18坪の狭小地に建つ4層RC住宅
神奈川県川崎市の住宅街に位置するアトリエ兼住宅。建物が立つのは川崎市の住宅街。中層の住宅が密集する地域で、住宅のセオリーである日当り、風通し、視線の抜けなどの良好な環境が得づらい難しい敷地である。設計段階で思案を重ねた末、外の環境を建物に取り入れるのではなく、建物内部に外部のような環境をつくることができないかという発想の転換に行き着いた。それが小さな谷という意味で名づけられたVALE（ベイル）である。
ベイルは地下1階から地上3階をつなぐ高さ10ｍの吹抜け空間。地下の石庭に佇み、自然光を感じながら階段をめぐり、最上階の天窓から空を望むという空間体験は、あたかも谷を想起させる。天窓から注ぐ光はもとより、家族の声、温かい空気、冷たい空気、視線、動線がベイルと呼ばれる空間に集まることで、建物の中心であると同時に生活の中心にもなっている。
ファサードは2つの傾斜したコンクリート外壁で構成され、見る角度によって建物の表情が違って見える。道路斜線が厳しい場所であったことから天空率を活用し、数十案の検討を経て斜線制限を意識させないデザインにたどり着いた。さらに建物の内外のいたるところから緑が顔を覗かせている。天空率によって建物をセットバックした部分を活用して、様々な植栽を配し、都市における住まいと自然との共生を目指している。
■建築概要
所在地：神奈川県川崎市
主用途：事務所兼用住宅
設計監理：小川貴之建築デザイン 小川貴之
構造設計：Kei設計 黒木勇人
施工：株式会社ガルニエ
構造：鉄筋コンクリート造
階数：地下1階、地上３階
敷地面積：61.14㎡
建築面積：41.14㎡
延床面積：126.07㎡
竣工年：2022年4月
写真：太田拓実
小川貴之
■経歴
- 1982
- 神奈川県生まれ
- 2005
- 明治大学理工学部建築学科卒業
- 2005-2015
- 北川原温建築都市研究所
- 2016
- 小川貴之建築デザイン設立
小川貴之建築デザイン／株式会社tope
https://www.ogawa.archi/
神奈川県川崎市中原区下小田中1-25-14
