2016年11月9日(水)~ 2017年2月26日(日)、MAXXI 国立21世紀美術館(ローマ)で、第二次世界大戦後の日本住宅建築に焦点を当てた「日本住宅建築展 The Japanese House: Architecture and Life after 1945」が開催された。
MAXXIは、1960年のローマ五輪に向けてピエール・ルイージ・ネルヴィが設計した体育館「パラッツォ・デッロ・スポルト」や、五輪跡地に完成した「パルコ・デッラ・ムジカ音楽堂」(2002年、設計:レンゾ・ピアノ)などがあるフラミニオ地区の元軍事基地に、1999年の設計競技に勝利したザハ・ハディドが設計したイタリア初の国立現代美術館(2010年)。総面積約30,000㎡に及ぶ敷地に10 000㎡の展示スペースを持ち、「MAXXI Architettura(建築)」と 「MAXXI Arte(美術)」という2つの機関のために設計されている。
日伊国交150周年記念事業の一つとして国際交流基金とMAXXIが主催し、保坂健二朗氏(東京国立近代美術館主任研究員)と塚本由晴氏(アトリエ・ワン主宰/東京工業大学教授)が中心となって、80ほどの住宅建築を「系譜」と呼ぶ相互関係の中で位置づけるという意欲的な展覧会が計画された。
住宅は、JAPANESENESS、MASS PRODUCTION、EARTHY CONCRETE、CLOSE TO OPEN、A HOUSE IS A WORK OF ART、PLAY、SENSORIAL、MACHIYA、REDEFINING THE GAP、LIGHTNESS、UNMARKETABLE、LEARNING FROM THE VERNACULAR、BEYOND FAMILYという13つのセクションに分けられて、400点を超える資料とともに展示された。
オリジナルのドローイングや歴史的な資料とともに、引き延ばされた写真や、実寸のモックアップでの再現がリズミカルに続き、過去の建築家たちの活動や住宅建築が、現代へとつながっているという実感が持てる。展覧会の見方を押し付けているわけではなく、自由に回遊しても、各系譜につけられたキーワードが理解を助けてくれる。
先日、建畠 晢氏(2014年に館長を務める埼玉県立近代美術館で「戦後日本住宅伝説−挑発する家・内省する家」展を開催)が「美術館で建築展を開催してみて気がついたことの1つに、建築展の来場者は『鑑賞』というより『触発』されている。」と発言されていた。まさにそうやって、建築家が当時の社会や施主などと実直に向き合って生みだした1つ1つの線に込めた思いに触れるのに最適な展覧会であると思った。
これだけの資料が海外に輸送されて日本住宅建築が展示されたという事実は、今後の日本住宅建築研究においてマイルストーンになるに違いない。これらの展示は2017年7月にキュレーターの1人の保坂氏が所属する東京国立近代美術館に巡回する。日本のコンテクストに合わせて変更になる部分もあると思うが、これだけの資料が海外で展示されたと言う事実に驚く人も少なくないだろう。
同展に合わせて、館内にあるMAXXI Architecture Archives Centreで日本建築の影響を受けていたカルロ・スカルパのアーカイブ展示「Carlo Scarpa e il Giappone」(http://www.fondazionemaxxi.it/en/events/carlo-scarpa-e-il-giappone/)が開催されており、日本からイタリアの家族に宛てて送った手紙なども展示されていた。同時期にはアルヴァロ・シザによる数々のプロジェクトを、神聖なものとの関係について注目した展覧会「アルヴァロ・シザ:神聖」展(http://www.fondazionemaxxi.it/en/events/alvaro-siza-sacro/)も開催されていた。建築のコレクション(60,000枚を越えるドローイング、75,000枚にも及ぶ写真、その他模型、書簡、書類書籍など)を持ち、通年、良質な建築の展覧会を開催しているMAXXIがもう少し近くにあれば、と願わずにはいられない。
日本住宅建築展 The Japanese House: Architecture and Life after 1945
会 期:2016年11月9日(水)※一般公開日 ~ 2017年2月26日(日)
会 場:MAXXI 国立21世紀美術館
主 催:独立行政法人 国際交流基金、MAXXI 国立21世紀美術館
制 作:独立行政法人 国際交流基金、MAXXI 国立21世紀美術館、バービカン・センター、東京国立近代美術館
キュレーター:保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)、Pippo Ciorra(MAXXI 国立21世紀美術館シニア・キュレーター)、Florence Ostende(バービカン・センターキュレーター)
学術協力:塚本由晴(アトリエ・ワン/東京工業大学教授)、藤岡洋保(東京工業大学名誉教授)
ローマ会場展示デザイン:アトリエ・ワン
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