課 題

未来社会を切り拓く、21世紀のガラスの家

かつてガラスの家は、モダニズムのアイコン的な存在だった。例えば、フィリップ・ジョンソンの自邸(1949年)はまさに「ガラスの家」と呼ばれているし、彼が高く評価していたミース・ファン・デル・ローエによるファンズワース邸(1951年)も四周をガラスに囲まれた透明な住宅である。いずれもモダニズムの可能性を純化させたプロジェクトだが、特に後者は郊外の自然の風景の中に存在する傑作としてあまりにも有名だ。ちなみに、竣工はジョンソンの建築が先だが、彼はミースのファンズワース邸の初期スケッチを見て、影響を受けたという。


今年、空間デザイン・コンペティションは第30回を迎える。そこで改めてガラスの家を現代の視点から捉えなおし、未来社会の可能性につなげる提案を求めたい。そもそも家、あるいは家族の概念も、モダニズムの時代と比べて、大きく変化している。20世紀においてプライベートな空間の家が反転してガラスの箱になったことは衝撃的だったが、こうした前提も異なるだろう。例えば、21世紀の家は、もっと開かれ、他者を受けいれる場になっているかもしれない。またガラスは硬い工業製品であり、だからこそ機械時代のモダニズムの素材としてとらえられた。しかし、一方でガラスは分子が規則正しく並んだ構成をもつ結晶=固体とは違い、その内部はランダムに分子が存在する液体のような構造をもつ。正確に言えば、動きが凍結した液体、すなわちガラス状態である。流動を閉じ込めた物質としてのガラス。こうしたダイナミックなイメージからも、是非発想を膨らませてほしい。