KENCHIKUさん

時代のポシェ|Poche of the Time

設計:鈴木淳平/PONDEDGE
Now Loading...

Loading...

都合を編む

平面図において、内部空間を正形に保つために生じる不規則な隙間を壁の厚みとして塗り潰す、エコール・デ・ボザール発祥の製図技法をポシェ(Poché)と呼ぶ。それは、建築の「図と地」を規定し、幾何学的な純粋性を支える沈黙した領域である。

 

この住宅は、増改築を幾重にも繰り返してきた木造民家の改修である。そこには、異なる時代の柱や梁が、その時々の生活上の「都合」によって重ねられ、結果として生まれた過剰な厚みが存在していた。私たちはこの生々しい痕跡を、既存建物の欠損ではなく、生活の履歴が堆積した「ポシェ」と捉え直した。

 

既存の軸組の内側に、新たな櫓状のストラクチャーをセットバックして挿入する。既存の不規則なリズムをなぞるのではなく、わずかにずらした自律的な骨格をつくり、その間に棚、キッチン、ベンチ、パントリー、ヌック、トイレなど、身体スケールから導かれた機能を納めた。中央の空間の純粋性を保ちながら、ポシェには蓋をせず、生活の気配が中央へ溢れ出すことを許容している。

 

新旧の柱や梁は並走し、ときに交差する。そのずれによって構造の境界は曖昧になり、線が幾重にも重なる、柔らかな領域が生まれる。

 

当初は自邸として計画されたこの建築は、最終的に週末住宅兼ハウススタジオとなった。自律した形式をつくろうとする設計者の意図さえも、用途や経済性といった新たな「都合」によって書き換えられることになった。

 

設定したルールを「都合」によって解きほぐし、絶えず調整し続けること。ルールの周縁を行き来し、「都合」によるノイズをひとつひとつ織り込んでいくこと。こうしたプロセスを通じて獲得された、生々しい現実性を帯びることが、今、建築の条件なのかもしれない。

(鈴木淳平/PONDEGE)

 

■建築概要

所在地:東京都世田谷区
用途:住宅、ハウススタジオ
設計・監理:PONDEDGE(鈴木淳平、福地至恩)
構造設計:オーノ JAPAN(大野博史、周越)
照明: TILe(岩壁泰良)
外構・造園: STUDIO ORYZA(藤原駿朗)
テキスタイル: Studio Onder de Linde(久米希実、植村遥)
施工:栄伸建設(棚橋秀一)
構造:木造
敷地面積 131.35㎡
延床面積 158.54㎡
竣工:2025 年 12 月
写真:JUMPEI SUZUKI

■設計者情報

鈴木淳平(すずき じゅんぺい)
PONDEGE 代表、一級建築士

 

■経歴

2012
東京工業大学大学院 博士前期課程修了
2016
同大学院 博士後期課程 単位取得満期退学
2018
HIGASHIYAMA STUDIO 設立
東洋大学理工学部建築学科 設計助手(-2021)
2023
名古屋工業大学 非常勤講師
2024
PONDEDGE に組織再編

 

■受賞歴

2022
2025年日本国際博覧会協会 休憩所他設計業務 設計者に採択
2024
SD REVIW2024 入選

 

PONDEDGE
Website:https://www.pondedge.studio/
Instagram:@_jumpei_suzuki
https://www.instagram.com/_jumpei_suzuki/
JUMPEI SUZUKI PHOTOGRAPHY:
https://www.jumpeisuzukiphotography.com/

Cookie(クッキー)
当社のウェブサイトは、利便性、品質維持・向上を目的に、Cookie を使用しております。詳しくはクッキー使用についてをご覧ください。
Cookie の利用に同意頂ける場合は、「同意する」ボタンを押してください。同意頂けない場合は、ブラウザを閉じて閲覧を中止してください。