メカノー勤務 |
代表作に、ダブル・ハウス、サイロダム、ボルネオ・ハウス、ヴォゾコ集合住宅、ヴィラVPO、RVUオフィスハノーバー万博オランダ館、ハーゲンエイランド、スタジオ・トニック、マキシマ医療センター増築、まつだい雪国農耕文化村センター、ミラドール、パークランド、GYRE、フロサイロス・ハウジング、バランシング・バーン、デ・エフェンナー・ポップ・センター、バーコード・ハウス、UPVミュンヘン、アンヤン・ピーク、イペンブルグ・マスタープラン、リヨン・コンフルエンス、セロシア、アムステルダム・ガン・センター、テラ・タワー、ディジョン・テレテック・キャンパス、ブック・マウンテン、ロッテルダム・マーケットホール、アンヤン・ピーク、プッシュド・スラブ、クリスタル・ハウス、ソウル・スカイ・ガーデンズ、天津濱海図書館など多数。
Photos: ©Ossip van Duivenbode
Photos & Material: Courtesy of MVRDV
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