奇しくも2019年は、いまや古典となったSF映画の傑作『ブレードランナー』(1982年)、ならびに大友克洋の漫画『AKIRA』(1982-90年)が想定していた近未来の時間設定と一致している。前者はそれまでの未来都市のイメージを刷新し、建築界にも大きな影響を与え、後者は二度目のオリンピックを翌年に控えた東京を舞台にしていたことから、現実を予言したことで改めて注目された。つまり、われわれは当時、想像された30数年後の近未来をまさに生きている。したがって、そのイメージが実現したこともあるだろうし、違ってしまったこともよくわかるだろう。映画『ブレードランナー 2049』(2017年)は、30年後の続編として制作されたが、今回のコンペでも、現在からおよそ30年後の未来におけるガラスの空間を考えて欲しい。
身のまわりの半径30mとでもいうべき日常のリアリティを精緻に読みとくことばかりに意識を向けているうちに、われわれは未来への想像力が萎んでしまったのではないか。その際、10年後でもなく、100年後でもなく、30年後を設定したのは、例えば、20代のうちに専門知識を学び、職業に就いたとして、現役のうちに見届けることが可能な射程だからである。当然、現在とは異なる社会や技術を背景とした世界に変化しているだろう。そのとき、いかなるガラスの空間が成立しうるか。今回の課題では、普段の設計だと提案しにくいデザインに是非、挑戦して欲しい。