Tumbling Roof House
木曽川の高い堤防に囲まれ,川より土地のレベルが低いところもあるという輪中地帯。敷地は田畑のレベルより1mほど上がり、さらに1mほど一階床をあげ、RC部分を一階腰までとして水害対策としている。敷地に充分な余裕があったため、延床面積300㎡と規模の大きな住空間だったが、東西に長い2階建てのヴォリュームとし、全ての居室で南面採光とすることができた。
その上で今回は全体の形をどのようにするべきかということを考えた。平面計画としては、南面彩光に加えて眺望の方向から放射状を採用した。2階のリビングには眼下の田園風景が見渡せる開口高さが必要な一方、個室にはそれほどの気積は必要ないが、木造屋根の形と高さを都度、変えていくのは建築の外皮面積を増やし、熱効率が悪くなり、資材のロスも大きい。東西端に雨を落とし、必要なところを大きく持ち上げ、全体としてはパラメトリックに、勾配がまるで地形の起伏のように変わっていく形状とした。さらに屋根の一部に切れ目を設け、隆起させた隙間の開口部からは木曽川と長良川二方で行われる花火大会を楽しむことができる。
土地からの力を意識しながら,光や風や雨といった空の力を積極的に取り入れた。地面が隆起して空に向かうような建築は他律的でありながら、固有の幾何学となり、特徴のある形態となる。その結果、出来上がるなだらかだが抑揚のある天井はエネルギーの移動を可視化させたような形となり、矩形の天井とは異なるいきいきとした自然光の反射を感じさせる。普及した地場の木造の技術とコンピュータによって制御された設計のバランスの上に成り立つ住宅となった。
架構のスタディー
骨組みは、在来軸組とし、初期案は、柳室氏と共同し小さな部材を寄せ集め面を連続させシェル効果を検討して、微地形の起伏形状をアルゴリズムで制御することを検討していた。(図)
しかし、開口部の大型化により、東西方向が思ったよりロングスパンになり、放射状方向に集成材の大梁をいれることで単純化した。ただし、中央部の屋根のめくれ部分では、亀裂の形状をトラスの一部として、東西方向の柱を減らしている。
 ■建築概要
          所在地/岐阜県
          主要用途/一戸建ての住宅
          設計−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          アルファヴィル 担当/竹口 健太郎 山本 麻子 小池 智久
          構造 柳室純構造設計 担当/柳室 純 林 和希(設計協力)
          インテリア 貴設計室 担当/丹羽貴子
          施工−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          安田建設工業 担当/安田 知永 野田 一夫 加藤るり
          大工 名和建築 担当/松原 繁文 加藤 儀久
          木工事 雛屋林材 担当/神戸 正己 中嶋 雄一郎
          屋根 横瀬板金工業所 担当/花村 恭光 中川 明弘
          塗装 石川塗装 担当/石川 勝夫
          建具 近藤工業 担当/内田 剛志
          電気 東光電工社 担当/福田 浄
          給排水衛生 中部空調サービス 担当/後藤 享洋
          換気空調 ユニオンテック 担当/渡部 光治 曾木 清登 
          家具 藤岡木工所 担当/藤岡 功 武藤 美希
          構造・構法−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          主体構造・構法 木造・在来工法
          基礎 べた基礎(高基礎)
          規模−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          階数 地上2階
          軒高8,900mm 最高高さ9,320mm
          敷地面積 478.03㎡
          建築面積 213.77㎡
          (建蔽率44.72% 許容60%)
          延床面積 337.88㎡(内容積対象床面積 316.32㎡)
          (容積率66.18% 許容186.28%)
           1階 160.56㎡
           2階 168.88㎡
          PH階  8.44㎡
          −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          撮影/近藤泰岳 Yasutake Kondo

■経歴
            竹口健太郎(たけぐちけんたろう)
- 1971
 - 京都府生まれ
 - 1994
 - 京都大学工学部建築学科卒業
 - 1995-1996
 - ロンドン・AAスクール留学(FOAに師事)
 - 1998
 - 都大学大学院修士課程修了
 - 1998
 - アルファヴィル設立
 - 現在
 - 大阪成蹊大学で非常勤講師
 
■経歴
            山本麻子(やまもとあさこ)
- 1971
 - 滋賀県生まれ
 - 1994
 - 京都大学工学部建築学科卒業
 - 1995-1996
 - パリ建築学校ラ・ヴィレット校留学
 - 1997
 - 京都大学大学院修士課程修了
 - 1997-1998
 - 山本理顕設計工場
 - 1998
 - アルファヴィル設立
 - 現在
 - 大阪工業大学で准教授
 
■受賞
- 2013
 - JIA関西建築家新人賞/「高野山ゲストハウス」(新建築 2013/02)
 - 2013
 - Design for Asia Award 2013金賞(香港)/「高野山ゲストハウス」(新建築 2013/02)
 - 2015
 - 日本建築設計学会賞/「カトリック鈴鹿教会」(新建築 2015/10)
 - 2015
 - 中部建築賞/「カトリック鈴鹿教会」(新建築 2015/10)
 - 2017
 - 作品選集2019/「絆屋ビルヂング」(新建築 2017/10,住宅特集 378)
 
■主な著書・論文
- 2013
 - Come Giardini 出版:Libria(イタリア)
 - 2015
 - Alphaville Architects “Primary Structures” 出版:Equal Books(韓国)
 
アルファヴィル
            〒615-0007 京都府京都市右京区西院上花田町32
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