2020年、新型コロナウィルスが蔓延したことにより、これまで当たり前だと思っていた日常の風景が変わってしまった。限定的な地域で発生する災害や戦争と違い、グローバリズム化を反映し、世界中が同時に同じ課題を抱えたことも特筆される。今後、どのように収束していくかはまだわからないが、われわれが一度経験した異なる生活は、すでに導入されていたオンライン化を促進し、コロナ後の社会にも大きな影響を与えるだろう。
つまり、コロナ以前とまったく同じ状態には戻らない可能性が高い。例えば、毎朝オフィスに出勤しなくても、仕事は成立するのではないか。長く家で過ごすことによって、リアルな住環境をもっと心地よくしつつ、リモートで働ける環境も整えること。ほかにも人々の集まり方、公共空間、商業施設、交通機関のあり方などに変革をもたらすはずだ。
現在、危機の時代を迎えている。だが、違う見方をすれば、それは新しい幸せのかたちが生まれるきっかけになるのではないか。かつて14世紀にペストの流行がヨーロッパを襲った後、中世の社会が終焉し、ルネサンスの時代が始まったように。では、21世紀に来たるべき世界の都市と建築を想像したとき、具体的にガラスという素材はどのような価値を創出し、幸せな空間をつくることができるのか。社会に希望を与えるポジティブな可能性を提示して欲しい。